2011年6月 4日
国歌起立条例成立 現場教員賛否 反対なら政治的な場で主張を/思想統制
大阪府内の公立学校の教職員に対し、式典での国歌斉唱時の起立を義務付ける条例が成立した3日の府議会。「命令に従わない教員はやめてもらう」と、ボルテージを上げる橋下徹知事に、教職員組合などは「思想統制だ」と強く反発した。一方、実際の学校現場では、多くの教員が起立斉唱するようになっており、「思想信条の自由は守られるべきだが、式典では教師個人の気持ちは心にしまうべきだ」と、条例制定を冷静に受け止める声も目立った。
府立高校の男性教諭(32)は「自分の学校でも今春の卒業式で不起立の教員が2、3人いた」と打ち明ける。「スポーツ選手が国際試合などで国を背負って戦うような場合、国歌斉唱時に起立するのは当たり前」と述べたうえで、「学校の式典で立たない先生がいれば、生徒も混乱するのでは。不起立の教師を他の教師は案外、冷めた目で見ています」と話す。
別の府立高校の男性教諭(55)も「思想の自由から反対するのはわかるが、生徒も立って歌っている中で起立しないのはやはりおかしい」と批判。
「条例として呼びかけることでそのような先生も減ってくると思う。国歌斉唱に反対するのならば、もっと政治的な場などで意見を言えばいい」と述べた。
府内の市立小学校の50代の男性教諭は「改めて条例といわれると違和感を持つが、公務員の立場で職務命令に従わないのはおかしいという知事の気持ちもわかる」としたうえで「不毛なことでごちゃごちゃするくらいなら、子供のために粛々とやった(起立して歌った)方がいいというのが現場の感覚だ」と述べた。
府内の市立中学校の校長は「うちの学校では不起立の教員はいないので条例化の影響はない」と話す一方、「もし起立しない教員がいた場合、『校長が条例を盾に職務命令を出す』とより強硬な姿勢を取ることも考えられ、かえって関係は厳しくなるのではないか」と懸念する。
一方、府立高等学校教職員組合などはこの日、「条例制定は公教育への介入で教職員への思想統制」と強く反発した。
元府立学校長で学校現場の国旗・国歌の指導の実態をまとめた「学校の先生が国を滅ぼす」の著者、一止羊大(いちとめよしひろ)さんの話「教職員組合が公然と国旗掲揚や国歌斉唱に反対してきた大阪でこうした条例ができるのは画期的だ。指導を無視する教員を許してはならず、今後は処分基準を明確化した条例の制定にも期待したい」
「パフォーマンス」平松市長
大阪府議会で「条例による義務付けは必要ない」と答弁していた中西正人教育長は可決後、報道陣に対し「議会の判断として制定されたので重く受け止める」と述べる一方、「現段階では、条例違反をもってただちに懲戒処分することまでは考えていない」と話した。
また、大阪市の平松邦夫市長は3日の定例会見で「大阪市ではすべて起立して国歌斉唱が行われ、何ら問題はない。あえて条例化する必要がないものを、数の力で(可決)できるというパフォーマンスにつなげている」と指摘。「数こそ力なりといっている方ならではのやり方で、ある意味危機感を感じる」と橋下知事を批判した。
高校生「先生が座ったまま…嫌な思い」
国旗国歌条例をめぐる大阪府議会の議論を、大阪の高校生たちはどのように受け止めたのか。街で意見を聞いた。
大阪府立高1年の女子生徒(16)は「今はサッカーの試合を見ても、選手たちが肩を組んでしっかりと歌い、尊重しているので違和感はない。決まったのであれば、先生たちも従うべきだ」。大阪市内の私立高2年の女子生徒(16)も「国歌斉唱時に先生が座ったままで、嫌な思いをしたことがあった。国歌には敬意を払うべきだし、教育現場でその意味を伝えてほしい」と話した。
大阪府枚方市の私立高2年の男子生徒(17)も「国歌が流れるのは厳粛で大切な場面。立たないのはおかしい」と力を込める。
一方、大阪市立高2年の男子生徒(16)は「国歌を大切に思うのかどうかはそれぞれの価値観。大事に思っている人もいるだろうし、そうではない人もいる。それを無理やり条例化して立たせるやり方はおかしいと思う」と語った。
【写真説明】国歌斉唱時に起立を義務づける条例案を可決した大阪府議会=3日午後7時32分、大阪市中央区(門井聡撮影)
(2011年6月 4日 08:15)
Category:社会
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