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きょうの社説 2011年6月5日
◎志賀原発点検遅れ 作業員不足への備えが必要
作業員や資材の不足で、志賀原発2号機の定期検査に遅れが出ている。福島第1原発事
故の影響がここにも及んでいるのだろう。志賀原発は、1、2号機とも再稼働の見通しが立っていない。点検作業が遅れて夏の需 要期に間に合わなくとも特段の支障はないとはいえ、電力不足の問題もある。やはり要請があれば、いつでも動かせるように検査を終えておくのが望ましい。 気掛かりなのは、福島第1原発事故の処理が長引き、原発作業員の不足が長期に及ぶ点 である。労働安全衛生法は、緊急作業での作業員の被ばく線量の上限を累計で250ミリシーベルトと定めており、それを超えると現場を離れなくてはならない。緊急作業の長期化は作業員不足に拍車をかけるだろう。原発という特殊な環境下で、監督や指導ができるベテラン作業員の数は特に限られている。これら高度技能者の養成には、5年から10年はかかるといわれており、この部門の人材が尽きれば原発は動かない。国家レベルで解決すべき問題だが、志賀原発でも作業員不足への備えが必要だ。 福島第1原発の事故処理は緊急を要する。国を挙げて最優先で取り組むのは当然であり 、福島第1原発が安定しなければ、他の原発も再稼働できないと思わねばなるまい。業界全体で技術者や作業員を融通し合い、被ばくを最小限に抑えるのが理想だが、問題は福島第1原発と他の原発では、被ばく線量の上限に大きな違いがあることだ。 労働安全衛生法は、緊急作業でない通常作業の場合、被ばくの上限を5年間で100ミ リシーベルトと定めている。例えば福島第1原発で作業し、上限を超えた作業員は、この先5年間、他の原発で作業ができなくなる。東電以外の電力会社が事故処理に協力すればするほど、作業員不足が深刻化しかねない。 福島第1原発では先月末、東京電力の社員2人が被ばく限度の250ミリシーベルトを 超え、現場を離れた。上限の引き上げを求める声もあるが、健康にかかわる問題だけに、そう簡単に基準を緩めるわけにもいかないだろう。作業員の絶対数を確保するために、すぐにでも準備を始めてほしい。
◎「潜在保育士」調査 「即戦力」で子育て強化を
子育て支援策の一環として、石川県は資格を持ちながら就業していない「潜在保育士」
の実態調査に乗り出した。結婚や育児などで現場を離れた有資格者を把握し、職場復帰につなげる狙いがある。県が策定した2010年度から5年間の子育て支援計画「いしかわエンゼルプラン20 10」は、保育士の訪問サポートや支援コーディネーターの配置など、保育施策の充実を目指しており、保育の専門家の役割は大きい。県は今回の調査で掘り起こす「即戦力」を加えて、子育てサービスの強化を図ってもらいたい。 県に登録されている保育士は3月末で1万2276人。このうち4月1日現在で就業者 数は5553人となっている。これまで就業希望の有無などの実態を把握していなかったが、県は今回の調査結果をデータ化して各市町などに提供し、再就業希望者には求人情報や県の制度の紹介、研修も行うことにしている。 認可保育所への入所を希望する待機児童が2010年10月現在で石川県はゼロだった が、共働き世帯の増加などで年度途中の保育所入所が増えており、入所を1〜2カ月待つ「隠れ待機児童」を出さないためにも、保育所が円滑に保育士を確保できる体制が必要となっている。 少子化の要因として、家庭や地域の子育て力の低下、仕事と子育ての両立が難しい職場 環境などが挙げられるなかで、「潜在保育士」は子育て力を向上させる人材である。「潜在保育士」の復帰を促すきめ細かい取り組みを進め、「エンゼルプラン」で示した多様な保育サービスの質を高めてほしい。 厚生労働省の2010年人口動態統計(概数)で、石川県の合計特殊出生率は1・40 で全国平均(1・39)を上回ったものの、全国順位は前年の21位から23位に下がっている。「エンゼルプラン」では石川県新長期構想に盛り込んだ「2015年に出生率1・50」の目標を掲げており、少子化に歯止めをかけるための一層の環境整備が求められている。社会全体で子育てを後押ししていきたい。
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