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福島第1原発:IAEAへ報告書「保安院独立」を明記

 東京電力福島第1原発事故について、日本政府が国際原子力機関(IAEA)閣僚会議に提出する報告書の概要が7日明らかになった。原子力安全にかかわる行政組織が各省庁にまたがり、「国民の安全を確保する責任の所在が不明確だった」と指摘したうえで、原子力安全・保安院を経済産業省から分離独立させることを明記。電力会社に対しては、炉心損傷などの「過酷事故」に至らないための対策を法的に義務づけるなど、「原子力安全対策の根本的な見直しが不可避」と結論づけた。同日、官邸で開かれる原子力災害対策本部会議に報告される。

 報告書は13章で構成。「世界の原発の安全性に懸念をもたらす結果となったことを反省し、世界に放射性物質の放出で不安を与えた」と事故について世界に向けて陳謝したうえで、▽過酷事故の防止策▽原子力事故への対応--など28項目の教訓を列挙した。

 このうち、環境モニタリングの強化では、現在は事故時の環境中の放射線量の測定が関係自治体に任され適切な対応ができなかったと指摘。今後は国が責任を持ってモニタリングを実施するなど見直しを打ち出した。

 政府が運用する緊急時迅速放射能影響予測システム「SPEEDI」のデータ公表が遅れ、十分に活用されなかったと認め、「今後は当初から公開する」と明記した。

 過酷事故を防ぐための電源や冷却機能の確保については、「整備の内容に厳格さを欠いた」と指摘。今後は法的に義務づけ、対策を徹底するとした。

 複数の原子炉で設備を共有し、それらの間隔が小さかったことが緊急対応に影響したことを反省。対策として、号機ごとに事故対応ができる体制を整備するとした。

 これらを踏まえ「重大事故対策の強化のための研究を国際協力の下で推進し、世界の原子力安全の向上につなげる」と宣言している。この報告書の検証については、政府の「事故調査・検証委員会」での論議にゆだねるとしている。【足立旬子】

毎日新聞 2011年6月7日 15時00分(最終更新 6月7日 15時03分)

 

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