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[28145] 【ネタ】魔法少女リリカルれみりあ
Name: あすぱら◆f8931cec ID:3658557d
Date: 2011/06/01 22:20
親が死んだ。

数年前のことである。

たまの休みに夫婦仲良く出かけて行って、高速道路で玉突き事故だそうな。

そりゃあ子供より親が先に死ぬのは自然の摂理、当然のことであるが少しばかり急すぎた。

なぜって俺はひきこもり。

中学で不登校になってから12,3年ほどになるベテランだ。

いや、世の中広いから俺ぐらいでもまだまだひよっこだという猛者もいるが、世間的に見たら十分だろう。

ともかく、ひきこもってた俺には収入のあてがない。

保険金や遺産で何とかしていたが、家賃やなんやらだけでもガリガリと削れていく通帳残高に脅威を覚えた俺は外国為替証拠金取引に手を出してみた。

FXというやつだ。

主婦でも簡単に儲けられるらしいし余裕だろ。

そう思い某掲示板の住人の助言に従ってしばらくやってみたところなぜかまだまだ余裕があったはずの通帳残高は明日をも知れないような有様になっていた。

俺は住人を痛烈に批判したが返ってきたのは罵倒と嘲笑のみであった。

昨日、いや、今朝未明のことだ。

働こうにもこの履歴書の空白は、などと言われたらどうしていいかわからない。

というか人前に出られない。

ユニクロに行く服がない。

しまむらに行く服もない。

死ぬしかないな。

うん、そうだ

死ぬ

しか








そうと決まればどう死ぬか。

線路に飛び込むか。

いや、人がいっぱいいるところに行くと動悸が激しくなるから無理だ。

マンションの屋上から飛び降りるか。

いや、かなり高いフェンスが張り巡らされていた。

よじ登るのはたぶん無理。

家の中にあるもので死ぬしかないな。

洗剤を混ぜればいいんだよな。

中性と、なんだっけ。

ググる。

塩素系と酸性だった。

探す。

無い。

というか、独りになって以来家事などまともにしていないから洗剤なんてない。

近所のコンビニが俺の生命線。

ただ荷造り用ロープがあった。

首をくくるか文字通り。

……そういえば、首をくくるで思い出したんだが、昔に某オクで自殺教本みたいなのを戯れに購入したような気がする。

探す。

……探す。

……………………あった。

押し入れにしまってあったそれのタイトルは『誰でも簡単☆転生読本(はぁと)』

あほか、と思うが意外と立派な装丁である。

作者の名前などは書かれていない。

奥付などもない。

久しぶりに読み返してみる。

………………………………………。

長々といろいろ書いてあったが、要するに、挿絵に書いてある通りに魔方陣を書いて、行きたい世界に関係のあるものとなりたい自分に関係のあるものを所定の位置に置いてそのうえで首をくくるだけでいいらしい。

簡単だ。

それに転生と言うのも魅力的。

ひ弱で根暗でいじめの対象になっていた自分以外になれるというのはとてもいい。

イケメンになってモテモテ、という妄想をした夜は数えきれないほどだ。

とりあえず持ってる漫画とかフィギュアを眺める。

どんな自分になりたいか?

難しい問題である。

今の自分でなければなんでもいい気もするが。

思うのは、ただイケメンになるだけではいけないのでは、ということだ。

自分がどれだけイケメンになっても言動でキモッとか言われない保証はないのである。

というかおおいにありそうなのだ。

三つ子の魂百までと言うし、転生しても人格を保つなら見た目がいくら変わっても無駄、無駄ァッである。

ああ、そうそう、転生しても人格は保たれたままだと『誰でも簡単☆転生読本(笑)』に書いてあった。

ならば、である。

かわいい女の子にもてるのではなく、俺がかわいい女の子になればいいんだ(迫真)

逆に考えるんだ、鏡を見るだけで幸せになれちゃうと考えればいい。

というわけでかわいい女の子を物色。

おっぱい大きいと肩が凝ったりするというし、ちっぱい派だし、ええと……

れみりゃ!君に決めた!

フィギュアを手に取る。

かわいくてかっこいい。

最高ジャマイカ。

行きたい世界は、適度なスリルとサスペンス……

なのはとかどうだろう。

管理局の紅い悪魔、いいじゃない。

あとそうだ、れみりゃの身体能力を活かす体術を習得するためにサブで、ええと……師匠!

東方不敗マスターアジア。

布でMF破壊するとかまじぱねえっす。

ついでに凄い布も持って行こう。

傾世元禳だな。

妲己ちゃんマジジャンプ最強ヒロイン。

よしOK

魔方陣を描く。

床に直接墨汁で、間違えないように慎重に。

フィギュアとDVDと漫画を設置。

準備完了だ。

たぶん新聞の隅っこに載ったりするんじゃないだろうか。

床にでっかく書かれた魔法陣。

散乱する漫画とかいろいろ。

そのうえで首吊ってるひきこもり。

馬鹿げた本に影響されたひきこもりすぎて頭おかしくなった男として某掲示板で有名になるかもしれない。

誰かがそれをみてげらげら笑って日々のストレスを少し解消するかもしれない。

そういうことに、俺は幸せを感じるんだ……

じゃあちょっと吊ってくるノシ



[28145]
Name: あすぱら◆f8931cec ID:3658557d
Date: 2011/06/02 02:26
目を覚ます、とたんにくらりとした。

立っている。

なんでだ、と思いながら体勢を立て直す。

びっくりするくらい体が軽い。

夢でも見ているのか。

いや、違う、俺は

俺は

死んだ。

死んだはずだ?

まさかあの本が本物だったとでもいうのかんな馬鹿な。

両手を目の前に持ってくる。

フリルのついたリストバンド?をまいた自分の腕とは明らかに違う細くてきれいな腕。

よく見ればピンクのドレスのような服を着ている。

それになんかすーすーする。

スカートを捲り上げ、ドロワの中身を確認する。

そこには綺麗な一本のs

……落ち着こう。

周囲を見渡すとどこかの廃ビルのようであった。

外は真っ暗であるにもかかわらずなぜか昼間と変わらぬように、いや、ちょっと違うのだが説明しづらい。

赤外線カメラの映像みたいなのとかでもなく、とにかく見える。

背後には長い布がふわふわと浮いていた。

手に取るとしんなりする。

手を離すとまた浮いた。

歩くと後ろをついてくる。

犬みたいなやっちゃな。

これ、傾世元禳だろうか。

再び手に取ってみる。

宝貝は普通の人間は触れただけでもミイラになるとかいう設定だった気がするが特になんともない。

これはスーパー宝貝なのだから持ってるだけでなんか疲れたりするもんだと思うのだが。

使うことを意識してみる。

魅惑の香りのイメージ。

ふわり、と甘い香りが漂う。

それとほんの少し吸われてる感じ。

当然自分には効果がないのでほんとに使えてるかどうかは分からないがまあ使えるようだ。

「石破…」

呟き、掌に意識を集中するとぼんやりと赤く光った。

慌てて消す。

壁とかぶち抜く威力だしいろいろとシャレにならないぞ。

ともあれこれではっきりした。

してしまった。

あの本は“本物”だったらしい。

ナンテコッタイ

しかし、どうしよう。

これから吸血鬼として生きていかなければならないとは。

生きていくのには何が必要だろう。

血?

まあ傾世元禳があれば問題ないかな。

派手にやってばれるとミサイル攻撃とかされるかもしれないがこっそりやれば問題ない。

とりあえず外に出てみよう。

廃ビルの周囲はひっそりとしていたが、少し行くと普通の住宅街になっていた。

飛んでも大丈夫かな?

周囲を確認、誰もいない。

念のため視認速度を超えるイメージでジャンプしてから飛ぶ。

上手くできたかは全く分からないが見つかったときはその時だ、魅了してしまおう。

上空から見た町は海に近い、普通の地方都市と言う感じであった。

そういえばまだ確かめてなかったけどここが海鳴だったら確定だな。

夜が明けるまでにはまだまだありそうだが降りるとしたら人気のないところがいい。

あそこの神社っぽいところに降りるか。

飛んでいき、急降下。

なんか速く降りられているのかもよくわからない。

動体視力や対G性能が凄まじいことになってるみたいなのだ。

普通の神社だ。

近くを歩く。

電柱の住所を見ると海鳴××-××とあった。

はい、確定です。

どうしようか。

翠屋に近づくのはやめた方がいい絶対に。

問答無用で退治される恐れがある。

月村は吸血鬼とはいえたぶん俺とは違う。

どういう扱いになるかわからないし高町恭也に関わらざるをえなくなるからダメ。

管理局もやばい。

スカさんの実験体とかにされかねないし流石に脳みそを魅了できるとは思えない。

管理局の紅い悪魔(笑)誰だよそんなこと言ったの。

吸血鬼が普通にうろうろしてるとこに行けばよかった。

しかし時空管理局、気に入らないな。

管理、一つの思想を唯一絶対とし支配する。

奴を思い出させ、虫唾が走る。

生き物は闘争の中でこそ、その魂を真に輝かせる。

世界の人間どもを見よ。

闘争を忘れ、欺瞞に満ちた平和と言う名のぬるま湯につかりきり堕落した魂のなんと汚らわしいことか。

闘争が必要だ。

この世界に、全ての次元世界に混沌を。

原始の“Chaos”を再び蘇らせるのだ……




……ん?

なんか変だったな今。

まあいいか。

ともかく、下手に動くわけには、

【誰か……聞こえますか…誰か…助けて…くだ】

っておい。

言ったそばからなんだこれ。

今ちょうど原作が始まったらしい。

どうしたものか。

とりあえず原作通りになるかどうかはチェックするべきだよな。

しかし直接見に行って見つかるのは嫌だな。

……蝙蝠、飛ばせるかしらん。

飛ばせた。

普通に。

一匹だそうと思えば一匹、いっぱい出そうと思えばいっぱいでた。

これは技能などではなく種族特性なんだな。

それに都合のいいことに超音波で周囲を把握するタイプじゃなくて普通に目で見るタイプだったようでそのうえズームみたいなこともできるっぽいので監視には非常に便利だ。

ビバ、吸血鬼。

あとマルチタスク?も普通にできるようだ。

蝙蝠を動かしながら自分も動く。

自分が二人に増えたような、自分たちを鳥瞰しているような、不思議な感覚。

初めて自分の顔を見た。

レミリア・スカーレットだった。

蝙蝠で見ながらポーズをとったりしてみる。

にっこりと微笑んでみる。

……ポッ

自分にニコポなど前代未聞ではなかろうか。



[28145]
Name: あすぱら◆f8931cec ID:3658557d
Date: 2011/06/02 01:59
現在俺はバニングス邸にほど近い、富岡邸に棲みついている。

あの夜、未来の白い悪魔を監視していたところ、彼女は無事に相棒を譲渡され今では毎晩愉快に魔法少女している。

次の日は神社の中で日が沈むまで過ごしたがいつまでもそうしているわけにもいかない、というかじめじめして不快だったので新しい快適なねぐらを探すことにしたのだ。

海鳴には高級ホテルとかはなかったので金持ちっぽい家の人を魅了して住み着くのがいいと思った。

メイドさんとかいると良し。

ディ・モールトベネ!

とりあえず思いつくのはバニングス家だったのだが、直接の脅威はないといっても高町なのはと関係があり、高町恭也に気付かれる可能性があるのだから避けるべきだ。

前世では割と簡単に死んで今ではたぶん不老不死な身だが、死なないとなると逆に命冥加になるものらしい。

この街で、というかこの世界で単体戦闘力トップクラスと事を構える気は起きない。

師匠の技能もあるから負けるとは思えないが万が一と言うこともあるし、そもそも喧嘩なんてしたことないのだ。

サンドバックになったことはあるけど。

まあ、ともかくバニングス邸の周りの高級住宅街でメイドさんがいそうな家を探したのだ。

出入りする人間が少ないとなおよし。

というわけで三日ほど神社の中から蝙蝠を飛ばしての探索の結果、富岡さんちにお世話になることにしたのだ。

富岡夫人はそろそろ還暦を迎えようかと言うくらいの品のいい老婦人で大きなお屋敷、まあバニングス邸には劣るが一般的には十分でかい、に一人暮らしをしている。

メイドさんというには少々老けているな。

30半ばのこちらも優しげないい雰囲気の通いのお手伝いさんに家事を任せて悠々自適の暮らしをしているのだ。

侵入経路は普通に玄関。

インターホンを鳴らして、

「ごめんください。私、迷子になってしまって。道を教えていただけないかしら……」

と、しおらしい感じで言ってみたところすぐにお手伝いさん、ちなみに中西さんという、が出てきた。

そこで傾世元禳発動。

濃い甘い香りが周囲に漂ったかと思うと、中西さんの瞳が濁る。

レイプ目というやつです。

誰得?

と言うなかれ、なんかすごい美人なのだ、中西さんも富岡夫人も。

アニメキャラはモブでもかわいいの法則か。

まあ、今は少女なのでだからなんだという感じでもあるが。

れみりゃが一番です。

そして中に案内させて富岡夫人も魅了。

ミッションコンプリートである。

MGSの隠しアイテムとかでこれ欲しかったなあ。

難易度上げるとだいたい見つかって正面突破しようとして殺されてたから。

通いの中西さんが帰る前に一日がかりでしっかり洗脳。

密閉した部屋で傾世元禳の出力を上げまくってたからもの凄い匂いだったよ。

ただ、すごい匂いに感じたのは鼻もよくなってたかららしくて常人には匂いとしてはそこまで感じ取れないらしい。

二人の人間でいろいろと実験した結果である。

二人には俺がいることを疑問に思わない、俺の存在を第三者には教えない、というふうに魅了しながら暗示をかけてみた。

しばらく様子を見てみたところどうやら成功したようだった。

あんまり傾世元禳を使いすぎると頭がぱーになる可能性があるから匙加減が難しい。

しかしこれでのんびり快適に過ごせる。

中西さんには一応日傘やドレス以外の服を買いに行ってもらった。

お金は富岡夫人持ちである。

俺の存在に疑問を持たない、というのが変な方向に作用したのか自分の孫かなんかであるように接してくるのだ。

まあ、まんざらでもない。

そしてこれからは監視をしつつ闇の書事件が終わるまでひきこもりだ。

死亡フラグなんぞ立つ前に叩き折ってくれるわフハハ



そういえば、

「なんで貴女は一人でこんな大きな家に住んでいるの?」

ある日、気になったので聞いてみたことがあった。

「それは、う~ん」

言い淀んでしまったので傾世元禳発動。

「お話、してちょうだい?」

凄い笑顔でおねだりしてみる。

俺は部屋の隅に飛ばしている蝙蝠でだいたいいつも自分の顔やらを見ている。

そして今の顔はすごく良かった。

ぺったんこの体なのになぜか、元からか、妲己ちゃん要素があるからかはわからないが、すごくエロい。

そして溢れるオーラ!

これがカリスマというモノか……!

ちなみにソファで膝枕してもらっている。

でもカリスマ。

目からハイライトが消えた富岡夫人が語るところによると、要するに婿養子に入った旦那がメイドと駆け落ちしたという話らしい。

しかも、そのメイドというのが中西さんの実の母。

中西さんの祖母から親子三代富岡家でお手伝いさんをやっていたらしい。

そして中西さん母と旦那さんがどっちから誘ったのかはわからないがともかくも“男女の”仲になり逐電、二人とも行方知れずとなってしまったそうな。

富岡氏は新妻を、中西さん母はまだ幼い中西さんを残して。

中西さんは祖母と富岡夫人に育てられたらしい。

話すうちにだんだんと目に理性の光が戻ってきた富岡夫人は旦那さんが逃げたことについては私の不徳の為すところ、といって目を伏せた。

なんとまあそれなんてエロゲ?いや違う、昼ドラ?

この泥棒猫、と叫んでいいポジションの富岡夫人すげえ。

泥棒猫の娘を育ててしかも雇うとか懐が広すぎるだろう。

そのことについては中西さん祖母に世話になったから、とも言っていたがそれでも……

貴女はどこの聖人君子だまったく。

せめてまあ寂しさを紛らわすくらいはいたしましょう。

なにしろ今の俺は永遠に幼い紅い月……

くだらない、まったくもってくだらない。

なにが聖人だ?

この女の眼をよく見ろ。

昏い昏い感情が発露されずに長年かけて溜まりに溜まって澱の様に臓腑の底に沈殿し、魂を腐らせているのが見えるだろう!

この女は戦わなかった。

この女が盗人と裏切り者を地の果てまでも追いかけて殲滅していたなら、このような、生きているのか死んでいるのかわからないような年月に魂を腐らせることもなかっただろう。

懐が広い?

敗北主義者の間違いだ!

このような下等な魂、喰らっても胃にもたれるだけであろうがこれ以上放っておいても何も変わらん。

今すぐにでも八つ裂きにして魂を喰らい、残り滓は庭の肥やしにしてしまおう。

そして、磨き抜かれた魂が一つ、二つ、これから輝きを増していくであろう魂が二つ。

熟した果実は収穫し芽吹いた花には肥料を撒こう。

さあ、早く、早く!



……あれ?

なんか考えてた気がする。

なんだっけ。

ああ、外に出なくちゃ。

あれ、ひきこもらなきゃ?

なんだっけ?なんだっけ?外に引きこもる?

……ええと?



なのはちゃんは魔法少女しながら順調にジュエルシードを集めていたが猫にやられた。

いや、違う猫を襲った黒いのにやられた。

あれがフェイトちゃんか。

近い将来『おはなし』されてしまう可哀そうな子ですね南無。

しかし、これがボンキュッボンッの脱ぎ魔になるのかあ、と思いながら見るとなかなか感慨深い。

木立に隠れた蝙蝠でローアングルから眺めているとなんか目が合った気がした。

キノセイデスヨネ?



[28145]
Name: あすぱら◆f8931cec ID:3658557d
Date: 2011/06/04 02:20
なんとなく外に出たくなったのでここのところは毎晩近所を散歩している。

コンビニに行く以外の目的で外に出るのは久しぶりな気がする。

死ぬ前の記憶はすでにいまいち現実味の無いものになっているのだけども。

身体が少女になってしまったからか男であった時の記憶に違和感を覚えることもある。

まぁどうでもいいんだけども。

不老不死の悪魔としてこれからどんな風に生きていくか、それが問題だ。

日光は別に平気、少しヒリヒリするくらい、日傘をさすか日焼け止めを塗るかすれば問題ない、のだけれどもやはり夜の方が調子がいい。

血も特に飲みたくなったりしない。

さらに睡眠や食事も必要ないらしく、昼間は富岡夫人と一緒に本を読んだり編み物を教わったり紅茶を飲んだり優雅に過ごし、夜は魔法少女に鉢合わせないように注意して散歩をする。

神社に行って流派東方不敗の型?みたいなのを試してみたりもしている。

一般人からはどんなふうに見えるのかなあと思い中西さんに買っても来てもらったビデオカメラで撮影してみたところ、瞬間移動しまくっていた。

テラヤムチャ

いや、肉眼ならはっきり見えるけど。

職質とかは傾世元禳で前後不覚になっていただいています。

あとこれ犬とか猫とかにも効くことがわかった。

番犬に吠えられなくなりました。

あとはそうだねえ、満月が近づくにつれてすごくテンションが上がる。

血が騒ぐというか、滾るというか。

最高にハイってやつだうりいいいいい、というか。

今日は温泉で決闘の日だ。

蝙蝠はあらかじめ先回りさせている。

夜なら車と競争も余裕なんだけどね、昼間はスピードが下がるし目立つし日焼け止め塗るのも面倒だし。

結界張られなければ遠くから監視できるんだけど、結界の中は入らないと見えないのさ。

原作通り、なのははフェイトに負けてジュエルシードを取られていた。

アースラが来るのはいつだっけ?

そろそろだったような気がするけど。

管理局に見つかるのは避けたい。

まぁ見つかっても傾世元禳でクルー全員洗脳余裕ですな気もするけど。

見つかっちゃいけないのはあれだ、鍛え抜かれた精神力を持ってる人。

具体的には高町父子。

レジストされたら戦うしかない。

人質作戦とかでいけるかもだけどめんどくさい。

何が起こるかわからないのが戦場。

好き好んでそんなとこに行くのはお馬鹿さぁんなのだ。



しばらくたって、今夜は満月。

今までにないほどウキウキする。

なんかしらないけどやたらと楽しい。

こんな気分になったのは本当に久しぶり。

月の光は魔性の光。

そして満月の夜は魔物の夜。

私一人なのが残念だ。

いつものように神社へ行ってみる。

月明かりに照らされて普段よりいい感じの雰囲気になった神社の境内の中心に立ちくるりと回る。

くるりくるくる、踊ってみる。

マイムマイムくらいしか知らないけど、体が動くのに任せて、月明かりの導くままに。

くるくるくるる、楽しいが全身からあふれる。

うふふ、あはは

どれほど経っただろう。

よくわからない。

ただ家を出たときはまだまだ斜めだった月がちょうど天頂に来ていた。

ザリッと砂利を踏みしめる音。

くるる、くる、く

そちらを向いて立ち止まる。

目が回ったりはしていない。

確かな視界にとらえたのは黒髪の青年。

普段ならイケメン死ねっ、とでも思うはずなのに何故だろう。

月明かりに照らされたその顔がとても愛おしく思えた。

胸がドキドキする。

頭が少しぼうっとする。

ああ、これが恋なのかしらん。

人外をも魅了するとはエロゲ―主人公補正のなんと凄まじいことよ。

「君はいったい…?」

グリリバボイスで問いかけてくる。

なんでここに来たのか自分でもわからないという風だ。

俺と同じに、なんとなく、ここへ来たのだろう。

「いい月夜ね。でも私と貴方が愛し合うには嫌な色だわ」

そう、この青白い月の光は二人の舞台にふさわしくない。

血のような赤、紅い月でなければならぬ。

両手を胸の前で広げ霧を出す。

瞬く間に神社は紅い霧で覆われる。

そして月明かりは赤に染まる。

赤一色で埋め尽くされた世界で、両腕に絡めていた傾世元禳を持ち直し捻じり、まっすぐに伸ばす。

出来上がった桜色の槍に紅い魔力を纏わせる。

殺気を込めて一歩を踏み出すと恭也はそれに反応して小太刀を抜き、構える。

困惑に染まっていた目つきが変わる。

戦う者の眼。

完成されている、研ぎ澄まされている。

極上の魂だ……!

ごくりと唾を飲む。

それを隙と見たか高町恭也は先手必勝、こちらの懐に飛び込んできた。

確かに槍と小太刀では懐に入られれば勝ち目はない。

だが残念なことに私は人間ではない。

恭也の速度は人間としては最高峰、素晴らしいものだ。

だがそれだけだ。

魔物の速度に、人外の速度に対抗することは不可能だ。

高速で下がり、突きまくる。

こちらの突きの嵐を恭也は二本の小太刀で何とかしのいでいる。

だが私は何とかしのげる程度に加減して撃っているし、それを恭也も理解している。

しかしその目からは力が消えていない。

覚悟があり、意志があり、諦めなどは微塵もない。

素晴らしい、本当に。

彼の魂は今この瞬間にも輝きを増しているのだ。

ああ、美味しそう

食べてしまいたい今すぐに

いや待つのだ、もう少し

この魂はもっと輝くことができる

もう少し、もう少し

だがあまり時間をかけて邪魔が入るといけない。

名残惜しいが終わりにしよう。

楽しい時間の過ぎるのはなんと早いことだろう。

速度を上げ小太刀を弾く、一本、二本。

槍を回し手足の腱を裂く。

この場に及んでもまだ彼の目には光がある。

崩れ落ちそうになった彼を抱きしめ、首筋に口づける。

口の中に熱い血が溢れる。

どれほどそうしていただろう。

全身が凄まじい快楽に包まれている。

「私と一つになりましょう?一生愛してあげるわ」

両手を彼の頬に添え微笑みかける。

「君は、独りなんだな」

私の目に何を見たのか、血の気を失った青白い顔で彼は言った。

ああ、そうかもしれない。

ずっとひとり。

どこに行っても邪魔にされ、居場所を作るにも道具に頼らなければどうにもならない。

「ええ、一緒にいてくれる?」

「ああ、いいぞ」

拒絶への不安があったが、果たして彼は頷いた。

笑みさえ浮かべてだ。

「嬉しいわ」

この時私はすっかりこの男にやられてしまっていた。

彼の心臓に槍を突き立てる。

彼の全てを喰らい尽くす。

彼は見る見るうちにミイラのようになっていく。

すっかり乾ききった茶色のそれを槍の一閃で吹き飛ばす。

それで起きた風で霧も吹き飛ばされた。

いつの間にか月は雲に霞んでいる。

彼は紅き月の一部となった。

彼の魂は永遠に私とともにある。

満たされている。

これ以上ないくらい。

ああ、俺は今、幸せだ。




[28145]
Name: あすぱら◆f8931cec ID:3658557d
Date: 2011/06/04 02:15
高町恭也が家出したらしい。

昨晩突然得物を持って消えてしまったようだとか。

そんなイベントあったっけ?

まぁ山籠もりとかする様な人だし、突然熊と戦いたくなったのかもしれない。

高町家の人々の反応も概ねそのようなもので恭也だから仕方ない、というようなことを言い合っていた。

なのはちゃんは少し心配そうだったが、恭也が誘拐などされるはずもないし杞憂だろう。

何しろここにいるものねえ。

うふふ

もうずっと、永遠に私と一緒

彼は今や紅き月の住人

二人っきりがいいかしら

いいえ、たくさん、たくさん、人を増やしましょう

素晴らしい輝きを持った魂たちで月面を埋め尽くすのさ

きっともっと楽しくなる

もっと淋しくなくなる

あはは

なのはちゃんは先日の戦闘以来フェイトちゃんのことで悩んでいるようだ。

兄のこともありけっこう不安定になってるっぽい。

今までほぼ原作通りだけど、何か変わるようならデバイスの強奪とか考えなきゃなあ。

A's原作通りに行かなかったらなんだっけ日本消滅?地球だっけ?ともかく避難しないといけないし。

隻眼の神は魔術師でもあった。

だからこれは神槍にして呪杖、そんなものは必要ないよ。

あ、そうなの。

じゃあこのまま傍観でいいかな。

何事もないのが一番だ。

ん?

なんか満月が近づくとボーっとすることが多いな。

昨夜の記憶なんかすごくもやもやするし。

体調がすごく良くなったような感じがするからたぶん月光浴でもしたんだろうけど。

まさか自分が徘徊老人みたいになるとは思わなかった。

でもまあこれからは新月に向かっていくし意識もはっきりするだろう。

近頃は富岡夫人と一緒に本を読むのが楽しくて仕方ないのだ。

富岡夫人は大学時代生物学をやっていたそうで、その手の本をたくさん持っているのだ。

独りになってからは手慰みに物理学や化学にも手を出しているそうで非常に博識である。

中卒未満の俺は絶対ついていけないはずなのだがなぜかスイスイ理解できた。

一度覚えたことは忘れないし、頭の出来がまるで変ってしまった。

いや、冗談でなくそうなのかもしれない。

人間は寝てる時に記憶を整理して定着させたりするけど俺は寝てないのだ。

脳みそなんて科学的な器官に頼ってるから駄目だったんだな。

まあそんな感じで読書をメインに時折富岡夫人に質問したりしながら勉強している。

しかしなぜか生物工学については富岡夫人よりも、というか学会の最先端とかよりもはるかに進んだ知識を持っていた。

なんでだろうと思ったが、そうだ、妲己ちゃんの紂王様魔改造のアレかもしれない。

たしかに人体改造にわりと偏った知識を持っている気がする。

設備がないから何もできないけど。

時の庭園乗っ取り作戦とかスカさん洗脳数の子魔改造大作戦とか一瞬頭に浮かんだけどどう考えても死亡フラグです本当にありがとうございました。

出る杭は打たれるのだ。

嵐の夜は雨戸を閉めて閉じこもるのが最善。

アルカンシェルとか撃たれたら流石に死ぬと思うの。

マップ兵器回避はちょっとできるかわからないし。

なに、これから時間はいくらでもあるのだしメフィストフェレスごっこできるくらい知識をため込むのもいいだろう。

うん、それがいいな。

この世の全ての知識を集めてメフィストフェレスごっこ。

うは、夢が広がりんぐウフフ



しばらく後、フェイト、なのは再びがちバトル。

なんか素手でジュエルシード掴んであっちっちってなる回だった気がする。

うろ覚えだけど。

そんなことを思いながら蝙蝠を通してぼーっと眺める。

もう見る必要ない気もするんだけど、万が一フェイトちゃんが死んじゃったりしてなのはちゃんがなんとかできなかったら出なきゃいけない。

地球崩壊は駄目です。

熱い戦いが続く。

二人がジュエルシードに向かって突撃する。

あ、杖にひび入った。

これで素手封印かな、って、えっ。



緑髪の少女が暴風とともに突っ込んできてジュエルシードを二人から奪い取った。

そして発生させた光る蛙に掴んだそれを食べさせるとなんか封印されたっぽい。

さらに間髪入れずゆびぱっちん。

瞬間虚空からぶっとい石柱が唖然としている二人に向かって撃ち込まれる。

鈍い音、ぐちゅり、とか湿っぽい音もした気がする。

「あはは!神の国を作るため、ジュエルシードは全てこの現人神、東風谷早苗がいただいていきます!」

常識は投げ捨てるもの、と言わんばかりのいい笑顔でそう叫ぶと宙に投げ出されていたひび割れた二人のデバイス手に取り早苗さんは再び結界をぶち破って暴風とともに去って行った。

なんじゃこりゃあ。

いや、超展開に呆けている場合ではない。

ユーノ君とアルフがぐもっちゅした二人に必死で回復魔法をかけているけど到底間に合うまい。

こうなっては原作も糞もないから放っておいてもいい気もするが。

あの魂をここで終わらせるのは惜しいであろう。

救え。

常人には不可視の高速ダッシュで現場に向かい結界切り裂いて突入、霧を出す。

この霧、魔力を吸収する効果がある様なのだ。

戦闘直後で残留魔力が豊富だからよく集まる。

「誰っ!?」

「ああ、もう次から次へとォ!」

ペット二人が叫ぶ。

「うるさいなあ。ちょっと寝てな」

ユーノ君あっという間に撃沈。

凡人だな。

アルフは何とか耐えている。

「この魔力、いつも覗き見してたのはあんただね!?一体どういうつもりなんだい!」

あ、気付かれてたのか。

いかんなあ。

「夢だ、夢。全ては紅い霧の中。忘れてしまえ」

槍を構えて殺気を出してカリスマ3割増し!

傾世元禳の効果アップ!

糸の切れた人形のようにアルフは倒れる。

アスファルトにぶつかってごちんといい音がしていたがまあ大丈夫だろう。

問題はこちらの二人。

二人とも胴体に御柱?が直撃したようでたぶん内臓とか骨とかぐっちゃぐちゃになっている。

バリアジャケットの耐衝撃機能の許容量を余裕で越えた一撃だったようだ。

とりあえず集めた魔力で回復魔法っぽいものを使ってみよう。

発動体は槍状態からさらに捻じって杖っぽくした傾世元禳。

槍のままでもいいんだけど雰囲気は大事だし。

ええと、呪文、呪文、ベホマ?

「……治れ」

なんか勝手に口が動いた。

治れて。

それでいいのか。

と思ったが二人の体が光に包まれたかと思うと見る見るうちに顔色がよくなり呼吸も安定する。

祈るだけでいいとは。

簡単だなあ魔法。

まあたぶん効率はデバイス使った魔法と比べたら全然なんだろうけど、なにしろこっちは悪魔だし。

文字通り桁違いの魔力を持っているのだ。

そのうえ外部供給も豊富だし。

まあいいや。

とりあえず帰ろう。

これからの方針としてはやっぱり様子見。

あの早苗さんがなんなのかさっぱりわからない。

でももしかしたらボスがプレシアから早苗さんになるだけかもしれない。

しかしジュエルシードを大量に奪ってしかも原作から外れているからこの世界崩壊も十分あり得る。

だからそろそろアースラが来るはずだからなんとか次元跳躍魔法を見て覚えてさっさと安全なところにとんずらしよう。

モウヤダ


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