TPP交渉で若干注目が集まる日本の農業。我が国では食料自給率が40%と他国に類を見ない低さから農業への打撃を心配する意見が多く、食料自給率を上昇させる事を農林水産庁を始め各分野からの意見も多い。言うなれば日本の農業を守れ=食料自給率を守れとも取れる動きがあるといえる。

 

   ◆日本だけ「カロリーベース」での食糧自給率算出、日本だけの不思議◆

 
 日本の食料自給率の低さは全国民的な理解がある。しかし驚いた事にアメリカの友人や韓国・中国の友人で自国の『食料自給率』の数値を知っている人は皆無であった。逆説的には、日本人は国家をあげて食料自給率の下落と現状の数値の悪さを大いに喧伝している状況であると言える。そもそも食料自給率が40%というは、60%の食物を海外から輸入しているという計算である。つまり半分以上の食物を海外に依存している状況なんだとインパクトを与えるに十分な数字だ、しかし日本の自給率の算出方法が『世界中で日本と韓国』だけしか使用していないカロリーベースである事実は多くの国民が知らない事実だ。

  
【カロリーベース食料自給率】
 国民1人1日当たりの国内生産カロリー÷国民1人1日当たりの供給カロリー(農林水産庁の説明)


食料の重さは、米、野菜、魚、、、どれをとっても重さが異なります。重さが異なる全ての食料を足し合わせ計算するために、その食料に含まれるカロリーを用いて計算した自給率の値を「カロリーベース総合食料自給率」といいます。カロリーベース自給率の場合、畜産物には、それぞれの飼料自給率がかけられて計算されます。日本のカロリーベース総合食料自給率は最新値(平成21年度概算値)で40%です。http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html


 


カロリーベースでの試算は、日本の様な欧米化したつまりは食事の形態が変化した国家の場合、最も低くなる数字である、表を見て判るように昭和40年代の米食中心からパンなどの洋食化していく過程でカロリーベースは低下していく事実がそれを示す。そして重要なのは、都市近郊型の農家の場合で主力ともなりえる『野菜』に関しては、カロリー計算上ではほぼ『ゼロ』である事だ。つまり野菜などを増産してもカロリーベースでの食料自給率は『上昇しない』ばかりか、穀物生産から転作して野菜を栽培すると食料自給率が低下する事となる。  
 

 そしてもうひとつ重要な事は、カロリーベースでの試算の場合、現代の日本型の外食産業や食料形態では必ず低くなるロジックもある。例えば揚げ物に使われる『油』などは輸入が多いのだがこれはカロリーベースの分母となる、そして油は廃棄量も多い為「食料自給率」の低下に寄与する、そして日本人は世界比較ではある程度裕福である為、日本で産出しない食料への嗜好も高い。つまり『生きていくのに必要なカロリー』以上に輸入などによって食料を消費する国家でもあるという事だ。これはカロリーベースでの食料自給率の低下に大きく寄与している。日本は生きていく上で必要なカロリー以上も「食料自給率」として計算している事となる。つまりは豊かになれば自給率が低下し、国民の多くが貧乏になれば自給率が上がる計算方式であるといえる。(だから、戦後直前は自給率ほぼ100%)    


◆生産額ベースでは自給率70%、つまりは他国並み◆



    問題化するのは、日本は「わざわざ低い数字を提示」しているという事である、日本は土地が狭く、4大穀物(米・小麦・トウモロコシ・大豆)などの大規模生産に余り向かない、しかしカロリーベースでの自給率計算では、日本でこの穀物の大規模生産を推奨する事となってしまう。しかし、それでも農水省がカロリーベースに拘るには理由があるはずである。日本だけが採用する世界で類を見ないような計算方式、それがカロリーベースである。知っていて損は無いと思う。





TPP加盟反対は、農業を騙った既得権益者の戯言 : アゴラ - ライブドアブログ