エコノミスト・今週の2本

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第1特集:米国債を売れ!

 ◇復興財源に外貨準備を活用せよ

 ◇根津利三郎(ねづ・りさぶろう=富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー)

 東日本大震災からの復興財源をめぐって増税か国債発行かという路線対立にはまり込んでいるが、一刻も早く被災者の苦労を和らげ、日本経済を速やかな回復軌道に乗せるために、まずは日本政府が積み上げた巨額の外貨準備の取り崩しで対応すべきではないか。

 これから震災で失われたインフラや仮設住宅の建設、放射能被害に対する補償などのために緊急に5兆円を超える財源が必要だという。復興のために特別国債を発行する案も提案されているが、結局は国の負債になることについては変わりない。

 まず考えるべきは、国が保有する外貨準備の取り崩しだ。現在、日本の外貨準備は約90兆円に達しており、これは中国についで世界第2位だ(図1、2)。5兆、10兆円の取り崩しは円に対する国際的信用にそれほど大きな影響があるとは思われない。しかも外貨準備の約7割は米国債で運用されており、全く有効に活用されていない。

 そもそも日本のように為替レートを市場に任せていて、外貨建ての国債の発行もない場合、外貨準備は必要ない。安心して使えばよい。

 ただし、日本の外貨準備は大半が米国債なので、これを一度に売却するとさらに円高になってしまうので、目立たぬようにする必要はあろう。

 経常収支はこのところ減少気味だが、それでも10兆円を優に超える黒字を維持している。今回の震災で一時的には輸出が止まるなどの事態が想定されるが、長期的に赤字に転落するような事態は想像されない。多少黒字が減って円安になるようであれば、外貨準備の取り崩しにとってはむしろ好都合だ。(本誌につづく)

2011年6月4日

 

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