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店襲った津波 宮城のコンビニ店主、移動販売で再開

2011年6月6日

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仮設住宅の住民に移動販売車を説明する石塚英人さん(中央)と妻かおるさん(右)=山元町高瀬、山田写す

 東日本大震災の津波で、経営していた宮城県山元町のコンビニエンスストアを流された石塚英人さん(48)が、トラックを使った移動販売にこぎ着けた。早速、仮設住宅を回っている。

 石塚さんは10年前に「脱サラ」して、海岸近くの花釜地区に「セブン―イレブン」を開いた。開店当初、お年寄りから「車がないので、買い物に来るのが大変」と聞き、独居老人向けの無料宅配を独自に始めた。話し相手にもなった。

 津波で店舗は集落もろとも消えた。宅配先のお年寄りを心配して避難所を回ったが、なじみの6人が全員行方不明のままだ。高台の自宅は津波を免れたが、地震で大きく傾き、仙台市内に引っ越した。

 被災地支援の一環として、セブン―イレブン・ジャパンが保冷車を改造した移動販売車を用意し、石塚さんに打診した。

 だが、山元町をはじめ周辺自治体では当初、避難所や仮設住宅での販売は営利目的として許可されなかった。石塚さんが何度も町役場に足を運び、5月23日からの営業が認められた。

 「欲しい商品がなければ、明日ご用意します」。石塚さんは移動販売開始を知らせるチラシを仮設住宅に配って回った。乳母車を押してシュークリームとプリンを買いに来た女性(76)は「近くにスーパーがなく、足腰が悪いので、本当に助かります」。

 営業初日の売り上げは3万3557円。震災前の1割にも満たない。約1千万円の借金が残るが、妻かおるさん(47)は「私たちを必要としている人に買ってもらったんだから、ずっと価値があるよ」と夫を励ました。(山田明宏)

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