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きょうの社説 2011年6月6日
◎「休日千円」廃止 高速料金の迷走に終止符を
東日本大震災を受け、高速道路の「休日上限千円」や各地の無料化実験が打ち切られ、
今月20日から東北地方中心の無料化が新たに始まることになった。被災者支援や被災地の物流を活発にする狙いは分かるとしても、これによって無料化を既成事実化し、十分な検証もないまま、他の地域にも拡大するのは反対である。あくまで震災復興の時限措置であることを明確にする必要がある。休日千円の廃止や無料化実験の凍結は、震災に対応した今年度第1次補正予算の財源を 捻出するためである。今年度の北陸自動車道の夜間無料化実験なども中止となり、北陸にも高速料金をめぐる方針転換の影響は避けられない。 無料化実験の凍結を決めたなら、これを機に思い切って政策転換に踏み出すときである 。民主党政権が高速料金で迷走したのも、政権公約である無料化にこだわってきたからである。その看板を降ろさなければ、場当たり的な対応はいつまでも続くだろう。 今回の震災では、東北自動車道などの高速道路が救助、救援の大動脈となり、生活や経 済を守る役割が再認識された。道路が一つ切れても、他の道路が大丈夫なら物流が確保できることも分かった。災害に強い国土づくりには、つながっていない高速道路を早く結んで整備効果を引き出すことが大事である。料金体系も整備と一体の議論が求められる。 さらに大事なのは交通体系のなかで高速道路を考える視点である。休日千円では、鉄道 、海運、航空などにも影響が広がった。地域の交通ネットワークは、それらと高速、一般道路を含めたバランスの上に成り立っている。高速道路のあり方を考えるためにも、休日千円やこれまでの無料化実験の検証は不可欠である。 受益者負担の原則、過去の道路建設の巨額債務を税金で肩代わりすることの是非など、 震災発生で、議論し直すテーマはいくつもある。大きな視点で議論を始めるためにも、まずは無料化政策の白紙を明確に打ち出してほしい。
◎サイバー法案 国際連携を強める必要
ソニーやグーグルのネットサービスシステムに対するサイバー攻撃が問題になる中、サ
イバー犯罪を取り締まるため、コンピューターウイルス作成罪の新設を柱とした刑法改正案が衆院で可決され、参院に送付された。有害なウイルスを作成しても、それを直接処罰する規定がない法の不備を埋めるものである。サイバー犯罪の摘発強化は世界的な課題であり、国内法の整備とともに、サイバー攻撃に対する国際連携を強める必要がある。サイバー攻撃は瞬時に全世界に影響が及ぶ恐れがあるため、それに対応する訓練の規模 も拡大している。米国がこれまで英国など数カ国と実施してきた共同演習には昨年、日本を含む13カ国が参加した。欧州連合(EU)も昨年、全欧規模のサイバーテロ演習を初めて行っている。こうした国際的な連携をさらに拡充したい。 総務省はサイバー攻撃に関する国際的な情報収集ネットワークを構築し、早期に検知、 対応する技術開発に取り組んでおり、その成果を期待したい。 近年は国家を狙った大規模なサイバー攻撃も目につく。韓国では2009年に政府や金 融機関などのウエブサイトが攻撃され、今年に入っても農協の電算システムがマヒした。韓国は北朝鮮によるサイバーテロとみて、韓国軍の「サイバー司令部」の要員を倍増するなど対応策を強化している。 北朝鮮は国家間の正規戦ではなく、テロ攻撃などの「非対称戦」を重視し、その一環と してサイバー攻撃能力を高めている、というのが韓国側の見方である。 また、米国政府は重大な被害をもたらすサイバー攻撃を「戦争行為」とみなし、武力反 撃を認める方針と伝えられる。有事対応としてサイバーテロへの備えを強化しているのである。 日本では、国の機能をマヒさせる大規模サイバーテロを「武力攻撃事態」とみなすかど うかといった議論が国会でなされたことはあるが、政府の見解は明確に示されていない。国の安全保障の面からの議論と備えにもっと力を入れる必要があるのではないか。
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