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[28159] 【ネタ】飛竜になりました!(モンハン チート)
Name: じゅっ◆8bd2907f ID:e2dfdefe
Date: 2011/06/05 21:50
 どうしてこうなった。

 水面を見る度に俺はそう思う。
 今、水面には凶悪な形相が映っている。
 水面を見る度に、俺はあの瞬間の事を思い出す。

 「お主、転生してみんか」

 死んだ直後に、気付いたらそんな事を言われていた。
 自分が死んだ事は覚えている。
 信号を待ってたら、スピード出しすぎの車が向こうから走ってきた。
 若い奴が片手運転をしていて、危ないな、と思っていたら、猛スピードのまま変わりかけの信号を曲がろうとして見事にスピンして交差点に突っ込んだ。
 結果として、俺は車にぶつかられて、そのまんま猛速度を維持したまま背後のビルとサンドイッチになった。即死出来てりゃ楽だったのに、しばらく意識が残ってたせいで酷く辛かった。
 まあ、間もなく意識がブラックアウトした訳だが、あれで生きてたらそれこそ奇跡が山盛りで必要だろう。

 「はあ、転生ですか」

 だから、死んだのは納得出来るが……こんな展開は予想してなかった。
 まあ、死んだ後どうなるか、なんて誰も知ってる奴はいないんだ。こんなのがあってもいいのかもしれない。
 
 「そうじゃ。実はお主が死んだのがちょうどわしの孫が生まれたのと重なったのじゃ」

 ………なんだって?
 話を聞けば、この爺さんは一応神様に分類される存在らしい。
 神様に子供とか孫とか生まれるのか?ってのはとりあえず置いておいてだ。爺さんが言うにはジャストで死んだ奴に転生の機会を、生まれた奴に祝福を与える事にしたらしい。要はご祝儀みたいなもんだ、とか言ってた。……生まれた奴羨ましい。
 まあ、仕方ない。
 とりあえず話を聞けば、俺は記憶を持って生まれる事が出来るらしい。
 
 「とはいえ、もちろん条件はある」

 まず生まれる世界は元の世界とは異なる世界である事。
 同じ魂をそのまま同じ世界に送り込むと、歪みが生じる云々とか言ってたが、まあ、要はどうにもならないって事だ。
 何か希望はないか。
 そう言いつつ、爺さんが自分が管理してるという世界のリストを見せてくれた。
 俺の世界に似たような漫画とかがあれば、その世界にも行けるとか言ってくれた。
 が、だ。
 殆どろくなもんがなかった。
 世紀末世界だとか、絶滅戦争勃発中だとか、異界からの侵入者と絶望的な戦争中だとかそんなんばっかり。
 
 「……平和な世界ってないんですか」

 「ないのう。わしゃ基本が争いごと司どっとった神じゃし」

 だから、戦争とか争いとか闘いが多い世界が管理に入ってるらしい。
 ……あの元の世界も多い部類なのか。
 そんな中、どっかないか、と探してたら、一つ知った名前があった。『モンスターハンターに似た世界』。
 
 「……これどんな世界なんです?」

 聞いてみれば、モンスターハンターによく似た世界らしい。
 ただ、少し違うのはハンター達の中でもあんなゲームみたいにモンスターを狩れる奴はごく一部らしい。
 ……そりゃそうか。
 幾ら身体能力が高くても、運が悪かったなんて事はあるだろうし。
 そもそも、モンスターもゲームみたいにぽこぽこ出てこないというのがでかいらしいが……。
 そりゃそうか。
 ゲームなら古龍だろうが、クエストが一度出てくれば何回でも、それこそ何十回でも狩れるが、本来希少な古龍種だ。現実にはそんなにほいほい出てこない。
 当然、討伐経験も限られるから、如何に強いハンターといえど、実際に飛竜以上の種を狩った者は限られる、という事らしい。
 反面、飛竜を一度倒せば、その広大な縄張りの領域に人が新たに空白となった領域に飛竜が訪れるまでに街を作れるという利点もあるらしいんだが……。
 
 「して、何か希望はあるかの?」
 
 何でもかんでもという訳にはいかないが、一つや二つなら構わない、という事でとりあえず言うだけは言ってみる事にした。

 「……とりあえず強い体が欲しいですね。見た目は普通で筋肉むっきむきとかじゃないけど、誰にも負けないぐらい強い、そんな感じの。出来れば格好いいと尚更」

 これはモンスターハンター世界に行くというなら当然の話だ。
 だってそうだろう?折角モンスターハンターの世界に行くんだ!ハンターやってみたいじゃないか。
 でも、そうなると飛竜とかにも対抗可能な体が必要な訳で……でも、むっきむきの筋肉達磨じゃなんかなあ……って気がするし。
 あと、運があればより嬉しい、って事で付け加えてみた。
 だってさあ、駆け出しの時に古龍に運悪く出くわしました、じゃたまらんだろう?爺さんは快くOKしてくれて、そうして俺は転生した……。 

 ……ああ、確かに強い体に転生してくれたさ!
 けどな……人じゃないなんて誰が想像したよ!?
 おぎゃーと生まれてみて、初めて見た顔がごつい竜の顔だった俺の驚愕を考えて欲しい。
 びっくりしながらそれでも襲う様子はなく、むしろ愛情を注いでくれているのが分かったから、少しずつ落ち着いた。
 そうして周囲を見てみると……蒼色の鱗の竜と、緑の鱗の竜が一匹ずつ。
 瞬間分かった。……空の王リオレウス(亜種/父親)と陸の女王リオレイア(母親)だと。
 そして、改めて俺の体を見てみると、赤い体……そう、俺はリオレウスに転生していたのだ。

 その後は簡単に述べよう。
 爺さんに頼んだ通り運は良く、というべきか、いや、単純にこの辺はまだ人が立ち入ってなかったのだろう。それもまた運って事はおいといて、弟妹も無事に生まれ、育ち……。
 やがて、俺含む四匹の子供達、内訳はリオレウス2匹とリオレイア+リオレイア希少種の子供達は巣立ちした。
 今、彼らがどうしているかって?それは各自がそれぞれに親の縄張りから離れたから分からないな……。まあ、どっかで会えれば、その時は分かると思うが。
 さて、俺はリオレウスに生まれた。だが、強さは確かに破格だった。
 見た目は普通のリオレウスだ。
 だが……中身は魔改造リオレウスだった。
 パワーも、耐性も強靭さも、そしてゲームでいう所の特殊能力も全てが規格外だった。
 咆哮一つにしてもティガレックスの咆哮を超え、風圧は龍風圧に匹敵。ブレスはラージャンのビームを真っ向からの撃ち合いで粉砕して、相手を吹き飛ばす、といえばその度合いが分かるだろうか。  
 何で分かるかって?そりゃあ、運良く体感出来たからだ……この場合、古龍にまで出くわしたのは運悪くというべきなんだろうか?
 ま、空飛んでれば、行動範囲は広いから可能性はない訳じゃないだろうが……。
 ちなみにゲームではライバルとされてたラギアクルスとバトルした時には、あっさり勝利して獲物として持ち帰ったと言っておこう。 
 ……見た目とかからG級並だと思ったんだがなあ、こいつ。

 そうして、俺はある穏やかな気候の場所に巣を作った。ゲーム風に言えば、森丘に当たるんだろうか。もっとも、巣はゲームみたいな簡単に人が入れる洞窟じゃなく、空高い絶壁に開いた裂け目奥に広がる洞窟だったが……。
 ……人恋しさがなかった訳じゃないが、こんな姿で赴いた所で戦闘になるだけだろう。
 それに竜としての本能、竜生にさすがに慣れていたのもあったんだろうな……。いや、慣れないといけなかったというべきか。
 時折、侵入してくる奴もいた。
 何しろ、獲物は豊富、水も豊富となれば無理もない。だが、その全てに勝利して、この地域に君臨し続け……偶には火山やら密林、砂漠といった他の地域に行ったりもしつつ、それなりの時、きっと何十年かが過ぎた頃。
 
 人間がやって来た。


【あとがき】
見た目は通常のリオレウス
中身だけ魔改造です
弟妹達?出るかは不明です



[28159]
Name: じゅっ◆8bd2907f ID:e2dfdefe
Date: 2011/06/04 11:27
 ハンターの仕事とはただ、モンスターを狩るだけではない。
 採取もそうだし、採掘もそうだ。
 或いは護衛任務などもあるし、探索だってある。
 今回はその内の探索に当たる。
 ゲームでも新しいフィールドが発見された、という時にギルドからの極秘依頼、という形で「危険があるだろうから」と腕利きのハンターに探索に赴いてもらう、というものがあるが、それは何も極秘なものだけではない。
 開拓村の為の先行調査。
 それが今回の依頼だった。
 
 開拓村の為の先行調査をハンターが行うのは、危険が予想されるからだ。
 何しろ、これまで人が本格的に住み着いた事のない場所だ。
 そこが荒地ならば、水が確保出来るか。住んだとして、生活していく目処は立ちそうか。
 豊かな土地ならば、そういう心配はないが、そういう場所にはモンスターの数も多い。
 可能ならば、その生息領域を確認すると共に、場合によってはドス級モンスターを狩る必要もある。
 最悪、飛竜クラスが生息しているのならば、討伐隊を繰り出さねばならない。
 ハンター達にとって出くわす事が多い大型モンスターは、各種のボス級モンスターだ。
 所謂ドスランポスやドスジャギィ、或いはドドブランゴなど。
 それらは群が一定の大きさを超えれば、自然と生まれてくる。

 反面、特に面倒なのが大型の飛竜種だ。
 彼らの行動範囲は広い。
 飛行能力を保持する為に、大型故に食料もたくさん必要とする為に、行動範囲すなわち縄張りも広くなるのだ。
 何が面倒かといって、最初の調査では目撃されなかったからといって、そこが飛竜種のテリトリーではないと一回では断言出来ないからだ。
 結果的に、幾度も調査を重ねる事で、目撃情報がないか探っていく事になる。
 もっとも、実際には他の調査も含めるとどの道複数回の探査が行われるのだが……。

 「……いい土地だな」

 五人の集団からなるハンターの一人がそう呟いた。
 確かに良い土地だった。
 穏やかに広がる草原にはアプトノスの大きな群が草を食んでいる。
 中央には大きめの川がゆったりと流れて、海へとそそぐ。
 視界には雄大な山脈があり、その麓から森も広がっている。
 確かにここならば、水の確保も問題なく、耕作も可能。森の恵みや狩りも大丈夫だろう。
 
 「だが、気になる事もある」

 別のハンターがそう言った。
 誰もが薄々理解していた。
 これだけの豊かな地であるのに、ランポスなどの鳥竜種の数が限られている。
 肉食の獣の存在は生態系には不可欠だ。
 草食の獣だけでは、やがて草食動物も食べるものがなくなって減少に移る。
 生態系が維持されているというからには、そこには草食動物を捕食する肉食動物がいるはずなのに、ランポスなどにドス級がいない。それが意味する所は……。

 「いる、という事か?飛竜種が」

 ごくり、と誰かの喉が鳴る音がした。
 いや、或いは全員だったのかもしれない。
 ここにいる誰もが飛竜種との戦闘も経験しているベテランハンター達だ。だが、それはこんな少数ではなく、もっと大規模な部隊の一員として、だ。
 何も好き好んで危険を冒す事はない。
 少しでも安全に狩りを行う為に、特に危険な飛竜ともなれば、ハンター達は部隊を組み、それでも生還出来ない者は必ずいた。

 「せめて、イャンクックとかならいいんだが……」

 「古龍だったりしてな」

 そんな軽口を叩いた時だった。
 空が翳った。

 「「「「「!!!」」」」」

 全員が見た。
 空を舞う赤い鱗の飛竜を。
 アプトノスをその両脚で掴み、空を飛翔し、彼らの頭上を超え、悠然と山脈へと向っていく。
 その姿こそ名高き空の王。

 「……リオレウス」

 誰かの呟きが彼らの間に静かに響いた。


【あとがき】
とりあえず、書いてみる



[28159]
Name: じゅっ◆8bd2907f ID:e2dfdefe
Date: 2011/06/04 11:27
【SIDE:人間ズ】
 「……空の王リオレウスか」

 苦い顔で唸った男達がいた。
 開拓村(予定)の中心人物達だ。
 
 「厄介だな」

 深い溜息が漏れた。
 飛竜種がいるといっても、即討伐には至らない。
 理由は単純で、まず一つは純粋に危険な事。
 一つは討伐資金がかかる事。
 これは人数が大勢になる事や、装備にかかる金が多額になる為だ。
 一つは飛竜が即人を襲うとは限らない事。
 十分な獲物がいるならば、飛竜はそちらを狙う。
 言い方は悪いが、人は大型の飛竜のご飯には小さすぎるのだ。
 無論、逆に言えば一般人が襲われたりしたら、まず助からないと思ってもいいのだが……一人やそこらならば、これまた言うのは何だが予想の範囲内だ。
 開拓とは厳しい。
 村となるまでに、全く犠牲が出ずに終わる事は滅多にない。
 貴重な鉱石が取れる事から設けられた雪山の小さな開拓村を襲った悲劇で有名なものでは、冬、飢えたモンスターが襲撃を繰り返し、次々と村人が犠牲となっていき、やむなく村を後に脱出した者達も街へと辿り着く過程で襲撃を受けたり、力尽きて倒れたりして、街へと辿り着いたのはたった一人の樵だった、という話がある。
 まあ、今回の地は冬とてそう寒くならない場所だから、そこまで酷い事にはならないとは思う。
 だが……。
 それでも、飛竜が空を舞う地で安心して暮らせ、というのは酷な話だ。
 
 「……領主に話はしてみるか」



【SIDE:転生者】
 俺は気持ちよく空を飛んでいた。
 やっぱり住み慣れた場所はいい。
 今日のご飯はイャンクック。
 迂闊に俺の縄張りに入り込んだ所を狩った。
 ……動物化してる、なんて言わないでくれ。
 長い事竜生活なんてやってると、人と話す事さえない状態が続いてると、どうしてもそうなってしまうんだ……。
 もう、俺が人だった頃の生活なんて殆ど覚えてない。
 何しろ、一人暮らしになってからは必死だった。
 それまでみたいに巣で待ってれば食い物がやって来る、なんて状況じゃない。
 自分で狩りをする、人間風に言えば自分で稼がないといけないんだ。
 
 家だってない。
 俺が独り立ちして、まず探したのは住みやすい場所だった。
 人間がほいほい来る所じゃ拙い。
 幸い、まだこの世界じゃ人の領域は狭い。そして、俺には空を飛ぶ翼がある。
 狩りをしながら、快適な場所を探してた。
 そんな折、俺はこの地でアプトノスを狩った。それがこの地に住む事になる原因となる時はあの時は夢にも思わなかった……。

~回想~
 「小僧、誰に断って、この土地で狩りなぞしている」

 俺の目の前で唸っているのは……こいつひょっとしてベルキュロス?
 うん、左右の翼から尻尾みたいなのが出てるし……全身が帯電してるみたいな感じだから多分間違ってないと思う……。
 つか、お前峡谷で生息してるんじゃないのかよ?
 そんな風に思ったが、確かにこんな場所に住んじゃいけない、って訳でもないだろう。
 考えてるせいで、苛立ったのだろう。放電が強まった。

 「小僧……死にたいのか?」

 果たして、こんな風に喋ってるのって、人が聞いたらどう聞こえるんだろう……。
 
 「いや、まあ……狩りをしたのは腹減ったからだよ。悪かった」

 頭を下げたんだが……次の瞬間そのまま飛び退った。
 当然だろう、下げた頭にいきなり翼から伸びる鉤爪を鞭みたいに振るってきたからだ。

 「何するんだ」
 
 「ふん……避けたか」

 獰猛に哂ってるよ、おい……。
 というか、殺る気満々じゃね、こいつ?
 ここで俺が取れる選択肢は……。
 1、ひたすら謝る
 無理、どう考えてもやっこさん殺意で一杯だ。
 さっきの俺の態度が怒らせちまったみたいだ。止まりそうにない……。
 2、逃げる。
 逃げ切れるか分からんのだよなあ……。
 ベルキュロスの飛行速度と俺の飛行速度どっちが早いかなんて試した事ないし。
 似たり寄ったりの速度だと最悪だ。
 後ろから好き放題ブレスはきまくりになってしまう。却下。
 3、説得する
 1に通じるな、却下。
 4、戦う
 ……それしかないかな。
 これまでもやむをえず戦う場面はあった。
 でも、ある程度ダメージを与えたら立ち去ってきたんだ。
 理由は、ある。
 同じリオレウス、リオレイアだったら同族って事もあるし、なんか気が引けた。
 特にリオレイアは雌だしなあ……。
 火山、雪山、荒地なんかは住みにくそうだった。
 まあ、その他色々あるんだが……。
 
 「本気か?俺は古龍種にも勝った事があるんだぞ?」

 「……脅しか、ふざけた事を言う奴だ」

 やっぱ駄目か。本当なんだけど……。
 しょうがない、殺るしかなさそうだ。
~回想終了~

 結果は……まあ、俺がこの地で特に怪我もなく暮らしている事から察してくれ。
 ……うん、圧勝だった。
 飛竜の中でも特に賢い、って言われる竜なだけはあったし、それだけじゃなく、年経た竜だったようだ。
 でも、電撃すらまともに効かないんだな、俺の体……。
 戦い方は巧妙だった。
 もし、俺が普通のリオレウスだったら、圧勝してたのは奴だっただろう。
 だけど、攻撃の全てがまともに効かない、じゃあさすがの奴もどうにもならなかった。
 結局、勝利した俺は奴から「この地の新たな王はお前だ」と勝手に告げられて……でも、奴から教えられた寝床とかの場所も理想のものだったし、住みやすかった。
 結局、そのまんま俺はこの場所で暮らして、寝床も色々工夫して今じゃ竜なりに大分暮らしやすくなった。
 こんな日々が何時までも続くと思ってたんだな、何時の間にか。
 そんな時、だったんだ。人に出会ったのは……。 


【あとがき】
感想板を見ると、なんですね……
色んな人がいると本当に思います
 



[28159]
Name: じゅっ◆8bd2907f ID:e2dfdefe
Date: 2011/06/05 21:49
【SIDE:転生者】
 朝、洞窟で目を覚ます。
 長い時間をかけて形成したねぐらだが、人間のそれのようなベッドは、ない。
 最初の頃は草や木を敷き詰めたベッドを作ってみたのだが……何しろ鱗が頑丈だ。防御能力が高い、という事はその分鱗が分厚かったりする訳で、柔らかいベッドなんてものを感じるのは不可能だった。
 ぶっちゃけると、硬い岩の地面に寝ても大差なかった。
 それなら、安全に過ごせる場所で、土よりも岩肌。そんな場所があれば十分だ。
 ぐぐっと体を伸ばし、翼を広げる。
 骨なんかは転がってない。
 最初の頃は持ち帰ってたんだが……腐るんだよ、どうしても。
 肉も内臓も食ってしまうんだが、これが骨ごとバリバリ食えるような小型種ならともかく、アプトノスとかだと骨を残してしまう。
 そうして、それに肉がこびりついて残ってたりすると……。
 洞窟の奥で、外より暖かいのもこの辺は災いしている。
 だから、最近は食事はもう少し下の方に専門の場所を作っている。
 
 のそのそと進み、外を見る。
 おお、いい天気だ……。
 それじゃ出かけるとしますかね。
 翼を広げ、飛び立った。
 こうして飛び立ってみると、あのベルキュロスは矢張りベルキュロスらしく峡谷みたいな地形を好んでいたのが分かる。山岳地帯は確かにその下に峡谷を思わせる光景が広がっていたからだ。
 あの草原はあくまで狩場だったのだろう。
 確かにこの辺は獲物が限られるし、森は空から襲撃かけるには余り向いていないからな……。
 少し飛べば海へも行ける。 
 もっとも、俺自身は海に行く事は余りない。
 海洋生物なんて襲撃かけるのは難しいし、間違ってこの体で海に落ちたら後が物凄く面倒だ。貝とかなんて小さすぎて食った気がしないし……。
 では何故行く事があるのか?それは草食動物が塩分の摂取に群で数日に一度は向うからだ。
 まあ、海なら間違いなく塩があるからな……。
 後はあれだ。縄張りの見回りだよ。
 ラギアクルス、ダイミョウザザミなんてのが来る事がある。
 精々、何年かに一度、ぐらいだけどね。
 
 さて、今日も狩りすっかあ……って?
 草原の入り口付近に見慣れぬものを見つけた。
 ……おいおい、あれはどう見ても……ハンターだよなあ?
 何やら武器やら何やら揃えてるし、開拓とかそういう村作り、って感じじゃない。
 何狩りに来てるんだろ……ってまさか俺か!?
 うーん、今は高空を飛んでるし、雲も薄雲じゃあるが、それなりに今日はあるし……まだ見つかってはなさそうだけど……どうすっかなあ。
 正直迷う。
 俺だっても元は人間だ。好き好んで人間を襲撃、なんて考えない。
 いや、人間を食うって事に嫌悪感もあるし、人ってものの厄介さも分かる。
 数増やしたり、罠仕掛けたり、本気で狩る気なら何度でもやってきそう……ここがモンスターハンターの世界だっていうなら、凄腕のハンターなんて居たらこっちが狩られかねないし……。
 祖龍なんてのはまだ出会った事がないが、ゲームではそういうのや、巌竜ラヴィエンテみたいな超巨大なのも狩るのがハンターだ。
 いかに俺が魔改造リオレウスだとしても、狩られないって保証はない。
 ……でも、なあ。
 ここに人が住もうってなら、俺を狩る動きは止まらないだろう。
 そうなると、縄張りに入り込んだモンスター同様の対応するしかないんだろうか……。



【SIDE:人間ズ】
 現実には人間達の側にはそこまで何度も来れるような余裕はなかった。
 これが少数で狩りに来るような、ゲームみたいな世界ならそれこそ何度でも来るだろう。
 でも、今来ているのはハンターの集団だ。
 これだけの人数の食料や各個人の装備以外の重武装なんかは全部国が用意したものだ。
 今回、これ程早く国が動いたのには訳があった。
 ぶっちゃけてしまえば、この地域は二つの国が領有を狙っていたのだ。
 これまでも山師が山岳地帯に入った事はあった。
 その結果として、この地域は水資源が豊か、森の恵みも期待出来るし、農耕も問題なし。海も領域に入り、湾があるから漁も将来的には可能。山岳地帯からは鉱石の採掘が有望。
 更にここに街道を通せば、複数の国との交易路も期待出来るという、国からは実に美味しい場所だった。
 そんな地域が何故これまで手付かずだったかと言えば、単純に長い時間をかけて、ここまで人間の領域が迫ってきた、というだけの事だ。
 
 「いよいよ、か」

 武器の手入れをしつつ、ハンターの一人が呟いた。
 彼が持つのは巨大な大剣。
 この大剣はダブルブロスソード。かつて彼の祖父が飛竜退治、ディアブロスと伝えられてる、を行った際に手に入れた素材で作られたものだという逸品だ。
 反面、彼自身の防具はゲネポスのそれを加工したものだ。こればかりは彼が飛竜と戦った事がないのだから仕方がない。
 無論、鉱石を主体に作れるような武具は上質の物が揃えられている。
 そういう面では武具よりも防具に不安がある、と言わざるをえないだろう。防具は動きやすさも重視される為に鉱石よりもモンスター素材が主体となるからだ。

 「ああ、腕がなるぜ」

 そう言いつつ別のハンターが応えた。
 もっとも、誰も彼もが緊張を多かれ少なかれしている。
 前衛と後衛のそれぞれのリーダーが打ち合わせをしているし、緊張が重なれば後衛が最悪、射線が重なった前衛を撃ちかねない。
 
 人と飛竜。
 彼らの間に、人の都合によって戦端が開かれようとしていた。





[28159]
Name: じゅっ◆8bd2907f ID:e2dfdefe
Date: 2011/06/04 21:06
【SIDE:転生者】
 結局俺は……ハンター達への攻撃を決めた。
 無論、悩んだ。
 だが、それ以外の選択肢を選ぶとして何が出来る、というのもあった。
 話し合い?
 無理。
 俺は何故か彼らの言葉が分かるが、あいつらは俺の言葉が理解出来ない。
 言葉は分かるが、文字が書けないのでメッセージを伝える事も出来ない。
 ベルキュロスの言葉が理解出来た事といい、ひょっとして一定以上の知能を持つ相手との意思疎通が可能なんじゃ、と淡い期待を持った事もあったが、あくまで意思疎通が可能なのは同じモンスター同士だった。
 おまけに言葉が俺の感覚で言えば日本語で意味が分かる、っていうのは実はこの世界の言語を覚えるのは絶望的だ、という事を意味していた。
 何しろ、この世界の文字を見ても、俺には日本語に見える。
 が、俺が日本語を地面に書いても、通りがかった連中は首を傾げていた。
 ……どうやら、単なる紋様か何かにしか見えないらしい。
 これじゃ、この世界の言語を覚えようとするのは不可能だ。もし、人の辞書を得たとしたって、和英辞典の役割を期待してるのに、俺には国語辞典にしか見えない、という状況で日本語を英語に訳せ、と言われてるようなもんだ。
 では、逃げるか?
 これも却下。
 そもそも俺の方がここに長い事住んでいた訳だし、何より逃げてどうなる、ってのもある。
 今後も人の領域は広がるだろう。
 その度に俺は逃げ出して、新しい住処を探すのか?
 きっとその時手に入る住処は前のそれよりランクが下るはずだ……。
 大体なんで、人の庭に我が物顔で入り込んで自分の物にしようとしている、みたいな立場の連中に遠慮しないといけないんだ。
 残ったのはただ一つ。
 完膚なきまでに叩き潰す。
 それこそ、当分新しく人が来ないように、だ。
 ……まあ、なんだ。ハンターじゃなく、共存しよう、ってなら考えてやらんでもないんだけどな。



【SIDE:人間ズ】
 予想外の事だった。
 夜明け近く。
 準備を整えて、いよいよ今日から狩りの開始だ、と思っていた日の事。
 突如、キャンプは飛竜の襲撃を受けた。
 奴は巧妙だった。
 後で生き残った者の意見と決死の探査から判明した事だが、キャンプを見下ろす小さな丘の向こう、羽ばたきの音が聞こえないよう少し離れた所に着地、静かに接近し、頭だけを丘向こうから出してブレスを叩きつけてきたのだ。
 この奇襲で、まず対空用に用意された大型武器がやられた。
 更に飛び上がった奴はそのまま上空から小刻みにブレスを叩きつけてきた。
 厄介だったのは奴は決して下へと降りようとしなかった事だった。
 まるで、下へ降りたら俺達ハンターの武器が待ってるのを悟っているかのように……いや、きっと知っていたのだろう。
 如何に強力な武器でも届かなければ意味はない。
 ガンナー達も懸命に頑張ったのだが……奴は一撃離脱を繰り返した。
 高速で飛翔しながら、俺達の上空を通り抜け、その時にブレスを叩きつけてゆく。
 しかも、わざと野営地の手前で急減速して、襲撃のリズムを変えた。
 
 ……気付けば、周囲は炎に包まれ、燃えてない天幕を探す方が難しくなっていた。
 呻き声を上げるハンターが辺りに幾人も転がっていたが、そんなのはまだマシで直撃を浴びたのか黒焦げになった死体も幾らでも転がっていた。
 
 「もう駄目だ!」

 そんな叫びを上げたのは誰だったか。
 一人二人と逃げ出す者が出た。
 怒鳴り声を上げて制止する奴も現れたが、飛竜はそういう制止する為に声を上げた奴を真っ先に狙った。
 単純に声を上げて目立ったからなのか、それとも理解して……いや、きっと理解してたんだろうな。
 奴は剣士とガンナーがいれば、ガンナーを先に狙った。
 もちろん、偶然奴の鱗に命中した弾もあったが、その殆どは……ひょっとしたら全弾だったのかもしれないが、当たる端から弾かれていた。
 そんな命中させた奴は執拗に狙われ……一人、また一人と殺られていった。
 反撃する奴が消えると今度は逃げ出した奴だ。
 背を向けて必死に逃げる連中を背後からゆっくりと追い立てるように奴はブレスを叩きつけていった。
 
 ……俺が何で助かったのかって?
 逃げ損ねたからだよ。
 キャンプの残骸に隠れて、震えていたんだ。
 奴が満足して飛び去るまで、な。
 炎が迫ってきて、怯えつつも残骸から逃げ出して……他にも同じように隠れてた奴らと共に懸命に逃げ出してきたんだ。
 ……怪我をしてた奴ら?
 ああ、いたな……そんなのも。
 そんな気持ちの余裕なんてなかった。ただ奴から逃げる事しか誰もが頭になかったよ。今にして思えば、助けを求める声もあったように思うんだが……そんなのはこうして生きて帰って思い出せるから言える事だよ。
 ……また募集があったら行くかって?
 よしてくれ!俺はもう奴と戦いたくなんかねえよ!あんな頭のいい飛竜なんて命が幾つあっても足りやしねえ!! 
 

【あとがき】
とりあえず5
次回は飛竜側から見た襲撃時の心境やその後の人間側など



[28159]
Name: じゅっ◆8bd2907f ID:e2dfdefe
Date: 2011/06/05 21:48
 襲撃は大成功だった。
 夜明け前にビームブレスを丘の影からぶちかまして、まず当たったら痛そうな大型武器を潰した。
 夜明けギリギリを狙ったのは、まだ起きてる奴がごく一部。
 けれど、ほんのり明るくなって、俺からも真っ暗闇よりキャンプの細部が見やすかったからだ。
 きっと、あそこはゲームで言う、クエスト出発前のベースキャンプだったんだろう。安全だと思ってたから誰もが油断してた。
 野生動物の飛竜の場合なら襲わなかっただろう。
 自分に攻撃仕掛けてこない限り、棘竜エスピナスなんかが代表例だが、ハンターなんか無視してる。
 だが、俺は違う。
 そこまで人間を甘く見てはいない。
 空の王らしくないと言いたくば言え。
 野生に生きる者にとって最重要なのは生き残る事に決まってる。 

 心を非情にして、俺は徹底的にハンターを叩きのめした。
 ……ゲームのハンターを知る身としては複雑な気持ちだったが……。
 とにかく、お陰で俺は大勝利を収めた。
 ハンター達のキャンプは壊滅し、僅かな生き残りはほうほうの態で逃げていった。
 実の所、キャンプに僅かな生き残りが隠れてる事とか、逃げる奴の中にも装備なんかを全部捨てて、岩陰にいる事も全部じゃないだろうが気付いてた。
 けど、見逃した。
 別に今更、人殺しに怖気づいた訳じゃない。
 そうじゃなく、この恐怖を伝えて欲しかったからだ。
 ……出来ればもう討伐になんて来る気が湧かないように。

 無事作戦が成功したといっても、俺自身は警戒を強めざるをえなかった。
 人の欲は凄い。
 この豊かな土地が欲しいとなったなら、何が何でも手に入れようとするだろう。
 あれからは塒も頻繁に変えている。
 ……やれやれ、と思って帰ってきたらハンターが待ち構えて罠を張ってた、なんて事になったらたまったもんじゃない。はあ、穏やかな日々が懐かしい……。俺は平穏に暮らしたいだけなのに。
 だが、俺はこの時知らなかった。
 知るはずもない。
 ハンター協会がある決断をしていた事を……。



【SIDE:人間ズ】
 ハンター協会は重苦しい空気に包まれていた。

 『飛竜リオレウスの討伐失敗』

 それが協会に暗い陰を落としていた。
 国が大々的に梃入れをして行われようとした討伐で見事に壊滅した。
 これは国におけるハンターの発言力を低下させるには十分すぎるものだった。

 「……国はどうしとる」

 「新たに討伐隊を組む気らしい、今度は軍隊でな」

 今更引けまい。
 既に隣国もまた、ハンターと軍隊双方を用いた討伐を検討していると聞く。正確にはハンター協会同士は繋がっているのでそちらから情報が入ってきたのだが。
 冷静な者は皆理解している。
 今回のリオレウスが極めて知能が高い危険な存在である事を。
 ハンター達が敗れたのはこれまでの飛竜と同じに考えてしまった事であり、彼らの責任だけではない事ぐらいは少なくとも軍上層部は理解している。
 だが、一般市民は違う。
 これまでは頼れる相手と見ていた相手が完膚なきまでに敗北した事で懐疑的な視線を向けられている。
 加えて面倒なのは、理解した上でハンター協会の発言力を削るべく蠢動している勢力だ。
 
 「皆に率直に聞こう。軍隊が派遣されたとしよう。勝てると思うか?」

 長のその言葉にある者は嘲笑を浮かべ、ある者は首を振り、ある者は少し考えてから首を横に振った。
 全員が勝てるとは思わなかった。
 理由は単純。軍隊は実戦経験が殆どない。
 日常の護衛や討伐はハンターが引き受けてきた結果だし、何より軍隊は同じ人間相手の訓練を積んでいる。巨大な飛竜との戦闘方法などありはすまい。
 
 「しかし、そうすると拙いな……」

 間違いなく軍隊の派遣は今回のハンターよりも大規模なものになるだろう。
 それが壊滅したとなれば、どうなるか……。
 軍事力の大幅な減少、それによる他国からの干渉や脅威の高まり。最悪、戦争が起こりかねない。
 ハンター達が安心して依頼を引き受けられるのも、現在の平和があってこそ、戦争が起きれば、ハンター達とて参戦を求められる事になるだろう。
 それに軍隊も討伐に失敗したとなれば、リオレウスに対する恐怖が爆発しかねない。
 
 「……G級を呼ぶしかあるまい」

 ならば。
 もう、こうなれば方法は一つしかない。
 ハンターの中でも一際凄腕。切り札たるG級ハンターを招集して、他が動く前に、ハンター自身の手でリオレウスを討伐するのだ。 


【あとがき】
独自設定
G級ハンター、ゲームでは一段強い奴らと戦う実力者ハンターですが、この物語では、ここからが実質的なゲームのハンター、大型モンスターと少数で渡り合えるような人外連中だとお考え下さい
こっからはチートを駆使して、モンハンのハンター達と戦う……前にもう一幕ありますが


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