2011年06月04日

◆ 政権交代後にどうするべきか?

 反・菅直人の勢力は増している。1年以内に菅直人が辞める可能性は十分ある。その後は浜岡原発の稼働が視野に入る。とすれば、その前に関東を脱出する方がいいだろう。

 ──

 今回の政争の本質は、「菅直人は無能か」ということではない。「復興ができるか否か」ということでもない。「反原発か否か」ということだ。
 その意味では、次の首相になった場合、次のように言える。
  ・ 復興はできないままだ。(誰でもすぐには不可能。)
  ・ もし原発反対ならば、政争は続く。(自民・公明の妨害は続く。)
  ・ もし原発推進ならば、政界は安定する。(自民・公明が協力する。)


 つまり、原発推進ならば政界は安定するが、原発反対ならば状況は不安定なまま先送りされ、最終的にはいつか原発推進に転じる。
 そして、そのあとは? 静岡に地震が起こるか否かによる。こうだ。
  ・ 原発推進の状態で地震が来れば、破滅という状況で安定する。
  ・ 原発推進の状態で地震が来なければ、当面は破滅を免れる。


 つまり、いずれにせよ原発は推進となるから、そのときに地震が来るかどうかで、人々の命運は決まる。人々の命運は、地震次第だ。命を賭したギャンブルだ。
 とすれば、賢明な人は、そのようなギャンブルを避けるべきだろう。いずれは原発推進派が勝利して、浜岡原発は稼働するようになるのだから(さもなくば政界は安定しないのだから)、浜岡原発が稼働する前に首都圏を脱出するといいだろう。

 関東は、現時点では、放射線の危険はない。しかしながら、将来的には、放射線の危険は莫大になる。反原発の菅直人がいなくなるからだ。
 日本の反原発という方針は、菅直人が政権を取っている間だけのことだ。彼が反原発という方針を取っても、人々はそれを「菅直人の保身のため」としか思わず、「人々のため」とは思わない。人々は結局、人々のために働いてくれる政治家を好まないのだ。
 だから、菅直人はいずれは退場する。そして菅直人とは正反対のタイプの政治家が登場する。つまり、「国民のために働きます」と口にしながら、実際は自分自身のために働く政治家が。……たとえば、小沢とか、自民党議員とか。いずれも、自分の懐を豊かにすることを目的として働きながら、「国民のために働きます」と口にする。そして人々は、それを聞いて、拍手喝采して、大歓迎する。……そのあとで、放射性物質が降りかかる。二度目に。(歴史は繰り返す。)

 国民の大多数は愚かである。電力業界や産業界という巨大な敵と立ち向かう政治家を嫌い、電力業界や産業界という巨大な賄賂収入源を後ろ盾とした利権政治家を好む。なぜなら、国民自身が、政府からの補助金を当てにしているからだ。被災地の人々もそうだし、他の人々もそうだ。たいていの人々は、「自ら働こう」と思うよりは、「政府の金をもらおう」と思う。その代表が、「太陽光発電のために莫大な補助金を寄越せ」と唱える孫正義だ。農業関係者も、みんな同様だ。企業だって、みんなそうだ。誰もかもが政府からの補助金を当てにする。たかりを目的とする乞食国民。
 こういうふうに金ばかりをおねだりする国民には、菅直人のような首相はまったく不人気となる。かわりに、小沢や自民党議員のような利権政治家が大好きだ。利権政治家が「補助金を上げますよ」と唱えると、人々は「キャー、キャー」と喜ぶ。「朝には果物を三つでなく四つあげますよ」という声を聞くと、人々は「わーい、四つももらえる」と大喜びする。「今は果物が足りないので、三つで我慢してください」と菅直人が唱えると、「果物をすぐに寄越さないのはけしからん! 配布が遅れている! キー、キー」とブーイングする。……というわけで、愚かな国民には、朝に四つが配布される。そして夕方には、放射性物質がたっぷりと配布される。
 
 日本人には、結局、利権政治家がふさわしいのだろう。細川政権と同様だ。あれは潔癖なきれいな政権だったが、小沢の策謀で政権は瓦解した。そのあとは、過渡的政権を経た後で、ふたたび自民党の長期安定政権に戻った。
 小沢と自民党は、同じことを再現させようとしている。このあとはふたたび自民党の長期安定政権となるだろう。なぜなら、人々がそれを招いているからだ。
 日本人には、結局、利権政治家がふさわしいのだろう。なぜなら人々が、それを招くからだ。小沢の策謀で(首相も知らないうちに)「消費税増税」という政策が実現しそうになったら、国民はそろって首相を非難した。「消費税増税を決めた小沢が悪い」と批判せずに、「消費税増税を決めた細川首相が悪い」と大合唱した。ペテン師の策謀によって、いわれなき理由を信じ込み、「細川首相は悪党だ」と大合唱した。……今回も同様だ。自民党の策謀で復興が遅れると、国民はそろって首相を非難する。
 真面目な政治家には、悪のペテン師の策謀によって、「悪」のレッテルが貼られる。すると人々は、「悪を許すな」と大合唱するわけだ。
 そこへペテン師が登場する。そして、「朝には四つ差し上げます」という利権政治を提唱する。すると人々は「朝には四つをもらえる」と大喜びして歓迎する。そして夕方には、放射性物質をもらう。

 だから、こういう愚民のいる国からは、脱出するのが賢明だ。とはいえ、国を捨てることは、容易ではない。とすれば、少なくとも、関東を脱出するのが賢明だろう。
 関東が危険なのは、1mSv の放射線が現在あるからではない。将来には 100 mSv とか 200 mSv とか何とか、恐ろしい放射性物質が予想されるからだ。しかも、これは杞憂ではない。人々が自ら招いていることだからだ。「(浜岡原発を止めた)菅直人を追い出せ」と。

 次の首相は、浜岡原発を止めるか? 止めるかもしれない。止めないかもしれない。しかし、止めれば、ふたたび小沢と自民党の攻撃を受ける。そして国民は立ち往生した政権にふたたび「無能だ」という批判を浴びせる。
 だから、次の首相が浜岡を止めても、それは時間稼ぎにしかならない。そしてやがては、選挙になって、民主党は壊滅し、自民党の安定政権が実現する。その後は自民党政権がまた 20年ぐらいは続くだろう。そして、その 20年の間に静岡で地震が起こる可能性は、十分にある。
 とすれば、福島東部に住むのが愚かであるように、首都圏に住むのは愚かである。愚民たちといっしょに沈没船に乗るのは自殺行為だ。愚民たちはあえて船に穴をあけようとする。船の穴をふさごうとする船長を「無能だ」「悪党だ」と非難する。というか、船長を「無能だ」「悪党だ」と批判するデマゴークの言葉を真に受けて、船長を「無能だ」「悪党だ」と思い込む。「船長が穴をふさごうとしているのは、自らの保身にすぎない。こんな悪い船長を追い出してしまえ!」と。「むしろ、朝には四つをくれる、善良な副船長を信じよう!」と。
 そこへ嵐が襲いかかる。穴をふさぐ船長を失った船は沈没する。……とすれば、こんなふうに自殺したがる船員を乗せた船からは、脱出するのが賢明だ。

 馬鹿は死んでも治らない。馬鹿が自殺するのは勝手だが、その自殺の巻き添えになる必要はない。愚民の支配する首都圏からは、逃げ出すのが賢明というものだ。福島東部から逃げ出すように。

( ※ ただし、今すぐに、というわけではない。2年ぐらいの長期計画で、首都圏脱出を考えると良さそうだ。……なお、浜岡の稼働は、ある日突然決まる。そのときになって急に脱出しようと思っても、すぐにはできないだろう。)
( ※ なお、私がこう警鐘を鳴らしても、たいていの人は信じないはずだ。ちょうど原発の危険性についても、私の警鐘を信じなかったように。……人々が私の言葉を信じるとしたら、現実に被害が起こった後のこととなる。福島でも、浜岡でも。)
 


 [ 付記1 ]
 朝日新聞は「菅直人はすぐに辞任せよ」というふうに方向を転じた。
 首相としては党分裂を避けて民主党政権を維持していくために辞任を覚悟した以上、野党と大筋合意している復興基本法案が成立したら身を引くべきだ。
( → 記事の紹介・転載

 結果的に、与野党議員を欺いた発言に、「菅さん、それはないでしょう」というしかない。
 首相は、いつ辞めるのか。それは年内の遠くない時期というのが常識的だろう。
 政争ばかりの国会議員だけでなく、全党員で落ち着いてリーダーを選べばいい。
( → 社説
 「やめると言ったのだから、嘘をつかずにやめろ」という論調だ。「政策が間違っているから」ではなくて、「嘘をつくのはけしからん」という論調だ。
 善良な朝日のことだから、「嘘をつく政治家は信じられない」ということなのだろう。
 しかし、小さな嘘を許さなければ、大きな嘘が襲いかかる。「政治が進まないのは、菅直人が無能だからだ」という、大きな嘘が。
 菅直人から別の民主党の首相になれば、どうなるか? 自民・公明は、協力するか? 「協力するはずだ」と朝日は信じる。あまりにも発想が子供だ。
 当然だが、次の首相が民主党の首相なら、自民・公明はふたたび妨害する。そしてまた「今度の新首相も無能だ」と攻撃し続ける。自らの議席を増やすために。
 そんなこともわからないほど、朝日というのは愚かなのである。
 ともあれ、あれほど利権政治に反対していた朝日までが、ついに利権政治の軍門に降った。情けない。これほどにも洗脳されやすい体質だとは、思わなかった。(案外、知能が低いようだ。東大卒の記者が多いので、少しは利口かと思ったが。)
 線量たる朝日までがこれほど愚劣だとしたら、やはり日本人は愚民ぞろいなのだろう。結局は、勝利するのは、利権政治なのだ。
 細川政治がつぶれたのは、歴史の偶然かとも思ったが、菅直人までが利権政治につぶされるようだ。日本には近代的な民主主義は根づかないようだ。いつまでたっても利権政治が続くようだ。
 愚民には、愚劣政治がふさわしいのかもしれない。日本が放射線を莫大に浴びたのは、悪の東電のせいというよりは、それを招く利益政治を歓迎した日本の体質なのだろう。
 となれば、浜岡が暴走して放射線をばらまくのも、理の必然だ。歴史は繰り返すことになる。
 

 [ 付記2 ]
 反・菅直人勢力の自己矛盾を指摘しておこう。
 自民党の主張は、「民主党の政策は駄目だ」ということだ。その具体的な点は、「高速道路無料化・子ども手当」というバラマキ政策だ。
 ところが、このバラマキ政策は、菅直人の政策ではなくて、小沢の政策である。菅直人がこの二つをやめようとすると、徹底的に妨害して、野党との妥協を阻害する。
 なのに、自民党は、(高速道路無料化・子ども手当を主張する)小沢派と手を結んで、自民・小沢の連合政権を構築しようとする。つまり、「白いものがほしいから、黒いものと協力する」というわけだ。
 完全な自己矛盾だろう。論理的には成立しない。
 これが現実に成立するのは、論理ではなくて、権力欲があるからだ。自民も小沢も、「おれが権力を握りたい」という欲望があり、その一点でのみ結びつく。醜悪な権力争い。
 そして、そういう背景を理解できない愚民たちが、「復興が急速に進みます」という蜃気楼を見せられて、「これがほしい」と引っかかる。

 ありもしない幻を見せられて、それを信じて、まんまと引っかかる阿呆。何かの寓話にありそうな話。



 [ 余談1 ]
 池田信夫が例によってトンチンカンな見解を述べている。今回の政争を見て、「日本の政治体制が間違っているから、憲法を是正して政治体制を改革すればいい」という趣旨。
  → 首相公選について (アゴラ)
 違う。今回の問題は、政治体制の問題ではない。正しくは、「利権政治の政治家によるネガティブキャンペーンと、それにだまされてネガティブキャンペーンを信じた愚民」という図式だ。
 その意味では、「アンチ利権の小泉キャンペーンと、それにだまされて小泉キャンペーンを信じた愚民」という図式と、同様だ。方向性は正反対だが、詐欺師のキャンペーンに引っかかった愚民という点では、同様だ。その点では、小泉の口車を評価した別の記事の方が、妥当である。
  → 小泉純一郎という奇蹟(池田信夫ブログ)

 今回の政争の教訓は、政治体制でもないし、政策でもない。そんなことは、蚊帳の外になっている。利権政治家による薄汚い策略だけが本質だ。
 そして、その策略に引っかかった人々が、「菅直人はペテン師だ」と信じ込む。こういう巨大なペテンが背後でなされていることが、物事の本質だ。そういう本質を見抜ける人は、ごく少ない。


 [ 余談2 ]
 私としても、自分の不明を恥じる必要があるかもしれない。
 自民党が民主党に対して、徹底して妨害戦略を取るだろうということは、民主党政権が実現したときから、すでに予想していた。しかし、初期は事業仕分けなどで民主党の人気が高かった。その後は、鳩山が無能で、何も実行しようとしなかったので、自民党は妨害の必要も感じなかった。菅直人政権になっても、自民党の妨害戦略は続くだろうと予測したが、たいしたことはないだろうと楽観していた。
 しかしながら現実には、自民党の妨害戦略は大成功を収めた。彼らが国政を妨害すればするほど、人々は「菅直人は無能だ」と信じ込むようになった。国民がこれほどだまされやすいというのは、私の見込み違いだった。
 思えば、小泉の「構造改革」というキャンペーンのときにも、国民はあっさりと騙された。その経済政策のもとで、日本の経済力は劇的に低下していった。
  → 一人あたりGDPの推移
 こういう前例があるのだから、日本国民がペテン師にだまされて最悪の道をたどるということは、十分に予測するべきだった。私は楽観しすぎていたようだ。日本人をもっと賢明だと思っていたが、やはり本質的には、だまされやすい国民であるようだ。
  

 [ 余談3 ]
 なお、菅直人がやめるとしたら、その理由は、「浜岡原発を止めたから」である。
 彼が浜岡原発を止めるまでは、反対派の勢力も強くはなかった。ところが、浜岡原発を止めたとたんに、自民も小沢も西岡も、読売も財界も、すべてが「菅直人はやめろ」と大合唱をしだした。政治家の理由は、「東電の利権・献金があるから」だろう。財界の理由は、「原発を止めると、燃料コストがかさんで、儲けが吹き飛んでしまうから」ということだろう。いずれも、我欲だ。
 つまり、菅直人がやめるとしたら、その理由は、「彼が無能であったから」ではなく、「彼が有能であり、浜岡原発を止めたから」である。ここに本質がある。

 当然ながら、次の首相は、「浜岡原発を稼働する」「福島第2原発や柏崎原発を稼働する」ということを、何が何でもなさなくてはならない。さもなくば、菅直人と同じく、「無能だ」と呼ばれて、退陣を余儀なくされるからだ。
 日本で可能な政治家は、原発の利権を守る政治家だけなのである。それ以外の政治家が現れれば、自民党に政治を妨害され、「無能」と呼ばれて、ただちに失脚するしかない。「そんな馬鹿な」と思いそうだが、馬鹿なのは、現実ではなく、国民だ。馬鹿な国民は、馬鹿な結果を招くのである。詐欺師にだまされるので。

 
posted by 管理人 at 13:40 | Comment(6) | 安全 ・災害
この記事へのコメント
 最後に [ 付記2 ] [ 余談3 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2011年06月04日 15:47
すばらしい見解です。私も思っていました。
国民主権は日本人には無理なのです。
私は麻生の定額給付金の時でさえ受け取らなかった
です。もはや国をどうするか考えるよりも個人でできる危機管理について考えた方が利巧だと思いますね。
Posted by 備三 at 2011年06月04日 17:37
私もつっこみどころ満載なので朝日を購読しています。今朝もそろそろうんざりしている妻に、いかに朝日も自民も鳩山・小沢も、その他もろもろおバカであるかを解説しました。わあ、南堂さん、まったく同じ論評じゃないですか。唯一、違うのは最後に笑うのは小沢・自民党利権集団ではなくて、天才的トーク達人、現代のヒトラー、ムッソリーニさんたちだという予測なのですが…(第3の選択があれば、民にも谷垣自民党にも「大衆」は投票しないでしょう)
Posted by horihori at 2011年06月04日 19:55
 ほんと。早くも今日の社説で讀賣は「各地で安全不信から再稼動できない原発が相次いでいるが政府は率先して再稼動に向けて取り組め」といっている。原発を推進しようとしている巨大組織に抵抗するには・・・
Posted by KK at 2011年06月04日 22:48
 世論調査の記事。
 ──
 読売新聞社が3〜4日に実施した全国世論調査(電話方式)。

 菅首相が東日本大震災などへの対応にめどがついた段階で退陣する意向を示したことについて、退陣を「当然だ」と思う人は54%となり、「必要はない」36%を上回った。

 退陣時期は「できるだけ早くすべきだ」40%、「そうは思わない」53%だった。自民党などが内閣不信任決議案を提出したことに関しては、適切だったとは思わない人が65%に上り、民主党内で、小沢一郎元代表や鳩山前首相らが賛成する動きを見せたことを「理解できない」との答えも73%に達した。
→ http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110604-OYT1T00694.htm?from=y10
 ──

 国民は、思ったほど馬鹿ではないのかも。
( ※ ただし、ネットにいる人々は別。)
Posted by 管理人 at 2011年06月04日 23:17
 ネット掲示板やツイッターでは、「菅直人はクソだからすぐにやめろ」という声が95%ぐらいだったのだが、リアルな世界の人々はそうではないようだ。
 ネットの声というのは、現実とは相当 懸け離れているようだ。そう理解した方がいいのだろう。
Posted by 管理人 at 2011年06月05日 00:33
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