また東京電力は当初、原子炉の水位を回復させるため、消火ポンプで淡水を注入していたが、水槽が空になり、海水注入に切り替えた。海水は原子炉の機器を腐食させ、塩が析出して注水ノズルが目詰まりするなど問題が多いが、背に腹は代えられなかった。実は福島第１原発は、南西10キロメートルにある坂下ダムから淡水を取水できる導水管を備えていたが、「地震で施設が一部壊れて取水できなくなっていた」と北海道大学の奈良林直教授（原子炉安全工学）は話す。これも想定外だった。
送電鉄塔の倒壊、ポンプと発電機の冠水、導水施設の損傷。これらはいずれも十分な耐震設計、防水対策を施せば回避できた事態だ。原発は原子炉本体はもちろん、関連施設すべてが高いレベルの耐震基準を満たすことが不可欠であることを今回の事故は物語る。
また欧州の原発は、チェルノブイリ原発事故を教訓に、緊急時、原子炉内のガスを外部に放出する場合を想定して、放射性物質を除去するフィルターが排気装置に取り付けられた。「一方、日本の原発には、そうしたフィルターはない」（奈良林教授）。原子炉内のガスを外部放出する事態など起こり得ないと考えていたからだが、今回の事故では何度も実施され、大量の放射性物質がまき散らされた。もしフィルターが付いていれば、事故発生後のより早い時期に排気の実施を決断できたかもしれない。そうなれば原子炉の圧力がそれほど上がらない段階で十分な注水ができ、燃料棒の露出が抑えられたかもしれない。フィルターの装備は今後の安全対策を考える上で重要なテーマとなる。
日経サイエンス最新号（2010年７月号）の巻頭特集「揺れる原子力の将来」では、福島第１原発事故の原因と教訓、より安全な次世代原子炉を目指す海外の取り組み、電力不足解消の切り札となる未来技術などを紹介しています。
東京電力、原子力発電所、地震、チェルノブイリ、大津波
東京電力提供
福島第１原子力発電所事故は大津波のほか、いくつもの“想定外”が積み重なった結果、事故の深刻度の国際評価がチェルノブイリ原発事故と同じ最悪のレベル７に至った。原発の安全性を確保するため、どのような対策…続き （6/7）
河川・海岸の堤防や排水機場の被災に加え、地殻変動により広域にわたって地盤沈下が生じた影響で、沿岸部で浸水の危険性が高まっている。これから出水期を迎えるに際して、国土交通省や宮城県などは浸水対策の強化…続き （6/6）
国土交通省は2011年5月20日、「首都圏の地下鉄道の浸水防止対策協議会」の第1回の会議を開催。首都圏で想定される地震による津波の規模や東日本大震災で観測した津波の状況などを確認した。首都圏の鉄道事…続き （6/1）
| 日経平均(円) | 9,367.17 | -13.18 | 7日 9:24 |
|---|---|---|---|
| NYダウ(ドル) | 12,089.96 | -61.30 | 6日 16:30 |
| 英FTSE100 | 5,863.16 | +8.15 | 6日 16:35 |
| ドル/円 | 80.13 - .15 | -0.09円高 | 7日 9:03 |
| ユーロ/円 | 116.89 - .94 | -0.39円高 | 7日 9:03 |
| 長期金利(%) | 1.145 | +0.015 | 6日 15:01 |
| NY原油(ドル) | 99.01 | -1.21 | 6日 終値 |
・「クスリの責任」に３つの壁
・サイボウズ、業務ソフトと経営コンサル一体で販売
・ＮＥＣ、個人情報使わずカード認証をクラウドで円滑に
・三菱自、バングラでＳＵＶ生産
・アストモス、ＬＰＧ船を来夏に新規投入…続き
「テクノロジー」のおススメのコラムや更新情報をメールマガジンでお届けします。
（詳細はこちら）
経済や企業の最新ニュースのほか、大リーグやサッカーなどのスポーツニュースも満載
詳細ページへ