赤羽有紀子選手らを擁するホクレン女子陸上部(札幌市)に今春、道内出身の新たな指導者が加わった。01、04年の世界ハーフマラソン日本代表で、陸上長距離界の強豪、コニカミノルタの主力選手として活躍した太田崇コーチ(35)だ。2月の東京マラソンを最後に現役を引退し「世界に通用する選手を育てたい」と、故郷で新たな一歩を踏み始めた。【今井美津子】
陸上のエリートだったわけではなく、努力を積み重ねてきた人だ。出身は白老町。中学で陸上を始め、苫小牧南高時代は目立った成績を残せなかった。札幌学院大には一般入試で合格。卒業後に進んだNECで頭角を現したが、陸上部は03年、経費削減で廃部になった。崖っぷちに立たされながらも世界を夢見て強豪のコニカミノルタに移籍し、主力に成長した。
全日本実業団対抗駅伝では06、08年に1区で日本人トップの区間3位になり、両年と05年の3度、優勝を経験した。同駅伝にはNEC時代も含め12年連続出場。青梅マラソンの30キロの部では2度優勝した。最終的な目標は、マラソンでの五輪、世界選手権出場。08年の東京マラソンで自己最高の2時間12分10秒で10位に入り、一流ランナーと認められる「サブテン(2時間10分未満)」に肉薄した。だがその後、左脚を故障。09年の別府大分毎日マラソンでは途中棄権するなど、思うように記録が出せなくる。もう一つの夢だった指導者の道を意識するようになった。
ホクレンの誘いを受けて昨年6月、初めて選手たちと顔を合わせた。女子を指導することに不安もあったが「素直な子ばかりで一緒にやっていける」と感じ、昨季限りでの引退を決意。滝田剛監督は「指導方法の考え方が近く、信頼できる。細かいアドバイスを選手に与えてほしい」と期待する。五輪の夢はかなわなかったが廃部やけがに負けず、努力を重ねたことに悔いはない。「選手の可能性を最大限引き出し、まずは日本でトップクラスに入ることを当たり前にしたい」。志を高く持ち、指導者として世界を目指すつもりだ。
毎日新聞 2011年6月7日 地方版