阿部珠樹のスポーツ観戦力向上講座

競馬場でモーグルをワンセグで見ていたら、となりのおっさんが「カミムラ、３着に来ましたか」と聞いてきた。上村愛子はカミムラじゃないし、牝馬でもありません。「３着にきて」もあんたの馬券には関係ありません。でも、「３着」というのが妙におかしかった。

そのオリンピックの陰で、日本代表がひっそりと負けて、岡田解任の声が強くなっている。でも監督を替えたって強くはならないだろう。選手はみんな、フィジカルが弱かったといっている。フィジカル能力の強化は監督だけではどうしようもない。ベンゲルやモウリーニョを呼んで来たって、選手がコロコロ倒れなくなるというものでもないだろう。

弱い選手を呼ぶのが悪いといっても、ほかにタマがないのだから、岡田さんばかりは責められない。ＦＷの能力の低さがいわれるが、Ｊで得点王争いをするのがほとんど外国人という中で、ワールドカップで通用するＦＷがすぐに出てくるとも思えない。

岡田さんを替えるとすれば、それは予選が終わった時点ではなかったか。通過はしたが、予選の対戦国で唯一ワールドカップレベルだったオーストラリアには遊ばれてしまった。あれを見れば、岡田さんの監督としての力が、予選突破が精一杯で、ワールドカップレベルでないのがはっきりわかった。でも、今となってはいかにも遅い。

でも、嘆いてばかりでも仕方がない。Ｊリーグ発足以来、確実に力をつけてきた日本代表だが、今は踊り場に入ったのだろう。どこの国だって、永遠に強くなりつづけることなどありえない。あんまり過剰な期待をするのも、選手に酷というものだろう。

東アジア選手権でずっと健闘していたのは稲本ではなかったか。正直、代表に復帰したときは、「いまさら」という感じを持ったが、今回、見直した。肉体的な強さがあるし、状況判断も的確だ。韓国戦など、一時的に最終ラインに入ったりしても、そつなくこなしていた。欲をいえばもう少しミドルシュートを打って欲しかったが、なかなか点の取れないＦＷに遠慮したところもあったか。

稲本はさまざまな国でプレーして来た。日本でスターだった選手は、イタリアだとかスペインだとかレベルの高いリーグでプレーすることを目標にして、そこで契約されないと、あっさり日本に帰ってくるケースが多いが、稲本はプレミアを放出されても、ドイツやトルコでがんばった。環境やレベルの違うところで、そのときどきで的確な状況判断（日常生活も含め）を求められる生活を長くつづけ、いろんな意味での強さが身についたのではないか。結局、一人ひとりが稲本のような形で強さを身につけるしか、代表全体が強くなる道はないのではないか。