2011年6月5日20時57分
広島、長崎に投下された原爆の影響を検討する「原子爆弾後障害(こうしょうがい)研究会」が5日、広島市内のホテルであった。研究者ら約200人が参加。収束のめどが立たない福島第一原発事故に関し、広島、長崎で蓄積された研究成果を生かすべきだとの声が相次いだ。
神谷研二・広島大原爆放射線医科学研究所長は「『放射能がうつる』といった根拠のない風評被害が広がっている」と懸念。「広島と長崎が立ち上がっていく必要がある」と説いた。
福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就いた山下俊一・長崎大大学院教授は「住民の不安は我々が面談してもなかなか払拭(ふっしょく)されない」と述べ、全国の専門家が結集して啓発に努める必要性を説いた。
何度も現地入りし、救急医療体制の確立に尽力した谷川攻一・広島大大学院教授は、震災で現地の被曝(ひばく)医療機関が使えなくなるなど、現行の防災体制の不備があらわになったと指摘。自治体が中心となって見直すべきだと訴えた。
チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシの住民の精神衛生状態を調べた長崎大大学院の増永智子研究協力員は、福島原発事故でも長期化による心理的影響が懸念されるとし、「心のケアに継続的に取り組むことが重要だ」と語った。