「伊織から力をもらった」。飲酒運転の車にはねられて先月初めに亡くなった崇徳高校2年、三浦伊織さん(16)=安佐南区=が参加予定だった同高自転車競技部の合宿が4日、約1カ月ぶりに広島市内で再開された。チームメートは夢半ばで逝った三浦さん遺影に見守られながら、コースを疾走した。
事故翌日の先月3日、北広島町で合宿初日を迎えたチームメートは、顧問の宇根司教諭(58)から三浦さんの死を知らされた。泣き崩れる生徒もいて、合宿は中止になった。「大学でも自転車を続けたい」と厳しいトレーニングにも耐えていた三浦さんの志を引き継ごうと、宇根教諭は遺影を携えての合宿再開を決めた。
この日は、チームメート6人とOB1人、山陽高自転車競技部3人の計10人が、崇徳高校(西区)から安芸太田町に至る約170キロを走った。併走した宇根教諭の車のフロントガラスに三浦さんの遺影が、助手席にはヘルメットが置かれた。
主将の谷口武史さん(18)は「三浦と一緒に走っているようだった」。海老本拓也さん(16)は「空から見守ってくれていると思う」と額に汗を浮かべた。宇根教諭は「伊織も『ここはきついなぁ。でも仲間となら一緒に走れる』と思いながら伴走してくれていたと思う。みんな伊織に力をもらっていた」と、生徒たちを見つめた。【北浦静香】
毎日新聞 2011年6月5日 地方版