2011年6月2日 15時0分
東日本大震災の津波に襲われた宮城県中部の沿岸部で、ヒ素化合物など3種類の有害物質が最大で国の基準の2.2倍検出されたことが、神戸大の飯塚敦教授(地盤工学)らの調査で分かった。震災の津波による土壌汚染の実態が判明するのは初めて。石油コンビナートや化学工場などの近くで値が高く、浸水地で作業する際はマスクや手袋での防御が必要だ。環境省も土壌汚染状況の緊急調査を予定している。
飯塚教授らは4月下旬から、仙台市や石巻市など同県内約10カ所で土壌を採取し、土壌汚染対策法に定められた特定有害物質の溶出量と含有量を分析した。値が高かった石巻港の石油コンビナート近くでは、ヒ素・フッ素・ホウ素化合物のいずれも基準値を超過。石巻市渡波地区や名取市閖上(ゆりあげ)地区でもヒ素化合物の値がわずかに超えた。鉛やその化合物なども、基準値は下回ったものの広い範囲で検出された。有害物質が地下水に流出する危険が増すとされる基準値の10倍には達していないが、「乾燥した粉末を吸い込まない対策が必要だ」と指摘する。
飯塚教授は「調査地点以外にも有害物質が大量に集積した場所があるかもしれない。復旧後の土地利用を決める前に被災地全体の汚染状況を調べる必要がある」と話している。
環境省は6月中に、岩手・宮城・福島の3県の数十カ所で土壌中の特定有害物質やダイオキシン類の量を緊急調査する予定。【林田七恵】