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【静岡】

二番茶を荒茶検査 川勝知事応じる 「安全最優先」

2011年6月4日

一番茶は製茶で実施へ

静岡茶市場に展示、販売される荒茶の見本=5月、静岡市葵区の静岡茶市場で

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 茶葉の放射性物質の検査をめぐり、政府が求める加工段階の「荒茶」の検査に難色を示していた静岡県の川勝平太知事は3日、これから収穫が本格化する「二番茶」の荒茶検査に応じる方針を示した。これまでの反対姿勢から転じた理由を「消費者の安全を最優先し、茶業関係者も検査すると言っている」と説明した。既に流通している「一番茶」については、販売前の製茶を検査する方針。

 政府は2日、生葉と同じ暫定規制値(1キログラム当たり500ベクレル)で、荒茶と製茶を検査するよう決定。葉の水分が蒸発して軽くなる荒茶は、放射性物質の検査値が生葉よりも高くなる傾向があり、川勝知事は「規制値に科学的根拠がない」と検査は不要と主張していた。

 県庁で3日夕、記者団の取材に応じた川勝知事は「500ベクレル以上のものは出さない」と語り、暫定規制値を上回った場合は出荷制限に応じる意向を示した。

 二番茶の検査方法については「一つの町と言っても、地域で地形も違うので、きめ細かく工場ごとに検査するのが望ましい」と主張した。

 一方で、「検査の決定過程が不透明」と、あらためて政府を批判。政府が荒茶と生茶葉の規制値を同じとする科学的根拠などをただす公開質問状を、近く国に提出するという。

 県経済産業部によると、二番茶の取引は6月上旬から始まるため、なるべく早く各茶工場から荒茶を持ち出すサンプリング調査を実施する方針。既に流通している一番茶は、茶商が保管する製茶を調べる。

「安全確かめて流通」 風評被害打開に期待

 国の決定過程や科学的根拠が明らかでない−と疑問を呈しながら、川勝平太知事は3日、二番茶の荒茶を対象に放射性物質検査を受け入れた。「茶の安全を確保するためにきっちり検査する」と強調する知事。政府方針に従い検査することで、風評被害を食い止めたいとする県内の茶関係者も多い。

 川勝知事は2日も批判する発言をしていたが、茶の流通関係者らとの協議で「静岡だけ検査しないのは、消費者の理解を得られない」などの声が寄せられたという。

 「新茶が返品されてきた」「新茶の出荷を待つよう取引先から言われている」

 静岡茶を全国各地の茶専門店やスーパーなどに販売している県内の茶問屋は口々に苦境を訴えている。

 静岡市葵区の問屋街に店を構える問屋社長は「契約は取り消すと関西地方の得意先から言われてしまった」と肩を落とす。毎年、買い続けてくれた古い付き合いの相手からの通告に、ショックを隠しきれない様子だ。

 別の茶問屋の担当者も「静岡茶を贈りたいけど、気持ちよく受け取ってくれるか、と躊躇(ちゅうちょ)する消費者も多い」と嘆く。

 県の調査で安全を確認したことを説明するチラシを同封するなどして不安感の払拭(ふっしょく)に努める専門店もある。

 県内の流通業者でつくる県茶商工業協同組合は、静岡茶の安全性をアピールするポスターを急きょ作製。全国の茶専門店からの要請に応えた。

 静岡県内有数の茶園面積を誇る島田市の茶業振興協会長の桜井勝郎市長は「国が決めたことだからやらざるを得ないだろう」と知事の姿勢に理解を示す。

 だが「生葉を乾燥させた荒茶で、高い放射性物質が検出されるのは当たり前。お茶はいろんな産地の荒茶を混ぜて製茶しているし、口に入る飲用茶は放射性物質は低いはず」と指摘。「口に入れない荒茶を、他の露地物野菜と同じ規制値に当てはめるのがおかしい。検査するなら消費者のための品質保証につながるよう飲用茶を対象にするなど、科学的根拠に基づかないと風評被害を生む」と懸念した。

 

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