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【社説】

大連立構想 失政への猛省が足りぬ

2011年6月7日

 菅直人首相の進退騒動の最中、民主、自民両党の大連立構想が再燃した。震災対応を大義とするが目先を変えれば成果が出るのか。与野党ともに「政治の停滞」という失政への猛省がまず必要だ。

 これまでもくすぶっていた大連立構想が再燃したきっかけは、岡田克也民主党幹事長の発言だ。

 「与野党ねじれの中、物事をしっかり決めるには、期限とテーマを決めて大連立というべきか、各党が協力する態勢を目指したい」

 与党が参院で過半数に達しない「ねじれ」状況では、与野党が協力し合わなければ法律は成立しない。そんなことは昨年の参院選で民主党が惨敗した時から分かっていたはずだ。

 なぜ、これまでそれができなかったのか。第一は菅首相と内閣、民主党の側に野党の協力を得ようという熱意がなかったことだ。

 首相は野党側が責任を感じて歩み寄ることを期待したようだが、より必要だったのは野党の要求に柔軟に対応する決断だった。

 第二は、野党、特に自民党が不毛な政権攻撃に終始し、国会運営の責任の一端を担う「責任野党」の役割を果たさなかったことだ。

 この際、どちらが悪いかを問うても仕方がない。必要なことは、与野党がともにこれまでの態度を改め、停滞する政治を協力して前進させることに尽きる。

 民主党が今すべきことは、混乱の原因となっている菅首相の退陣時期を明確にし、菅首相がどこまで案件を処理するのかという「政権工程表」を明示することだ。

 赤字国債を発行する特例公債法案や、二〇一一年度第二次補正予算案を菅内閣で成立させるのか否かをはっきりさせなければ、野党との協議にも入れまい。

 自民党も国民の利益を第一に、協力すべきことには進んで協力すべきだ。大連立でなければ物事が進まないというのではおかしい。

 岡田氏は記者団に、大連立によって「震災や税・社会保障の一体改革を乗り越えることが必要だ」「第一党から首相を出すことが基本だ」とも述べたという。

 この発言からは、大連立構想が民主党の政権延命策にすぎず、どさくさ紛れに消費税まで増税してしまおうという狙いも分かる。

 大連立の「大」は、大政翼賛会の「大」に通じる。民主、自民が連立すれば衆院議席の九割近く、参院議席の八割近くを占める。一時的だとしても、批判や少数意見が封じられるのは望ましくない。

 

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