米軍再編 日米政府に手詰まり感

米軍再編の主な課題

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2011年5月1日 09時19分このエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録

 米軍基地が集中する沖縄の負担軽減策を盛り込んだ在日米軍再編最終報告(ロードマップ)の日米合意から1日で満5年を迎えた。最大の焦点の普天間飛行場移設について日米両政府は、名護市辺野古へ移設するとした日米合意で沖縄側に理解を求める姿勢を貫いているが、県民の強い反発で手詰まり感が漂う。移設とパッケージとされた嘉手納以南の基地返還もめどが立っていない。(東京支社・西江昭吾)

■再検討なし

 今月末にも開かれる日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、辺野古にV字形滑走路の代替施設を造ることで合意される方向。日本政府として、2プラス2前に沖縄側へ伝えることで「頭越し」との批判をかわしたい思惑がのぞく。

 V字案を基に作成された環境影響評価(アセスメント)の評価書は1年前から「いつでも提出できる」(防衛省関係者)状態で政治判断を待つ状況だが、仲井真弘多知事が容認する余地が見えず、「県に出す状況にない」(同)との見方も。

 一方、政府内では移設先を辺野古以外で再検討する動きは見られない。進展を促す米側の意向に配慮し、仲井真知事との“対話”を継続する中で知事の軟化に期待感を寄せている。

■移転費増額

 停滞する普天間移設と対照的に、両国間で結んだグアム協定に基づく日本側の予算化が着々と進んでいる。本年度予算では532億円を計上。基地内の施設整備に加えて、インフラ整備に充てる出資金370億円を初めて盛り込んだ。

 インフラ整備は進捗(しんちょく)の遅れが問題視され、米議会はグアム移転費を7割削減する理由に挙げた。インフラ整備費は当初より大幅に増える見込みで、米側が、グアム協定で定めた上限額60・9億ドルを上回る負担を日本側に求める可能性もある。

■実行性疑問

 難航する普天間移設に伴い停滞感は否めない。県や地元自治体は普天間とのパッケージを外し、先行返還を求めているが、米側が認めず日本政府も消極的だ。

 牧港補給地区(キャンプ・キンザー)や那覇軍港など個別に地元自治体との協議が続いているものの、あくまで実現した場合の全体像づくりが主な議題。自治体からは「協議の前提となる返還の道筋を示してほしい」との不満が出ている。

 返還面積も嘉手納以南の施設全体の68%にとどまることが米軍内部資料で判明。負担軽減の実効性を問う声も出ている。

■騒音は増加

 嘉手納基地のF15戦闘機訓練の県外分散は2007~10年度に計11回行われたが、騒音軽減を地元は体感できていない。むしろ外来機の飛来が常態化し、分散期間中を含め騒音が増えているのが実情だ。

 日米両政府は、訓練移転先として新たにグアムを追加することを合意。本年度中に始めたい考えだが、実施期間や規模は定まっていない。地元が求める「目に見える負担軽減」につながるかは未知数だ。

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