未だ多くの人種問題を抱えるアメリカ。有名なところでは、キング牧師が闘った黒人差別問題がありますが、近年の様々な人、機関の取り組みにより徐々に黒人に対する差別は減ってきています。しかしその一方で、新しい差別がアメリカで生まれ始めているというのです。それは白人への差別。
これを発表したのは、ハーバード大学とタフツ大学の社会学者たち。彼らは白人の男女209人、黒人の男女208人に、「アメリカの1950年代から2000年代を見ていった時に、各年代で白人・黒人がどれほど差別されていたと思うか」を0から10の数字で答えてもらいました。
すると、白人・黒人共に黒人に対する差別は減ってきたと感じていたのですが、それと同時に白人に対する差別は増えてきたと白人・黒人共に感じていることが分かったのです。(上のグラフの黒の実線は、黒人が思う黒人が受けた差別の度合いを意味し、灰色の実線は白人が思う黒人が受けた差別の度合いを意味する)
詳しく数字で見てみると、黒人が思う白人が受けた差別の度合い(黒の破線)は1950年代の1.4から2000年代の1.8へと上昇しており、白人が思う白人が受けた差別の度合い(灰色の破線)は1950年代の1.8から2000年代の4.7へと急激に上昇しています。
また今回調査に参加した白人のうち、2000年代に黒人が受けた差別の度数を10と答えたのは2パーセントだったのに対し、2000年代に白人が受けた差別の度数を10と答えたのは11パーセントもいました。これらの数字を見ると、白人たちが何か大きな差別を感じ始めているのは確かなようです。
今回の調査に参加したマイケル・ノートン氏とサムエル・ソマーズ氏は、2008年のオバマ大統領誕生は人種差別のない「ポスト・レイシャル(post racial)アメリカ」を意味している言われていたが、どうやらそれは間違いだったようだと語っています。
そして白人がこれほど差別を感じている理由について、現在多くの人が議論しており、中には「今まで差別されてきたグループが様々な権利を獲得していくにつれて、相対的に白人が自分たちの力が奪われていると感じているから」といった声もあります。
白人の間で芽生え始めた新しい差別感。この理由として、「今まで追いやられてきた人々を救済し、それが白人に不平等感を与えてきたから」という意見が正しいのなら、差別されているあるグループを優遇すると、他のグループにまた新たな差別感をもたらしてしまうことになります。そう考えると誰も差別を感じない世界とは、想像以上に難しいものなのでしょう。
(文=パン太)
参照元:dailymail.co.uk(http://bit.ly/imiEnT),nytimes.com(http://nyti.ms/ix2wzm)
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