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きょうのコラム「時鐘」 2011年6月5日
百万石まつりに「盆正月」の催しが登場した。年に2度の楽しい日が一緒に来たような特別の日。昔の人の名付け上手に感心する
「百万石まつり」という名に、チクリと皮肉を言われたことがある。慎み深い土地の人が、昔の栄華を誇るのは感心しない。「『百万石』は、よその人が使う褒め言葉である」と 一理ある、とうなずきかけて、やめた。皮肉の主は、駿河の生まれ。東海道筋や関東は、江戸防衛の戦略として幕府直轄地や小大名の領地が多く置かれた。百万石を皮肉るのは、小さな石高の悔しさ、負け惜しみではないか かの地には、清水次郎長や黒駒勝蔵など時代劇の英雄たちの「史跡」がある。自慢のタネだが、裏を返すと治安がよろしくなかった証でもある。栄転や出世を願って江戸の顔色をうかがう為政者がおり、地域振興や治安維持よりも、税の取り立てに励んだのではないか 賭け事好きの親分衆も、盆正月のにぎわいも、懐の豊かな土地でなければ生まれなかった。だから自慢に値する。が、文化という物差しを当てると、どうか。盆正月の復活を声を大にして自慢しない手はないだろう。 |