脱線火災事故で丸焼けとなった特急スーパーおおぞらの鎮火後、約2時間ほど経た車両内部の様子(富良野広域連合消防本部提供)【フォト】
福島第1原発事故で、後から後から出てくる東京電力の情報もひどいが、事故からすぐに出てきた情報も、かなりア然とする内容だった。
JR北海道が30日に公開した無線交信記録によると、3号車に乗っていた車掌(60)が列車の異常に気付き、運転士(26)に緊急連絡。トンネル内に緊急停車をしたと指令に報告したのは、午後9時56分だった。
その後、車掌が「(後方の)1〜3号車の床下から煙が入ってきている」と報告。火災発生を懸念した指令は〔1〕運転士にただちに運転を再開し列車をトンネル外に出す〔2〕車掌に乗客を前方の車両に誘導する−との指示をした。車掌は「運転士が力行(発車)できないと言っている。3号車は煙がひどい」と報告した。
指令の「大至急車内放送をかけて前方の車両に誘導し、後方の車両に乗客がいないか確認」との指示に対して、車掌は「前から降りてトンネルを(歩いて)避難したほうがいい」と返答した。
午後10時10分ごろ、運転士から「モニターが消え、状況が把握できない」との報告があり、指令は全エンジン停止を指示。車掌から「かなりすごい煙で息ができない」との報告があった後、同14分ごろから一時応答が途絶えた。
午後10時半ごろに交信が復活。指令は乗客の誘導が終わったかどうか確認を求めたが「前も後ろも煙が充満している。火災は発生していない」との応答だった。
しかし、この時点で危険を察知した乗客約240人は、避難誘導がないまま各車両の非常コックを使ってドアを開け、トンネル外に飛びだしていた。乗客が乗員の避難指示を待っていたら、大変なことになっていた恐れがある。
JR北海道は乗客への説明や避難誘導について、「周知の仕方に非常に問題があったと思うので、今後検証する」とした。国土交通省北海道運輸局は、JR北海道に対する特別保安監査を29日から実施している。
(紙面から)