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【名波浩の視点】躍進必至のサンフレッチェ。昨季と何が違うのか?

スポルティーバ 5月2日(月)16時59分配信

 Jリーグ再開初戦(第7節)でガンバ大阪に4−1で快勝したサンフレッチェ広島。続くジュビロ磐田戦(第8節)は1−1で引き分けたものの、サッカーの内容はかなり良かったと思う。

 何より、これまでやってきたことが着実に積み上げられている、というのが最大の強み。昨年より今年のほうが、サッカーのクオリティが上がっているし、イージーミスが少なくなっている。自分たちが思い描くとおりに人もボールも動いていて、そういう時間帯が昨シーズンに比べて圧倒的に多い。まさにずっと積み重ねてきたものが、自分たちの実となり、力になっている。

 そして、佐藤寿人と李忠成の共存。昨シーズンまではペトロヴィッチ監督の頭の中では考えていなかったことかもしれないが、李自身がアジアカップの活躍によって自分を使う価値というものを監督に見出させた。そして今、寿人との共存というものが本当にうまくいっている。

 ふたりの位置は、前後というよりは斜めの関係が多いのだけれども、どちらかがサイドに流れていったら、どちらかがインサイドに入ってくる、というバランスがとてもいい。そこはもう、あうんの呼吸。それは、一緒にトレーニングをこなすことで築き上げてきたものでもあるだろうが、昨季の前半までベンチを温めていることの多かった李が、ベンチから戦況を見つめながら、寿人の動きであったり、味方選手の特徴をよく観察し、把握してきたからこそ。そんなことがうかがえるプレイが、ジュビロ戦でも随所に見られた。

 また、サンフレッチェには、決してスーパーなファンタジスタや技術的にずば抜けている選手がいるわけではない。それでも、最終ラインから守備能力だけでなく、足もとの技術があってポゼッションのできる選手が重用され、そこからの“攻撃の発進”というものが非常にスムーズ。ボランチの森崎浩司や青山敏弘が下がってボールを受ければ、DFの森崎和幸や水本裕貴が前に出ていって、3バックのうちふたりは常に攻撃の準備ができている。

 守備でも、誰かが攻撃に行けば、誰かがフォローするというリスクマネジメントがしっかりしている。特に青山などは頼もしい存在。相手の出足をすかさず潰していける選手で、そこでボールをきっちり奪いきれる。ボールを奪った後のミスもほとんどないために、全体のバランスが保たれ、前と後ろが分断されて2ラインになってしまうようなこともなかった。

 チームとして体力的な問題はあるものの、昨年のナビスコカップ決勝でジュビロと対戦したときとは違って、今年はスタミナが残っていた。あえて温存しているのではなく、選手の距離間がよくて、ミスも少ないために、最後まで息切れすることがなかったのだ。

 とにかく、サンフレッチェは選手個々の意識が高く、相手を圧倒しようとする姿勢がある。どのチームが相手でもサッカーは変わらないし、そのうえで、今季は攻守において選手の距離間がいいから、選手みんなのイメージが合致しているシーンがたくさんある。本当によく鍛えられていて、「プロだな」というのを実感させてくれるチームだ。J1の18チームを上からA、B、Cと三分割したならば、十分にAクラスに入っていけるチームだと思う。

 それをより現実にしていくためにも、求められるのはシュート数を増やすことだろう。その数字を上げていかないと、相手に脅威を与えられない。この日も前半4本、後半6本と少なかった。15〜18本はシュートを打てるだけのサッカーをやっているだけに、そこはもっと意識してほしいと思う。

 だいたいチームには、7年連続二桁得点を挙げている佐藤寿人という、他チームにはいない特別な存在がいる。ゴール前の嗅覚に優れ、彼のところで間違いなくチャンスが生まれるし、シュート機会が訪れる回数が多い。それを周りの選手がもっと意識して、彼のところに展開された後のこぼれ球や、ポストプレイからのパスを積極的に狙っていくべきだろう。

名波浩●解説 analysis by Nanami Hiroshi

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最終更新:5月2日(月)16時59分

スポルティーバ

 

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