そばの散歩道


第40回 紗幸さん

日本の伝統文化が息づく花柳界を、もっと身近に感じてほしい

第40回 
紗幸さん
(浅草芸者)

紗幸(さゆき)
オーストラリア・メルボルン出身。15歳のときに交換留学生として来日。日本の高校を卒業後、慶應義塾大学で心理学を学び、英国オックスフォード大学でMBA、社会人類学博士号を取得。2007年4月より芸者としての修業を始め、同年12月デビュー。史上初の外国人芸者として、浅草花柳界で活躍する傍ら、テレビ番組の制作にも携わる。今年4月より、母校・慶應義塾大学の教壇に立ち、「外国から見た日本の伝統文化」について教えている。

はじめまして浅草芸者の紗幸です

― 高校生のときに交換留学生として来日されたそうですね。

紗幸 はい。日本の家庭から直接、1年間の交換留学生の募集があって、それに応募しました。お互いの娘たちが、教科書から制服、かばんなどを全部、交換したんです。

― そのとき日本語は?

紗幸 全く話せませんでした。でも毎日学校に通いますから、そのうち慣れてきました。

― 大学卒業後は、テレビプロデューサーをされていたとか。

紗幸 日本のサラリーマンや社会、文化をテーマにした番組をつくっていました。

― それがなぜ芸者に?

紗幸 もともとは、花柳界についてのドキュメンタリー番組をつくるために始めたのですが、そのうちにフォーカスが変わって、今は、頑張って一人前の芸者になりたいと思っています。

第40回 紗幸さん

― 芸者デビューしてどのくらいになりますか。

紗幸 2007年4月から修業を始め、12月にお披露目ですから、1年半になります。お祭りやイベントへの参加も今年で2巡目になり、少しずつ要領もつかめてきました。

― 稽古事は毎日?

紗幸 はい。お茶、太鼓、踊りをやるように言われています。一番力を入れているのは横笛です。

― フルートの経験があるそうですから、上手なんでしょうね。

紗幸 それほどではありませんが、一生懸命やっています。最近は長唄と端唄、祭囃子のお稽古も始めました。

― 日本の花柳界の中で、浅草を選んだ理由はなんですか。

紗幸 浅草は日本の伝統文化が残る街で、すごく雰囲気がありますよね。かんざし屋さんや下駄屋さんなど、花柳界を支えているお店もたくさんあり、職人さんの手仕事を目の前で見ることができるのも、素敵です。人力車が走っているのも珍しいですしね。

日本料理にはやっぱり日本酒ですね

― 日本の食べ物はどうですか。

紗幸 日本料理は好きです。

― 納豆やお刺し身は?

紗幸 私、納豆大好きなんです。お刺し身はウニが一番ですね。野菜も魚も、よく食べます。

― お座敷に出るときは日本酒を飲まれるのですか。

紗幸 もともと日本酒が大好きなんです。ですから、芸者は私に向いている職業かもしれません。

― 日本酒のどんなところがいいですか。

紗幸 やっぱり日本料理に合いますからね。私は居酒屋も好きでよく行きますが、どんな料理とも相性がいいですし……。

― おそばはいかがですか。

紗幸 大好きです。家ではよく、納豆をかけて食べています。

― ほお〜、納豆を?

紗幸 ゆでたおそばにバターをのせ、醤油をちょっと垂らして納豆をかけ、最後に海苔をのせるんです。「紗幸のオリジナル納豆バターそば」。塩バターラーメンの感覚ですね。とってもヘルシーで、おいしですよ。

第40回 紗幸さん

気軽な「お座敷プラン」アレンジします

― 外国人初の芸者としてかなり注目されていますが、これからの目標などはありますか。

紗幸 芸者衆が一番盛んだった1920年〜30年代、芸者はもっとタレント的な存在でした。今は花柳界と現代の社会がかけ離れてしまい、全く別世界という感じになっています。それを昔のような関係に戻せたらいいなと思っています。

― なるほど。

紗幸 浅草の芸者衆の中には、人間国宝になっている人もいます。日本の伝統文化を守っているのは、まさに芸者衆なんです。これからは、日本の文化を広く、海外にも伝えていくことが、芸者の重要な役割だと思います。

― 確かに、芸事を日常的に稽古している人はほかにいないですね。

紗幸 そうです。それに気づいてないのは、日本人だけじゃないですか。外国人は芸者を高く評価していて、日本に来たら、まず芸者衆に会いたいんです。

― ただ、一般の人には敷居が高いのでは?

紗幸 ですから、ホームページを立ち上げて、気軽に芸者を呼べるようにしました。最初は外国人向けに考えたのですが、日本人の間でも口コミで広がっています。ランチタイムの「奥様お座敷」など、特に評判です。

― 芸事も披露していただけるんですか。

紗幸 もちろん、普通のお座敷ですから、途中で三味線、踊り、太鼓などを披露します。

― 料金はどのくらい?

紗幸 10人以上の予約で、1人2万円以下というプランが人気です。「遠出」といって、ホームパーティーに呼ばれることも多いですね。

― 何だか忙しそうですね。

紗幸 はい。まだまだできの悪い芸者ですけど、新しいことにもどんどん挑戦していきたいと思っています。今年は、何か、私の好きなおそばやお酒などの宣伝に出られたらいいなあ〜。この場をお借りして、「よろしくお願いします!」(笑)。

※紗幸さん主宰の「お座敷プラン」などの詳細は、www.sayuki.net まで

第40回 紗幸さん

(09年3月30日 「酒めん肴」編集室にて収録 撮影: STUDIO MAX 高橋昌嗣




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