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千葉・松戸の自殺偽装殺人:改姓、2度強要か 成り済ましの発覚恐れ

 千葉県松戸市の会社員、阿曽久好さん(当時52歳)を自殺に見せかけて殺害し、保険金を詐取したとして逮捕された元会社経営、西村豊容疑者(56)が、2度にわたって阿曽さんの姓を変えさせていたことが、警視庁と千葉県警の合同捜査本部の調べで分かった。捜査本部は、改姓した阿曽さんの戸籍を使って本人に成り済ましていた西村容疑者が、殺害後に戸籍の不正使用が発覚するのを恐れ、事前に再び姓を変えさせたとみている。

 捜査本部によると、西村容疑者は03年11月、自分に掛けた保険金をだまし取る目的で死亡届を提出し、戸籍を失った。この事件で10年5月に詐欺容疑で逮捕され、実刑が確定している。

 一方、阿曽さんは06年1月、西村容疑者が経営していた合鍵製造会社に入社した。当時は「小島」姓だったが、西村容疑者は8カ月後、阿曽さんを結婚させて「高橋」姓に変えさせ、社内では「吉田誠」と名乗らせたという。

 戸籍を失っていた西村容疑者はこの直後、自分の顔写真を張った「高橋久好」名義の運転免許証を不正に取得。さらに07年11月、免許証を使って阿曽さんに成り済まし、会社を受取人とする生命保険契約を結んだ。08年12月には阿曽さんを再婚させ、「高橋」姓から「阿曽」姓に変えさせた上で、5カ月後に殺害したとされる。

 捜査本部は、「高橋」姓のまま殺害すれば成り済ましが露見すると恐れた西村容疑者が、再度の改姓を指示したとみている。阿曽さんは1人暮らしで、2度の結婚とも西村容疑者の偽装だった疑いが強いという。

 また、阿曽さんの部屋から発見された遺書のような自筆メモには「責任をとる」という内容が書かれていたことが分かった。捜査本部は、阿曽さんに金を貸していた西村容疑者らが借金の責任をとるよう迫り、自殺の遺書に見えるメモを書かせたとみている。【山本太一、内橋寿明、小泉大士】

毎日新聞 2011年5月23日 東京朝刊

 

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