東京電力の株価がまたストップ安を付け、上場来安値を大きく更新した。2011年6月6日の東京株式市場で東電株は、前場で値幅制限いっぱいの206円を付けたあと、わずかに戻したが再び下落。終値は前日比79円安の207円で引けた。
この日の日経平均株価の終値は、111円86銭安の9380円35銭。景況感の悪化で後退感が強まった米国の株式市場を受けて下落。円高進行など、それでなくとも「下げ材料」が多いなか、東電株の急落が投資家心理をますます冷やしたようだ。
東電株は6月1日に299円で取引を終え、終値としては初めて300円を割り込んだ。政局が混迷の度合いを深めていることで、「東電の賠償支援策はなお流動的な状況」(証券アナリスト)との見方があるなか、投資家も東電の信用力の回復や資金繰り問題が解決したとはみていない。
6月3日の終値は282円で、終値で上場来安値を更新するなど、下落に歯止めがかからない状況が続いていた。
そうした中で、東京証券取引所の斉藤惇社長が、「(東電の再建は)法的整理が望ましい」との見解を明らかにしたと、朝日新聞(6月4日付)が報じた。
斉藤社長は、ダイエーやカネボウの再生を手がけた産業再生機構(現在は解散)の元社長だったこともあり、「東電も日本航空(現在、会社更生法の適用を受けて再建中)と同様の処理が望ましい」と語った。また、1990年代の金融システム危機を参考に特別法をつくり、東電の資産内容を厳しく調査したうえで、債務超過ならば一時国有化して銀行には債権放棄を求める。その場合、東電は上場廃止となるが、数年後に発電会社として再上場するという案を披露した。
ある証券アナリストは、報道の当日に株式市場が閉まっていたとはいえ、個別の株価や市場全体に悪影響を与える恐れが十分予想され、「あまりに軽率な発言」と呆れぎみだ。「株式市場を運営する東証の社長が、一企業の経営について語ること自体が信じられない」とも話している。
東電株のストップ安を受けて、東京証券取引所は「東電株をめぐる上場廃止などの一部報道に対して、当取引所として、現時点で、東京電力が上場廃止基準に抵触すべき事実はないと認識している」とのコメントを発表した。
政府関係者や、こうした市場関係者らの発言で株価が大きく乱高下する東電株は、連日のように1億株を超す大商いが続いていて、いまや短期売買で利ザヤを稼ぐ、投機筋の格好の食いものになっている。
6月6日の出来高も、2億株の「超」大商いだった。
前出の証券アナリストは、「(東電株の)マネーゲームが過熱すると、一般の個人投資家は逆に冷めてきて、市場全体としては商いが低調になる。そのほうが心配だ」と話す。
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