ジャーナリストの田原総一朗氏の発言で精神的苦痛を受けたとして、北朝鮮による拉致被害者、有本恵子さんの両親=神戸市長田区=が1千万円の慰謝料を求めた訴訟の第8回公判が3日、神戸地裁(長井浩一裁判長)であり、田原氏と両親への本人尋問があった。田原氏は、両親に「発言は乱暴だった」と謝罪したが、「発言は外務省の認識を話したもので事実だ」と主張した。
田原氏は2009年4月のテレビ番組で、拉致被害者について「外務省も生きていないことは分かっている」と発言。公判では「北朝鮮と交渉していないのに、しているふりをする日本政府への批判のつもりだった」と振り返った。
被害者の生死について、自身は「分からない」とし、「生きてない」という言葉も「外務省から直接は聞いていない」と説明。一方で「北朝鮮高官などへの取材を踏まえ、外務省の認識を指摘したもので、発言は誤りではない」と主張した。
恵子さんの母嘉代子さん(85)は「日本政府は誤りだと言っている。子を持つ親の気持ちを考えればできない発言だ」などと訴えた。
公判後、報道陣の取材に応じた田原氏は「有本さんに直接詳しくお話できて良かった。私が言葉足らずだった。思いが伝わることを願いたい」と話した。一方、会見に臨んだ恵子さんの父明弘さん(82)は、田原氏を「説明がちぐはぐで、本当のことを言っているとは思えない」と批判した。
(2011/06/03 20:53)
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