毎日新聞は4、5両日、菅直人首相の退陣表明を受けて、全国世論調査を実施した。3月11日に発生した東日本大震災から3カ月が経過するのを前に、被災地の復旧・復興のために国会が「機能していない」との回答が85%に上り、「機能している」は8%にとどまった。各党の支持率が伸び悩む一方、「支持政党はない」が97年に始めた現行の電話調査方式で最高の53%に達した。
菅首相の退陣表明については「評価しない」(49%)と「評価する」(45%)が拮抗(きっこう)した。退陣後の新政権の枠組みは「民主、自民両党の大連立」が36%と最多。「民主党中心の政権」や「自民党中心の政権」はともに13%にとどまり、「その他」の枠組みを求める回答も33%に及んだ。
内閣不信任決議案を提出した野党の対応について「評価しない」という回答が61%に上り、「評価する」(32%)を大きく上回った。不信任案が2日の衆院本会議で否決された結果についても「よかった」が53%で、「よくなかった」は38%だった。菅政権の内閣支持率は5月の前回調査比3ポイント減の24%。不支持率は前回から3ポイント増の57%と上昇した。
政党支持率をみると、自民党が前回比2ポイント減の17%にとどまった。民主党は15%で横ばいだった。一方、「支持政党なし」(53%)は前回から3ポイント増え、これまで最も高かった小泉政権時の03年1月の51%を超えた。衆院解散・総選挙の時期については「菅内閣の次の政権が発足したらすぐ」が45%で最も多かった。
被災地に対する政府の支援や復興への取り組みについて評価を聞いたところ、「大いに評価する」(3%)、「ある程度評価する」(35%)が計38%だった。4、5両月調査の同じ設問で、「評価する」は計50%を占めており、減少に転じた。今回調査では「あまり評価しない」(39%)、「全く評価しない」(18%)が計57%と半数を超え、4月(46%)と、5月(44%)を上回った。
福島第1原発事故への政府の取り組みに対しても「大いに評価する」「ある程度評価する」は計23%で、「あまり評価しない」「全く評価しない」が計71%に上った。【松尾良】
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東日本大震災による被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の一部地域は、今回の調査対象に含まれておりません。
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■解説
沈み行くのは菅直人首相だけではない。東日本大震災に原発事故も加わった非常事態に85%から「機能していない」と断じられた国会も深刻だ。
毎日新聞が4、5日実施した全国世論調査では「支持政党なし」の無党派層が過半数の53%に達し、国民の不信感が政治全体へ向けられていることを示した。
菅内閣の支持率は24%しかないにもかかわらず、内閣不信任決議案の否決は53%が「よかった」と回答した。復興対策を置き去りにしての不信任案提出自体を61%が評価しなかった。
仕事をしない国会への失望感が政党離れとなって表れ、無党派層の割合は働き盛りの40代で64%、30代でも60%を占めた。
民主党内では小沢一郎元代表のグループが震災後も毎週、会合を開いては菅首相の政権運営を批判。国家的危機にも内紛を続ける同党への信頼も失墜した。民主・自民の大連立を望む36%の回答は、どちらにも任せられないという思いからの消極的選択だろう。
5月下旬、フランス、ベルギーを訪問した菅首相を迎えたのは、震災に立ち向かう日本人の尊厳と勇気への称賛だった。その被災地の姿と、「ポスト菅」の駆け引きが激化する政治の現状とのギャップ。この週末、被災地に入った民主党幹部は政治不信を肌で感じ、「もう相手にされていない」とつぶやいた。【平田崇浩】
毎日新聞 2011年6月6日 東京朝刊