〈取材ノート〉 ピンチをチャンスに
「署名できない。北朝鮮系でしょ?」-ある同胞女性は、女性同盟支部で実施する朝鮮高級学校生徒への「高校無償化」適用を求める署名を旧知の日本人女性に嘆願したが、このような回答が返ってきた。その日本人女性は同胞女性の3人の子どもが、1時間かけて朝鮮学校に通っているということを知っている。国籍や民族に違いがあるという認識は、互いになかった。
しかし今回、日本人女性に内在していた「気持ち」が表面化。同胞女性はショックを受けた。「それはそれ、これはこれ? 結局そうなのか」と。「夫が公務員で応じられない」というケースもあったそうだ。
「いざ」というときにこそ、人の本音が表れる。気持ちを共有できるか否かで、その後の関係性も変わってくる。
3月11日の大震災以降、被災地の同胞は祖国や各地同胞組織から届いた慰問金、救援活動に鼓舞され、「ピンチをチャンスに変えていこう」という気持ち、相互扶助の精神で学校や同胞社会を立て直そうと懸命だ。
被災した日本市民への救援活動も行った。日本各地の同胞も現地入りし、食事を振る舞い、物資を届け、歌舞を披露する姿に、「非常事態では国籍や民族など関係ない」と日本市民は涙を流した。
被災地の人々は、あらゆる形で希望を共有し、数年後、数十年後を見据えた歩みを進めている。震災後に表面化した同胞の助け合いの「気持ち」が、国籍、民族を超えて市民同士の意識を新たなステージに引き上げることを期待したい。(東)