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[28084] 【習作】『TIME-TRIP -大切な人を守るため-』【アキバズ・トリップ】
Name: KCA◆1515fe95 ID:d426b585
Date: 2011/06/03 14:06
※本作は、ゲーム「AKIBA'S TRIP」の試験的二次創作SSです。ただし、ゲーム的なシステムや設定を一部都合よく改変している部分がございますので、その手の改変が嫌いな方は、ご注意ください。
※元ゲームの性質上、主人公は平気で女装や他人に対する脱衣行為などを行います。その種の行為が嫌いな方も、本作の閲覧は回避なさるほうが賢明です。
※当初はシリアス路線で突っ走ろうと思ったのですが、どうやら私にはムリなようです。
深刻ぶってる主人公も、徐々にいぢられ系の本性を表すことになりそうな予感。



[28084] 『TIME-TRIP -大切な人を守るため-』-1
Name: KCA◆1515fe95 ID:d426b585
Date: 2011/06/03 14:05
-01-

 NIROの課長にして実働部隊の実質的トップである、瀬嶋との2度目の戦い。
 妖主の血による瀬嶋のパワーアップに加えて、妖主との戦いで疲弊していたことにもあってか、瑠衣の血を飲んだものの、僕は完全に劣勢となり、身体も衣服もボロボロにされていく。
 「残念だったな、七市。私の勝ちだ」
 彼の言う通り、ボロ雑巾のように床に転がった僕は、もう指一本動かすことすらできない。
 曇りガラスから降り注ぐ午後の日差しが、僕の露出した肌を灼き焦がしていくのを感じる。
 (あぁ……死ぬのか、僕は)
 恐怖と苦痛と後悔が僕の心を塗りつぶそうとしていた。
 (──僕が今まで散々脱がして葬って来たカゲヤシたちも、こんな気持ちだったのかな?)
 ボンヤリとそんなことを思いながら、かろうじて首をねじり、瀬嶋の方を見た僕が目にしたのは……瑠衣!?
 その瞬間、どこにそれだけの力が残っていたのかと自分でも疑問に思う程の勢いで、僕は跳ね起きて、瀬嶋へと向かっていく。
 「その執念は驚嘆に値するが……フンッ!」
 正面からのカウンターを受けて、僕はそのまま元の床へと弾き飛ばされる。
 「悪く思うな。私とお前どちらも我を通そうとしてぶつかった以上、力の無い方が負けるのは世の定めだ」
 奴の言葉には耳を貸さず、それでも這い寄ろうとした僕だったが……窓ガラスのヒビから差し込む陽光がトドメを刺した。
 (ごめん、瑠衣。僕が君を守るって、そう言ったのに……)
 最期の瞬間、そんなことを考えて、僕の命と意識はそのまま光の中で消えた……。

 * * * 

 ──否。そのはずだった。

 なのに、どうして僕はココにいるのだろう。
 ……って言うか、ココどこ? もしかして死後の世界?

 <近いが、違う>

 「!? 誰だッ??」
 闇の中に唐突に聞こえてきた声に、僕は咄嗟に身構える。

 <その質問に正確に答える事はできない。強いて言えば、君たちを遥かな高みから見守っている者だ、と理解してくれ>

 「えっと……それって神様、ってこと?」

 <正確ではないが、あながち間違いでもない。ただし、全知全能の絶対神と言うわけではなく、せいぜい君の運命に幾許か干渉できるくらいの力しかないがね>

 守り神とか守護霊様みたいなものなんだろうか?

 <──私のことは今はいい。それより、七市千歳(なないち・ちとせ)。君は、このままあきらめるつもりか?>

 そう問われて、先程までの戦いのことが脳裏に甦る。
 「そりゃあ、諦めたくなんてないよ! でも、今の僕じゃあ……」
 瑠衣は守りきれない。
 NIROのトップと1対1で戦えるなんて稀有な機会に恵まれながら、それを活かせなかった僕は唇をかみしめる。

 <うむ。現状認識はキチンとしているようだな。その通り。宝くじを99回連続で当てる程の幸運に恵まれなければ、今の君では彼に勝つことはできまい>

 うぅ……わかってはいたけど、はっきり断言されるとなぁ。

 <落ち込むな。「今の君では」と言ったろう。それに、決して蟻と象ほど実力が隔絶しているわけでもない。せいぜいが狼と柴犬くらいの違いだ>

 その両者でも十分絶望的に聞こえますけど。

 <単純な体術の技量に加えて、実戦経験に差があり過ぎるからな。だが、もし、君がそれなりの実戦経験を積むことができれば、その差は「10回連続じゃんけんで勝つ」程度の差に縮められる>

 それでもまだ圧倒的に不利なんだ。でも……そう言うってコトは、その「経験を積む」ための手段があるってことですよね?

 <察しがいいな。今から君を過去に送る>

 !
 それは、願ったりかなったりだ。

 今更ながらに僕は瑠衣を連れて単身逃げたことを後悔していた。
 僕自身の力で守れなかったことも勿論だけど、それ以上に、彼女を母親や姉達から引き離してしまったことが果たして正しいかどうかわからなくなったのだ。
 結果、瑠衣の身を危険に晒したばかりでなく、家族の絆さえ奪ってしまった。
 それに、僕が彼女達──現妖主・姉小路怜や双子の姉妹、瀬那&舞那と協力していれば、瀬嶋に勝つことも出来たかもしれない。
 振り返ってみれば、怜も双子も決してまったく話のわからない相手ではなかった。「人間とカゲヤシの共存」についてだって、ふたりだけで逃げずに、彼女達と話し合い、妥協点を探ってもよかったのではないだろうか。

 <確かに、それもひとつの道だろう。いずれにしても険しい道のりだがね>

 否定や制止しないってコトは、上手くいく可能性はあるんですね。

 <! やれやれ。勘が鋭いのも良し悪しだな。そうだな、「可能性」はある>

 それを聞いて安心しました。
 先程おっしゃった過去への転送──お願いします!

 <よかろう。ただし、同一の時空に同一の存在が複数並立することは、本来好ましい事態ではない。君は「あちらの君」と心身両面のレベルで融合すると同時に、代償として君の「存在」に何がしかの影響が出る思うが、構わないな?>

 たはは……さすがにココに来て「じゃあ、やめときます」とは言えませんよ。えぇ、お願いします。

 <うむ。それと言っておくが、今回のコレは特例──チートのようなものだ。次回失敗したからと言って、同じ救済措置があるとは期待せぬようにな>

 わかっている。
 それに何より、僕はもう二度と瑠衣のあんな泣き顔は見たくない。

 <覚悟は出来ているようだな。ではいくぞ。君が過去に戻るべき理由、その想いの中核となるべき事象を強く心に思い描きたまえ>

 過去に戻るべき理由。そんなの、ひとつ決まっている!
 僕の愛する少女、文月瑠衣。彼女の笑顔を守るため。それが最大にして唯一の理由なんだから!
 だから、強く強く念じる。瑠衣の顔を……彼女の声を……初めて彼女と出会った場面を!!

 <む! これは……いや、イケる!>

 * * * 

 ──そうして、僕が再び意識を取り戻した時、そこは薄暗い路地で、瑠衣の兄・阿倍野優に襲われている最中だった。
 (そうか。コレは……)
 まさに、僕が初めて瑠衣と出会った場面だ。チラと目をやれば、路地の片隅に辛そうな顔をしている瑠衣の姿が見える。

 優の攻撃は相変わらず単調で大ぶりだったが、それでも肉体的にカゲヤシの血を得ていない今の僕では反撃はおろか完全にかわすこともできず、あの時より何十秒か粘っただけで結局は重傷を負うハメになった。
 「ケッ、人間にしちゃあ、まぁまぁだったが、しょせんはその程度か」
 そこからの展開は、記憶にあるのとほぼ同様だ。
 優が立ち去り、瀕死の僕の頭を膝の上に抱き上げた瑠衣が、唇を噛んで流れた血を飲ませるべく、僕に口付ける。
 「前」と異なり多少朦朧としつつもキチンと意識があったのが救いか。緊急避難とは言え、互いの「ファーストキス」の瞬間を、ちゃんと記憶にとどめることが出来たし。
 だから、僕はヤタベさん達の姿を見て逃げ出す瑠衣にかろうじて一言呟いた。
 「──ありが…とう……」
 「! キミは……」
 何かを言いかけて、けれどそのまま瑠衣は暗闇の中に走り去って行った。
 それを見届けて安堵したためか、僕は急速に意識を喪った。

 * * * 

 そこからの流れも、おおよそ記憶にあった通りだった。
 僕を助けようとする秋葉原自警団のみんなを御堂さんが制止し、僕はNIROのアジトのひとつに連れて来られた……んだろう、たぶん。
 意識を取り戻したら、見覚えある部屋で、「あの時」同様パンツ一丁で椅子に縛り付けられてたし。
 そこでの御堂さん、そして瀬嶋との問答も、おおよそは似たようなものだった。
 ──それに答える僕の口調がいささかそっけないものになったのは、まぁ、勘弁してほしい。瀬嶋も気にする素振りは見せなかったしね。

 だけど。
 「それにしても……眷属の血を飲んだとは言え、まさかそこまで変化が現れるとはな」
 一連の問答が終わり、いざロープを外してもらえるという段階になって、瀬嶋がそんな言葉を漏らした。
 ? なんのコトだ?
 「瀬嶋さん、眷属の血とは、これほどまでに劇的な効果を持つものなんですか?」
 御堂さんも、何か畏れるような、それでいて好奇心を刺激されたような視線で僕を見ている。
 「さぁな。眷属クラスのサンプルは、これまで殆ど捕獲された例はない。その意味では、彼は貴重なサンプルかもしれん」
 そう言いながら、背を向けて出て行く瀬嶋。
 僕としても、憎い仇とも言うべき男に傍にいられると平常心を保つのは難しいから、その方が有難い。

 けど、それにしても……。
 「えっと、さっきからおふたりは何を言ってるんですか?」
 ロープを解いてくれた御堂さんに、聞いてみる。
 「! ご自分の身体の変化に気が付いてないのですか?」
 へ?
 えーと……そう言えば、御堂さんの身長が微妙に高く感じるような。
 身長168センチの僕と165の御堂さんでは、目線がほとんど同じくらいだったはずなのに。
 「背丈だけではありませんよ。ハイ」
 差し出されたコンパクトケース内部の手鏡を覗き込む。

 そこには、僕が愛する文月瑠衣とよく似た「少女」が、きょとんとした顔でこちらを見返していたのだった。
 「誰だ、これーーッ!?」


-つづく-
────────────────────
#とりあえず、1話はこんな感じです。本作の主人公・千歳くんは、ゲームオーバーになったにも関わらず、時間を戻して瑠衣ちゃんとの幸福な結末を目指して奮戦することになりました。
#言うまでもなく、この「神様」はプレイヤーの分身。本来のゲームでは、いずれかのエンドを迎えた場合、「レベル&経験値とMPとお金」以外の要素(所持品や服、スキルなど)を引き継いで冒頭からプレイできます。また、2周目以降は主人公の外見を(制限はありますが)既存の他のキャラから選ぶことが可能。
#作中でも言われている通り、本作では、ちとズルをして瑠衣ルート最終戦で負けたにも関わらず、スキルに加えてレベルも引き継いだ状態でリスタート。反面、物質的なもの(アイテムと衣類)は引き継いでません。
#また、代償として「本来の姿」を失い、瑠衣に近い姿に変貌するハメに。このあたりは次回、詳しく説明します。



[28084] 『TIME-TRIP -大切な人を守るため-』-2
Name: KCA◆1515fe95 ID:d426b585
Date: 2011/06/03 14:05
-02-

 ──カゲヤシに襲われた貴方が気を失った直後のことです。
 カゲヤシの妖主の眷族の血を受けた貴方が、一時的に疑似カゲヤシ化することまでは予想の範囲内でしたが、全身の傷が治ったのち、貴方の身体は急速に変化し始めました。そう、貴方に血を与えたあのカゲヤシ──文月瑠衣の姿をなぞるように……。

 御堂さんの説明が右から左へ耳を抜けていくが、正直僕はそれどころじゃなかった。
 着替えのために用意された部屋で、姿見を前に改めてボクサーパンツ一枚の自分の身体を検分してみる。
 まずは顔。これが一番目立つ変化だろう。
 個々のパーツにはどこか元の僕の顔の面影は感じられるものの、全体としてみればまさしく瑠衣によく似ている。ダブプリのふたりみたく瓜二つとまでは言わないが、姉妹と言っても十分通用しそうだ。
 ただ、腰までのロングへアで赤い瞳の瑠衣と異なり、髪型がショートカットなままで瞳の色も鳶色なので、そのことを知って見れば十分区別は付く。
 それに次いで顕著なのが体格の変化だ。本来の僕は男子の平均身長にギリギリ届かない168センチだったが、先程感じたように随分と小さくなってしまった。
 御堂さんにメジャーで測ってもらったところ、およそ158センチと10センチも縮んだことになる。こんな低い視点は中学に入った頃以来だ。
 それに伴い体重も45キロ強にまで減ってしまったのだが、その事を告げた時の御堂さんの視線が妙に怖かった。おかげで、僕は改めて「女性に体重の話は禁句」という禁則事項を強く心に刻んだ。
 まぁ、体格の変化に伴い手足が華奢になったのはやむを得ないとして……僕は胸元に視線を落とす。
 もとより筋肉質とは言い難かった胸板だけど、今は明らかに男性とは無縁の緩やかな弧を描いている。乳房と言えるほど明確な隆起はないが、たぶん12、3歳の膨らみかけた少女くらいの状態ではないだろうか。
 ん? 「いやに形容が具体的だ」? まぁ、僕にも妹がひとりいたからね。その経験に照らし合わせてみた結果だ、と言っておこうか。
 (そう言えば、瑠衣の胸ってどうだったっけ?)
 彼女自身はいつもパーカーと厚手のキチッとした服を着ていたからわかりにくいが、スタイルの良い母親や姉ふたりと同じ血を引いてることからして、さすがにここまでペタンコって事はないだろう。
 (そうなると、(瑠衣+本来の僕)÷2=今の僕 ってことなのかな?)
 無論、とくに根拠のない、勝手な想像だけど。
 胸板だけでなくウェストのラインも随分と細くなってる気がする。
 となると、後は……僕はおそるおそるパンツの中を覗き込んでみた。
 (! よかった、ある!)
 幸いにしてマイサンは何とか健在のようだ。もっとも、元からそれ程大きい方じゃなかったのが、さらに縮んで小学生並の大きさになっているのは非常に切ないが。
 それでも、一応男としての面目をかろうじて保てたことに、僕は心底安堵した。

 とは言え、問題は山積みだ。
 手始めに、僕は御堂さんから返してもらった衣服を広げて体に当ててみた。
 (あぁ、やっぱりね)
 以前の服はダブダブ過ぎて、まともに着れそうにない。今履いてるボクサーパンツでさえ腰からずり落ちそうだし。
 僕は、恥を忍んで御堂さんに、今の僕の体格に合う服を適当に買って来てくれるよう頼んだ。
 カゲヤシ関連の事象に視野狭窄気味な点を除くと、御堂さんは基本的に委員長気質で善良な人だ。
 いきなりの僕の依頼にも心良く応じて、手にしたメジャーで現在の僕のサイズを測ると、近くの店から適当な衣類を調達してきてくれた。

 いやね、それは大変有難いんだけど……。
 ピンクのロングTシャツとデニムのショートパンツと言う組み合わせは、まぁいい。今の僕は明らかに男物が着れる体格じゃないし、「以前」の経験で女装にも(悲しいことに)慣れてしまった。むしろ、スカートを買って来られなかっただけ、有難い。
 ウッカリ忘れてたけど、気を利かせて靴もちゃんと24.5サイズのスニーカーを買って来てくれたのは、非常に助かったし。
 ただ、近くのコンビニで買ったとおぼしき、ライトグレーのハーフトップとボクサーショーツはどうかと思う。コレ、明らかに女物ですよね?
 「ええ。ですが、今の七市さんの体格を考慮しますと……」
 他に選択肢はない、か。僕は渋々それらを身に着けた。
 上着はともかく下着まで女装するのは初めての経験だ。
 さっきまで履いていたボクサーパンツと形状は似ているものの、明らかに女性用のそれがピッタリフィットしてしまう今の自分が恨めしい。なまじ、着心地がよく、また鏡を見ても違和感がないだけに、余計にガックリくる。

 何か大切なものを失くした気分になり、落ち込みかけたが、かろうじて何とか意識を切り替える。
 「それで……僕はこれから、具体的に何をすればよいのでしょうか?」
 本当は「以前」の経験に照らしてわかっているのだが、確認のためにも聞いておく。
 そして、御堂さんの答えはやはり予想通りで、まずは秋葉原自警団のアジトに行くとのことだった。

 残るTシャツとショートパンツも身に着けて、僕はNIROの支所から秋葉原の街並みへと足を踏み出した。
 「眩しい、な」
 「以前」よりも今の僕はカゲヤシ化の度合いが進んでいるのか、太陽の光に露出した手足の肌を灼かれる感覚が強い……ような気がする。単なる思い込みかもしれないけど。
 でも、仮にそれが真実であったとしても、恐れるつもりはない。それで身体能力がアップするなら、むしろ好都合だ。
 「瑠衣……必ず、君を助ける。今度こそ、きっと」
 ギュッと唇を噛み締めながら、僕は懐かしい──それと同時に、「初めて」でもある「仲間」との顔合わせのために、裏通りに向けて歩き出した。

 * * * 

 裏通りの「アジト」に集うメンバーの顔ぶれも対応も、「以前」とおおよそ変わらない……と言うワケにはいかなかった。無論、原因は今の僕の容姿だ。
 「えっと……本当に、七市くんなのかい?」
 困ったようなヤタベさんの質問が如実にソレを表している。
 とはいえ、ココは信じてもらうしかない。
 僕の説明を同席した御堂さんが補足することで、何とか4人──ヤタベさん、サラさん、ゴンちゃん、ノブくんも不承不承納得してくれたようだ。
 「それにしても……可愛くなっちまったモンだな」
 二次元の女性にしか興味がないはずのノブくんでさえ、好奇心もあらわにそんなコトを言う。
 カメラ小僧のゴンちゃんは被写体としての僕に食指を動かされているようだし、カリスマメイドのサラさんは、「以前」御堂さんを(メイド候補として)狙っていた時のような目で僕を鋭く見つめているので、少々居心地が悪い。
 僕自身としては、写真を撮られることもメイド喫茶でバイトすることも、興味はあるし、時間と状況さえ許せばやぶさかではないのだが、生憎と今はその「時間と状況」に余裕がないのだ。
 僕は、瀬嶋の魔手から瑠衣助けるために、もっと強くなり、もっとたくさんの情報を知らなければならないのだから。
 無論、今の段階でいきなりそんな事を言って不審がらせるワケにはいかないから、みんなには「当面はNIROの臨時エージェントの仕事に専念したいから」と言っておく。
 騙しているようで少々後ろめたいけど、時間逆行した者が安易に未来の情報を開示してはいけないのは、SFとかでもお約束だ。
 最終的にはソレを提示して協力を求めるべき局面くるかもしれないが、それまでに「今の」自分として皆の信頼を勝ち得ておく必要があるだろう。
 それを「打算」と呼ぶならその通りかもしれない。それでも、僕がこの素敵な仲間達と仲良くなりたいと思う心も、また偽りのない真実だった。

 そして、実のところエージェント──と言うか戦闘員としての自分の実力に不安があるというのも事実なんだよね。
 師匠に伝授され、あるいは書物を読んで身に着けたスキルの数々が自分の裡に息づいているのは、確かに感じ取れる。数々のカゲヤシや暴漢、あるいはNIROのエージェント達と戦って勝ちえた経験も。
 しかし、「以前」とはまったく異なるこの身体で、十全にそれが発揮できるか否かも未知数だ。膂力や耐久力などはむしろ上がっている気がするが、リーチの不足と体重の軽さは少なからず不利をもたらすだろう。

 そういう意味では、次に御堂さんに連れて行かれる屋上の、師匠のところでの戦いには期待していたのだが……。
 意外なことに、師匠は僕をひと目見るなり「教える必要はない」と断言した。
 「フフン……いいわねぇ~。アナタ、かなりのテクニシャンでしょ? 私に習うよりも、心の赴くまま脱がせに脱がせてそのテクに磨きをかけなさい。そしたらいつか……ウフフ」
 ──いったい何者なんだろ、この女性。つくづく謎だ。

 おかげで御堂さんを誤魔化すために、「昔近所に住んでいた老人に脱衣技もある護身術を習った」なんてありもしない過去を捏造するハメになった。
 念のため日陰に入って、1対1で模擬戦(互いの服を1枚だけ脱がす)をしてみたところ、何とか彼女に勝てたので、どうやら信じてくれたようだけど。
 それにしても、やはりこのリーチの短さはやりづらい。大柄な相手の懐に入れば有利な体勢に持ち込めるんだけど、まずはそこまで入り込むのがひと苦労だ。
 「以前」は素手やグローブでの戦いをメインにしてたんだけど、リーチを補うためにも武器の使用を考えたほうがいいかもしれない。

 「な、七市さんッ、戦闘の反省はいいですから、早くスラックスを返してくださいッ!」
 おっとこれは失敬。
 確かに、裏路地の物陰とは言え、れっきとした成人女性が、パンツ丸出しで路上でモジモジしてるのは風紀上大変よろしくないな。

 ──その後、御堂さんには恨めしそうな目で見られたけど、ほとんど女の子なルックスのおかげかビンタされずに済んだのは、不幸中の幸いと言うべきなのかもしれない。

-つづく-
────────────────────
#第2話と言いつつ、話は全然進んでいませんね。単なる現状説明の回。
#ちなみに、一周目の主人公は、サブクエストにあまり手を出さず、メインストーリーを進めることを優先していたタイプ。それもあってレベルが足りず、瀬嶋に勝てなかった……という裏設定があったり。当然、覚えてないスキルも結構あります。



[28084] 『TIME-TRIP -大切な人を守るため-』-3
Name: KCA◆1515fe95 ID:d426b585
Date: 2011/06/03 14:09
-03-

 「カゲヤシ判別機、ねぇ」
 僕は、その機能とやらを組み込まれた手の中のスマフォをうさん臭げに見つめた。たしか正式にはもっと別の名前があった気がするけど、意味はだいたいあってるはず。
 ところで、「前回」の最後の戦いの少し前くらいに気付いたんだけど、そもそもカゲヤシは別のカゲヤシをそれと識別する能力を持っているみたいなんだ。
 でないと、「吸血鬼が別の吸血鬼の血を吸う」なんてマヌケな事態が頻繁に起こりかねないから、ある意味当然だよね。
 そして、「吸血」や「コウモリ」といったカゲヤシ特有の力を使いこなせるようになった僕にも、その感覚は何となく備わってきたみたいで、森泉鈴の逃亡を見逃した頃から、この機械を使わなくてもカゲヤシか否かの判別はおおよそ勘でつくようになっていた。
 「とは言え、まがりなりにもお役所の末端であるNIROとしては、はっきりした物的証拠が欲しいんだろうな」
 傍目から見たらいきなりケンカを挑んで脱がせてるワケだし。
 それに、瑠衣の叔父のマスターや双子たちクラスの眷族になると、カゲヤシとしての気配を意図的にある程度抑えられるみたいだし。彼らができるんだから、妖主だって当然できるだろう。
 瑠衣については……まぁ、箱入りだからなぁ(だからこそキッチリ教えておくべきスキルだと思うけど)。好戦的な優の場合は、むしろ「最初から抑える気が無い」と言う方が正解か。

 ともあれ、この装置の有用性を確認するミッションはつい先ほど完了した。同時に、僕の「勘」が正しいことも証明されたので一石二鳥だね。
 さて、ココからどうするかだよなぁ。
 「以前」はここで阿倍野優打倒のため、先に彼の側近を倒せという指令が来た。今回も、このままアジトに戻ったら御堂さんがたぶんそういう話をフッてくるだろう。
 「このまま流れに乗るのも悪くはないんだけど……」
 たとえば、今回のミッションのラストで優に逃げる隙を与えず、そのまま退場してもらうということも考えられるワケだ。
 瑠衣の兄である優を倒すことに一抹の躊躇いがないかと言えば嘘になるが、相手は根っからのカゲヤシ至上主義者だ。母親である妖主にさえ逆らうアイツを、「説得して仲間にできる」なんて甘い希望は、僕も抱いていなかった。
 とは言え、身体の変わった今の僕では、本気の彼を倒せるかどうかは、正直まだ心許ない。
 「以前」と同じ選択することで、ある程度「先」が読めるのも事実だし、ここはあえて流れに逆らわないようにしよう。

 ──でも、何もかも以前と同じってのも癪だな。
 たとえば、ジャンク通りの喫茶店に行って、先に瑠衣に接触してみると言うのはどうだろう? 
 いや、まだ早いか。先方には、僕が臨時エージェントになったことがすでに知られているかもしれないし、いきなり急襲に来たと勘違いされるのは避けたい。アソコには瑠衣の叔父であるマスターもいるしなぁ。
 ん? そうだ! 瑠衣に近い人物で、この時期から接触してもとくに怪しまれない相手がひとりいたじゃないか!
 僕は、早速「屋上」へと向かった。

 さて、結果から言うと、「ゆるふわ系食い倒れ少女」こと森泉鈴との接触は、思った以上に上手くいった。
 もともと彼女は、下手したら瑠衣以上に争いを好まない穏やかな気質の娘だ。
 屋上の一角のベンチに、適当に買った山盛りのポテトを持って赴き、「隣り、いいですか?」と許可をもらって腰かけ、ポテトを摘みながら、なんとはなしに話しかけてみると、恐る恐るではあるが会話してくれるようになったのだ。
 その際、彼女のお腹が「グゥ」と鳴ったのをキッカケに、「よかったら、食べて」とポテトの袋を差し出したことで、なんと言うか一気に警戒心が解けて、懐かれた。
 こういうのも「餌付け」って言うのかなぁ。もっとも、あとで聞いたところによると、僕の見かけや雰囲気が瑠衣と似ていたことであまり警戒する気が起こらなかったって言ってたけど。
 無論、鈴ちゃん(いや、カゲヤシだから多分僕より年上だろうけど、見かけは15、6歳だし)は自分の身の上はあまり話したがらなかったけど、それでも、秋葉原が好きで、同じくこの街が好きな「お友達」がいるという言葉は、聞くことができた。
 うん、今はそれで十分だ。
 「おっと、名残り惜しいけど、そろそろ行かなきゃ。じゃあね、鈴ちゃん」
 「はい。あの……また、お話してもらえますか?」
 あ~、その上目遣いは反則だって。この娘、瑠衣以上の天然ドジッ子だけに、逆にある意味萌え要素がスゴいんだよな。
 「うん、もちろん。僕も時々、この屋上には来る用事があるから、その時でもね。またね、鈴ちゃん」
 「はい、またお会いしましょう、お姉さん」
 僕らは爽やかに再会を約して別れた……までは良かったんだけど。
 アレ? もしかして、僕、ナチュラルに女の人と勘違いされてる?
 そう言えば、僕、自分の名前名乗るの忘れてたし。いや、でも「チトセ」って、むしろ女の子の方が多いんだよなぁ。
 ま、まぁ、同性だ(と思った)からこそ、内気な彼女が打ち解けてくれたんだろうし。うん、結果オーライ!

 そして、アジトに戻って御堂さんに報告を済ませた僕は、予想通り阿倍野優関連の指令を受けた。
 さっき考えた通り、当面、大筋では「以前」と同様の流れに従いつつ、ちょこちょこ「悪だくみ」するつもりなので、もちろん了解しておいた。
 もっとも、そろそろ陽が沈むから、カゲヤシとの戦いは明日に仕切り直すのが賢明だろう。

 さて、さすがに今日は疲れたし、僕も家に帰って……あ!
 「み、御堂さんッ、タンマ!」
 アジトを出ようとする御堂さんに駆け寄る。
 「? 何でしょう? 何か疑問点でも?」
 「いや、任務についてじゃないんだけどさ。僕、このまま家に帰るとマズくない?」
 「!」
 そう、今の僕の容姿は、昨夜までとは一変、瑠衣ソックリな男の娘状態になっているのだから。

-つづく-
────────────────────
#ようやっと行動し始めた千歳くん。彼も彼なりに考えて、瑠衣ちゃんに会いたいのを我慢しています。
#そして、プチ家なき子状態の彼に乾杯。仮に、御堂さんがついていって説明しても、家の人が信じてくれるかどうか……。ちなみに、七市家は、千歳のほかに父・葉太郎、妹・水無月の3人家族(母は千歳が7歳の頃に病死)という設定。



[28084] 『TIME-TRIP -大切な人を守るため-』-4
Name: KCA◆1515fe95 ID:251c7024
Date: 2011/06/05 09:04
-04-

 「お帰りなさいませ、ご主人様♪」
 現代のアキバの風物詩のひとつとも言えるメイド喫茶。
 昨今は競争が激しく、5年保てば老舗と言われるこの業界において、20年以上の歴史を持つ英国風正統派メイド喫茶「カフェ・エディンバラ」は別格と言ってもいいだろう。
 メイド長のサラさんを筆頭に、そこで働くメイド達のクォリティが高いのはもちろん、店の作りからして、本格的なアンティーク調。食器や調度類も「本物」らしいし。
 その分、やや値段は高いけど、ここを訪れた人々は、それに文句つけたりしない。それだけの価値があると認めているのだ。
 うん、僕も、確かにそう思うよ。
 けど……。
 「どうして、僕がそんなトコロで働いてるんだろう?」
 しかも、メイド服着てウェイトレスとして。
 「やはりわたしが見込んだ通り、チトセさんは素晴らしい素質をお持ちのようですね(ニヤリ)」
 「ニヤリ」、じゃねーー!!
 心の中で絶叫しつつ、即席とは言えサラさんの「基礎メイド講座」を叩きこまれた身としては、お客様の前で不甲斐ない様子を見せるわけにはいかないから、何とか平静を保ってるけど。

 事の発端は、例の自警団のアジトで、帰る場所がないことを御堂さんに僕が直訴したときのことだ。
 守秘義務的に家族に詳細を説明するのは不可。
 さりとて、NIROの所有する建物に泊るってのも、僕としてはゴメン蒙りたい。
 もう仕方ないから、この際、適当なネットカフェにでも入って朝まで過ごすか……と考え始めたところで、話を聞いていたサラさんが僕に助け舟を出してくれたのだ。「自分が勤める喫茶店の社員寮の一室を臨時で貸してもらいましょうか」と。
 ──いや、後から考えると、ソレを助け舟と呼んでよいものか。
 僕は、サラさんの勤務先──「カフェ・エディンバラ」秋葉原本店に連れて行かれて、そこの店長さんの面接を受け、臨時のアルバイトとしてしばらく寮の部屋を貸してもらえることになった。
 そう、「アルバイト」。ちなみに勤務時間は日が落ちる17時から閉店の21時まで(今日は18時からだったけど)。
 こんな無茶が通るのも、この店のメイド長であるサラさんが、お店から絶大な信頼を受けている御蔭なんだろう。
 とは言え、てっきり某ギャルゲーみたく、荷物運びとか倉庫整理、あるいは厨房の手伝いとかをさせられるものだと思ってたのに、更衣室でサラさんから手渡されたのはメイド服だった。
 「えーっと……僕に、これを着ろ、と?」
 「はい。サイズは合っていると思いますが?」

 ──ニコニコニコ

 普段クールなサラさんとも思えぬイイ笑顔を向けられて、僕は降参するしかなかった。
 ここの制服は、アキバの街角でよく見かける半袖ミニスカメイドとは異なり、襟の高いブラウスと濃紺の長袖ワンピース&白いエプロンという英国式の服装だ。スカートが膝丈でストッキングも履いてる御蔭で肌の露出は少ない反面、コスプレとかじゃない本物の「女性の服装」という感じがして、どうにも落ち着かない。
 「よくお似合いですよ」
 褒められて満更嬉しくないわけでもないのが、また複雑なところ。
 鏡の中に映るのは、愛しのあの娘によく似たメイドさんなワケで……嗚呼、どうせなら本物の瑠衣のメイド服姿を見たかったよ。

 とは言え、実のところ、カゲヤシとかNIROとかの血生臭い話をしばしの間でも忘れて、ただのアルバイター(メイドだけど)として働ける時間があると言うのは、精神的に結構貴重かもしれない。
 そのことに気付いたのは、初日のバイトが終わった直後、サラさんを含む店の人達に労いの言葉をかけてもらった時だった。
 うん、確かに僕は、「この時間」に戻って以来、ちょっと気負い過ぎていたのかもしれない。
 状況は必ずしも芳しいわけではないけど、かといって絶望的と言うほどでもない。確実なアドバンテージだってある。
 何より、「以前」彼女が愛してくれた「僕」は、「どうやってより強くなるか」「如何に効率的に敵を倒すか」ってことばかりに気を取られた効率厨のバトルフリークじゃなかったはず。
  視野狭窄って怖いなぁ。あるいは、優に言わせれば、その方が「カゲヤシらしい」んだろうけど、少なくともそんな僕を瑠衣は好きになってはくれないと思う。
 その事に思い至れただけでも、このバイトを紹介してくれたサラさんには感謝すべきだろうな。

 で、それはいいとして……。
 「どうして、僕はサラさんの部屋で寝ることになってんですか!?」
 それじゃあ、意味ないじゃん! どうせ居候するなら、むしろゴンちゃんやノブくんの部屋にお邪魔した方がいいでしょ。
 「ご安心ください。本日はたまたまお部屋の用意が間に合わなかっただけで、明日からはこの寮の一室を使っていただく予定です」
 「あ、そーなんだ」
 むしろ夕方になってから臨時バイトをねじ込めただけでも、サラさんの交渉力と信用度が尋常じゃないとわかるからなぁ。部屋の用意まで手が回らなかったのも無理ないか。
 「でも、ひと晩だけとは言え、サラさんいいの? 僕、こう見えても男のコなんだよ」
 今は「コ」の部分に「娘」の字を宛てても違和感ない点が悔しいけど。
 「あぁ、そうですね。すっかり忘れておりましたわ。でも……問題ないのではないでしょうか?」
 へ!?
 「わたしもこう見えて主人に仕えるメイドとして最低限の護身術は身に着けております。とは言え、それでも本気で戦えば実戦で腕を磨いているチトセさんには叶わないかもしれません。
 ですが、チトセさんは理由もなく嫌がる婦女子に乱暴なさるような方ではないと信頼しておりますので」
 そう、ですね、確かに「相手がカゲヤシとか向かってくる敵でなければ」、この力と技をみだりに振るうつもりはありません。そもそも女の子に「そういう意味」で乱暴するのは、僕のなけなしの倫理観が許しませんし。
 「ですから、問題はない、と申し上げたのです」
 うぅ……そういう曇りのない「信頼してます」みたいな瞳を向けられると、これ以上反対しにくいなぁ。
 確かに、僕は心に決めた娘がいるし、仲間で恩人でもあるサラさんに不埒な真似をする気はないけどさぁ。

 ──結局、僕は押し切られるまま、ひと晩サラさんの部屋にお世話になることになった。
 プライベートでのサラさんは、メイドモード時よりほんの少しだけ砕けた感じで、それでも基本的な印象は変わらず「良家の子女」って死語が脳裏をよぎる。
 「夜はあまり食べませんので、こんなものしか用意できませんけど」
 「いえいえ、十分です。それに美味しいですよ。ありがとうございます」
 さらに、世話好きで甲斐甲斐しいのもデフォらしい。「上品で優しいお姉さん」って感じだ。
 僕は、下に生意気な妹がひとりいるだけだから、ちょっと憧れる。どうせならサラさんみたいなお姉ちゃんが欲しかったなぁ。
 「あら、それでは姉妹(スール)の契りでも交わしますか?」
 ニッコリ笑って冗談を言うサラさんと言うのも、なんか新鮮だ。
 「アハハ、考えときます。確かに今の僕は、バイト先でサラさんに「ホワイトプリムが曲がっていてよ」と直される立場ですしね」
 「(あながち冗談でもないのですけれど)今日はお疲れでしょうから、チトセさんが先にお風呂を使ってください」
 「え? いや、それは流石に」
 家主より先に居候が風呂に入るのも、ねぇ?
 とは言え、「後から入る方が、後始末するのが楽ですから」とまで言われてしまっては仕方ない。お言葉に甘えて、お風呂に入らせてもらうことになった。
 この姿になって初めての風呂での詳細は割愛させてもらう。詳しく描写すると15禁になりそうだし。
 ただひと言、「女の子の肌はデリケート」だとだけ言っておこう。い、いや、ボクはれっきとしたオトコノコなんですけどね。
 ──脱衣所に置かれたレモンイエローのパジャマを見て、ほんの少し挫けそうになったけど。
 「さ、サラさぁん!」
 とりあえず、バスタオルだけ巻いて部屋に戻り、泣きつく僕。
 「何でしょう? サイズは合うと思うのですが」
 確かに、体格面では(胸がないことを除くと)僕とサラさんは比較的似ている。体重はさすがに恐くて聞けないけど、身長差はたぶん2、3センチ以内だろうし。
 とは言え……僕に、このフリルとリボンで飾られた乙女ちっくなパジャマを着ろと言うのか!!
 「? こちらのピンクのネグリジェの方がよろしかったのでしょうか?」
 い、いえ。謹んでコチラのパジャマをお借りさせていただきます。
 ガックリと肩を落とすと、僕はトボトボ脱衣所へ後戻り。
 で、いざパジャマに袖を通そうとしたら、その下に白と水色の横縞模様のショーツ──いわゆる「縞パン」が置かれていることに気が付いた。
 「すわ゛ら゛、すぁ゛~~ん゛!!!」
 「ご安心ください。そちらは封を切ったばかりの新品です。チトセさんに差し上げますから」
 僕の涙ながらの抗議に涼しい顔で切り返すサラさん。
 アンタ、ぜっ、たい、わかってやってるでしょ!

-つづく-
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#一級旗建築士見習・七市チトセの、フラグ構築その2の様子をお送りしました。
……だから、言ったじゃないですか。そろそろシリアスはモたないって!(笑)
とは言え、サラさんの場合、チトセを異性と言うより妹分的にいぢってモフモフしたいと言う願望が強いのですけどね。


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