東日本大震災の発生翌日、福島第一原発で爆発が起きる前に福島県が行ったモニタリング調査で、金属性で飛散しにくい放射性のテルルが原発から約七キロ離れた同県浪江町などで検出されていたことが分かった。拡散しやすい揮発性の放射性ヨウ素より多く検出されており、早い段階で金属性の放射性物質が広く飛散していた。テルルはレアメタル(希少金属)の一種で、放射性同位体のテルル132の半減期は三日余り。主にベータ線を出す。
データは保安院が三日夜に公表。三月十二日朝から十三日夜までの大気を調べたもので、大半がこれまで未公表だった。テルル132は十二日朝から昼すぎにかけ、浪江町の二カ所と大熊町、南相馬市で検出。濃度は一立方メートルあたり法定限度の二〇ベクレルを超える一一九〜二三ベクレルだった。
当時の原子炉建屋は換気装置が止まり外に空気が出ない状態。蒸気を放出するベント作業は十二日午後に行われ、その直後に水素爆発が起きた。
東京電力は、核燃料の損傷が最も進んでいたとされる1号機が漏出元とみており、「格納容器内の圧力が高まり、接ぎ目から水素とともにテルルが漏れ出したのでは。建屋内の圧力も高まって外に漏れ、風に乗って広がったことが考えられる」と説明している。
ただ、拡散しやすい揮発性のヨウ素131の検出量はテルルの半分程度。テルルと同じ金属性のセシウム137は浪江町の一カ所でテルルを上回った以外、微量しか検出されなかった。
京都大原子炉実験所の山本俊弘准教授(原子炉物理)は「現在分かっている状況では、テルルが遠方に飛散することは考えにくい」と述べた。
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