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原発事故 計画的避難の村―福島・飯舘(下)菅野典雄村長に聞く/帰村へ、土壌改良促進

「できるだけ早い時期の帰村を願って、避難計画を考えてきた」と話す菅野村長

 福島県飯舘村の計画的避難は5月15日に始まり、31日までに人口の8割弱に当たる4750人が村外に避難した。村と住民のつながりをどう維持していくのか。今後の見通しや課題を菅野典雄村長(64)に聞いた。
 ―計画的避難の進み具合は。

<補償糸口つかむ>
 「(政府が言っていた)1カ月以内での全村避難は、最初から無理だと思っていた。ただ、思っていたより順調に進んだ。県内の公共施設などは、既に他の地域の避難者が入っているケースが大半。村に(車で)1時間程度で行ける避難先を探すのが難しかった」
 「残っている人の中には、牛の処分に取り組む畜産農家らがいる。それが済めば、避難はもっと進むだろう」
 ―畜産の補償はどうなっているのか。
 「牛については東京電力の補償の基準額が決まった。納得のいく内容で、畜産以外の補償の糸口がつかめたように思う。避難によって休業せざるを得ない村の企業をどう支援するのかも、これから重要になっていく」
 ―村の九つの事業所は避難後も操業を継続することになった。
 「全村避難とはいえ、ゴーストタウン化するのはよくないし、避難者の生活のリスクも少なくしたい。引き続き働いて収入を得られることは、生きがいにもつながると思う」
 ―村に通勤し、放射能を浴びたら避難の意味がないという声もある。
 
<線量管理は徹底>
 「操業を継続するのは、放射性物質の影響を受けにくい屋内活動が中心の業種だけ。各社には従業員の被ばく量が年間20ミリシーベルトを超えないよう、線量管理を徹底させる」
 ―放射線の専門家が講演会で安全性を強調した直後に計画的避難が決まるなど、村民には国や東電への不信感が根強い。
 「講演は、村の放射線量は日常レベルでは問題ないが注意は必要、過敏にならないでほしい、という内容だったと理解している。(放射線量が高くて)もうどうしようもない状態などと受け取るのは、いかがなものかと思う」
 「線量の高い地区があるのは事実で、住民が長期間、屋内に退避したりして、体調や容体が悪化しているケースもあるように感じる。過度に反応するのは、好ましいことではない」
 ―村が確保した避難先が福島県内に限定されているのはなぜか。県外避難を望む声もある。
 
<解除を段階的に>
 「遠くに避難すれば、当面は安心できるかもしれない。しかし村の様子も分からず、連絡も取れないような状況になったら、生活面で支障が出るはずだ。村と住民のつながりやコミュニティーは、これからも維持していきたい」
 ―汚染土壌の改良プロジェクトが始まった。
 「住民が村に早く戻れるようにするためには何をすべきか、という考えから出発した。土壌改良を進めるうちに放射線量の低下が確認できたら、段階的な避難解除を国に求めていきたい」


2011年06月06日月曜日

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