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米倉・経団連会長:就任1年 震災で一変、政権に不満 法人減税、TPP先送りに失望

インタビューに答える日本経団連の米倉弘昌会長
インタビューに答える日本経団連の米倉弘昌会長

 日本経団連の米倉弘昌会長が26日の定時総会で就任1年を迎える。民主党政権との関係修復を図り、新成長戦略や税制改革などで経済界の主張を反映させることに成功したが、東日本大震災以降は菅政権の対応への厳しい指摘が目立つ。また、ねじれ国会や震災の復興財源確保のため法人減税の実現はかすみ、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)など貿易自由化をめぐる議論も足踏み状態のまま。復興と日本の国際競争力強化に向けた政策実現のため、政権との距離感をどう調節していくのか、2年目の手腕が問われる。【宮崎泰宏】

 「政治とは建設的な対話を重ねていく」。昨年5月の就任会見で米倉会長はそう述べて、政権を握った民主党との関係強化を重要課題に掲げた。自民党政権時代、経団連は自民と蜜月関係にあった半面、民主とは疎遠で、軌道修正が必要だったためだ。同8月には早速、民主との政策対話を実現。民主の参院選敗北や、菅直人首相の支持率急落にも粘り強く政権支持の意向を表明し続けた。

 結果として、菅首相は経済界の主張を色濃く反映した「平成の開国」を宣言。法人減税もほぼ要求通りの回答を引き出すなど、政治への影響力を回復しつつあった。

 しかし震災と原発事故の後、米倉会長は被災地の復興への対応や、東京電力の賠償枠組み問題、中部電力浜岡原発の突然の停止要請などに対し、公然と政権批判を繰り広げるようになった。

 態度急変の背景には、菅首相の場当たり的な発言や行動への幻滅感に加え、法人減税の凍結やTPPの参加表明の先送りなど、経団連の1年間の取り組みが仕切り直しを余儀なくされたことへの失望感が背景にあるとみられる。政策対話が肝心の政策実行に結びつかず、政権に対していら立ちを深めているのが実情だ。

 しかし一方で米倉会長は「国民が抱く不安を一掃する努力をすれば信頼も戻ってくる」とも述べ、菅政権への期待をなお口にする。提言する政策が実現されない限り、経団連に存在意義はない。そのことを熟知する米倉会長だからこそ、政権支持の最後の一線だけは守る姿勢を見せ続けている。

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 ◇米倉経団連会長の主な発言◇

 「政治とは建設的な対話を重ねていく」

 (10年5月27日の定時総会後の会見で)

 「比例では民主党が最大議席を確保し、国民の支持は揺らいでいない」

 (同7月12日、参院選での連立与党の過半数割れを受けて)

 「我々と民主党の政策はかなり合致する」

 (同8月5日、民主党との政策対話の懇談後)

 「長期政権を確立し、重要課題に取り組んでほしい」

 (同9月14日、民主党代表選での菅首相再選を受けて)

 「(菅)首相の決断に敬意を表する」

 (同12月14日、法人減税が決まって)

 「東電だけに責任を負わせず、国が主導して対応すべきだ」

 (11年4月7日の毎日新聞のインタビューで損害賠償問題について)

 「間違った陣頭指揮は混乱を起こすもと」

 (同4月26日の会見で、菅首相の原発事故対応について)

 「唐突感が否めない。民主党政権は透明性を強調するが、政治の態度を疑う」(同5月 9日の会見で、浜岡原発停止要請について)

 「(原発事故の)賠償問題に絡んで出てきた議論で、動機が不純」

 (同5月23日の会見で、菅首相が検討を表明した電力会社の発電、送電部門分離について)

毎日新聞 2011年5月26日 東京朝刊

 

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