3日午後4時ごろ、有田川町水尻の扇谷池ほとりで遊んでいた有田川町立藤並小学校の3年男児(8)が足を滑らせて池に転落した。だが、一緒に遊んでいた児童らの叫び声を聞いて駆け付けた近所の主婦が空のペットボトルを男児に投げ与え、男児はこのペットボトルにつかまって一命を取り留めた。【川畑展之、御園生枝里、山下貴史】
男児らの叫び声を聞いた近所の主婦、田中ひとみさん(41)は、「非常時のため」と自宅に集めていた2リットルと1リットルの空のペットボトル5、6本を持って駆け付け、ほとりから約5メートルのところにいた男児に投げ与えた。隣に住む主婦の西村文子さん(40)も110番通報し現場に駆け付けた。ペットボトルは、なかなか男児に届かなかったが、最後の1本のトマトジュース用ペットボトルが男児のおなかの上に乗った。
「絶対放したらアカンで!」
2人の主婦は大声で繰り返した。一緒に遊んでいた同じ3年の男児2人と1年男児1人も見守った。
男児はペットボトルにつかまり、顔とひざだけを水面から出し続けた。浮力を保ったまま、岸辺に流れ着き、駆けつけた湯浅署員に引き上げられた。男児は念のため、和歌山市の病院に一時搬送された。
湯浅署によると、男児らは4人で遊んでいた。池には一部にしかフェンスがなく、誰でも近づくことができた。水深は2~3メートル。同署は「男児が池の深さを図ろうと思いついたらしい」とみている。
ペットボトルを投げ与えた田中さんの「機転」には称賛が相次いだ。有田川町消防本部司令室の職員は「子どもは体が小さいので、ペットボトルで十分防ぐことができた。とても良い判断だったと思う」と絶賛した。
同小(久道憲生校長、606人)の高垣和彦教頭は取材に対し、「機転を利かし大切な命を助けていただき感謝している。ため池や川、用水路で遊ぶ危険性を指導していきたい」と語った。男児は午後2時40分に5時限目を終えて下校していた。高垣教頭は田中さんと西村さんを訪ね、お礼を言ったという。
毎日新聞の取材に田中さんは「けがもなく、ほっと一安心しています」とうれしそうな様子。西村さんも「助かって何よりです」と興奮した様子だった。
同署は3日、田中さんに近く感謝状を贈る予定だと発表した。
2011年6月4日