東日本大震災に伴う福島第1原発事故を受けた原発の耐震基準見直しをめぐり、経済産業省原子力安全・保安院は6日、各原発の耐震安全性について判断を示せるのが秋以降になることを明らかにした。九州の原発周辺には、九州電力がこれまで耐震設計上考慮してこなかった断層などが計25カ所あることが、同社が5月末に保安院へ提出した報告書で新たに分かった。九電は九州近海で巨大地震が起きても原発の安全性は保たれるとの独自の試算結果を既に公表しているが、保安院は「あくまで電力会社側の試算。予断を持たずに検証する」としている。
保安院原子力発電安全審査課は、基準の見直し作業について「大地震があれば必ずやるもので、停止中の原発の運転再開問題とは無関係」としているが、耐震性の安全確認が終わっていないことを意味するだけに、立地自治体の判断に影響を与える可能性がある。
同課によると、従来の国の原発耐震指針では、後期更新世(12万-13万年前)以降に活動した断層を「震源となりうる断層」と想定。それ以前に動いたとみられる断層は、原発の耐震設計をする上で考慮する必要がないとしてきた。
だが、今回の大震災で大きな地殻変動が観測されたほか、活断層ではないとされてきた断層も動いた可能性がある。このため保安院は電力各社などに対し、耐震安全性の検討でこれまで不要としてきた原発周辺の断層を5月末までにリストアップするよう指示した。
その結果、原発の耐震安全性を検証する上で新たに評価すべき断層や断層と関連があるとされる線状地形などが全国に342カ所あることが判明。九電の玄海原発(佐賀県玄海町)は敷地内2カ所、周辺6カ所、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)は敷地内5カ所、周辺12カ所で、九電はいずれも「既往の調査に基づき活動性を否定している」「(大震災に伴う)地殻変動の影響は小さいと考えられる」と報告している。
保安院は今後、福島の原発事故の知見を踏まえて内閣府原子力安全委員会と協議し、それらの断層などの評価方法を策定する計画で、6月6日には、大震災に伴う地殻変動が起きていないかなどの追加報告を8月末までに提出するよう電力各社などに求めた。
同課は取材に「電力会社がリストアップしたもの以外にも再評価が必要な断層が存在しないかを含めてチェックする必要があり、安全性を判断できるのはどんなに早くても秋以降」と説明。九電が5月31日に公表した独自の試算結果については「詳細は分からないが、(現在の原発が)安全だと言い切るのであれば客観的なデータを示す必要がある」としている。
=2011/06/07付 西日本新聞朝刊=