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大津の市民オケ「ダイカン」が還暦 5日に定期演奏会

2011年6月4日

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本番に向け練習に励む上林喜久郎さん(左)と小松英郎さん=大津市浜大津1丁目の旧大津公会堂

 「ダイカン」の愛称で親しまれている滋賀県大津市の市民オーケストラ・大津管弦楽団が今年、「還暦」を迎える。戦争の記憶がまだ色あせない時期に産声を上げ、大きく成長。創成期のメンバーが今も残り、演奏には円熟味が増してきた。5日には119回目の定期演奏会を開く。

 楽団ができたのは1951年12月。当時、滋賀大学の教員だった村田昇さんが、学生だった小松英郎さん(81)=大津市=や、小中学校の先生らに声を掛け、大津市内にあった米軍キャンプで演奏していたバンドのメンバーも加わって団員20人余りでスタートを切った。

 生まれたばかりの楽団は楽器もそろわず、演奏技術もいま一つ。そこで団長に招いたのが、戦前に海軍の軍楽隊で指揮をしていた片岡息長さんだった。今もバイオリン奏者として楽団を支える小松さんは「それは怖かった。間違えるとにらまれたし、何度も弾き直しをさせられた」と苦笑する。

 初の定期演奏会は翌年3月に大津高校の講堂で開かれた。まだテレビが普及せず、娯楽に乏しい時代。関西にオーケストラが数えるほどしかなかったこともあり、珍しいもの見たさも手伝って、近くの住民ら約200人が詰めかけ、活動に弾みがついた。

 その後、練習場が火災に見舞われ、保管していた楽器や演奏会のたびに書き写していた楽譜を失うなどの苦難もあった。だが、メンバーを着実に増やして技術を磨くうちに知名度も上がり、県内の自治体や学校に招かれるようになった。86年の中国をはじめ、アメリカ、ドイツと海外公演も果たした。

 バイオリン奏者の上林喜久郎さん(75)=草津市=は高校1年の時、母が小学校の恩師に頭を下げて借りた7千円で買った楽器を携えて入団した。定期演奏会には52年8月の第2回以降、休まず出演を続けている。団員とは家族同然の付き合いで、約40年前には、長男の手術の際に次男を3カ月預かってもらったほどだ。「団員に励まされ、生かされた」と話す。

 楽団のメンバーは現在、17歳の高校生から81歳の小松さんまで約80人。毎週金曜夜、家事や仕事を終えて練習場に集まり、年2回の定期演奏会に向け、練習を続けている。小松さんは「紆余曲折(うよきょくせつ)もあったが、色んな楽器が集まって一つの音楽を作るオーケストラのように、団員の心を一つにすることで、ここまで続けられた」と振り返る。

 119回目の定期演奏会は5日午後1時半、大津市島の関の大津市民会館で開催。シューベルトの交響曲第8番「ザ・グレイト」など3曲を演奏する。一般1300円、高校生以下1千円。(千種辰弥)

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