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ソニー個人情報流出:事態収束見えず 映画子会社でも疑い、経営に打撃

 ソニーのゲームなどの配信サービス「プレイステーション・ネットワーク(PSN)」と、テレビなどに映像・音楽を配信するサービス「キュリオシティ」などから1億人を超す個人情報が流出した問題は、発覚から1カ月半たっても事態収束が見えない。2日(米東部時間)には米下院エネルギー・商業委員会の公聴会が開かれ、ソニーの情報開示の遅れに厳しい批判が相次いだ。新たに米映画子会社で100万人分の個人情報がハッカー集団に盗まれた疑いも浮上し、ネットワーク事業を成長の柱に据えるソニーの経営に大きな打撃を及ぼしかねない状況だ。【竹地広憲】

 2日の米下院エネルギー・商業委員会の商業・製造業・貿易小委員会の公聴会には、米ソニー・ネットワークエンタテインメント(SNE)のティム・シャーフ社長が出席。クレジットカード番号なども含む個人の重要情報が流出した可能性をソニーが4月中旬に知りながら、情報開示までに1週間もかかったことに厳しい批判が集中した。シャーフ社長は「不確実な情報を顧客に伝えることは逆に無責任」と、被害の公表は適切なタイミングだったと反論。同小委がソニー関係者の新たな招致を予定していないことなどから、米国内では「事態は沈静化に向かうのでは」との見方もある。

 しかし同じ2日、「ラルズセック」と名乗るハッカー集団が自身のウェブサイトで、米映画大手ソニー・ピクチャーズエンタテインメントから「100万人分のメールアドレスや住所などを盗んだ」と表明。ソニーは同社サイトの一部登録手続きを停止し調査に乗り出すなど、問題は拡大する様相も見せている。

 さらに米国では一部のユーザーがソニーに対し損害賠償を求めて集団訴訟を起こす動きもあり、ソニーがドル箱と期待する米国でのネットビジネスの正常化は見通せていない。

 ソニーの情報流出をめぐっては、国際的なハッカー集団「アノニマス」の関与が取りざたされてきた。ソニーが以前に、ゲーム機の機密情報を解読して公開した著名ハッカーを提訴。これをきっかけに、アノニマスから執拗(しつよう)な攻撃を受けていたからだ。アノニマスは今回の個人情報流出への関与を否定するが、真相はやぶの中だ。

 ソニーは「ハッカー攻撃の被害者」とも強調するが、業界では情報セキュリティー対策の甘さを指摘する声が多い。顧客情報管理ソフトの脆弱(ぜいじゃく)性に十分対処していなかった上、情報を流出させた米子会社に情報管理の責任者を置いていなかったからだ。

 事件後にサービスを停止したPSNとキュリオシティは、欧米では全面再開されたが、日本では関係省庁との調整が続き、当初5月中とした全面再開の時期が未定のままだ。

 ソニーはゲームや映像などの配信サービスの普及でネットテレビやゲーム機の販売も拡大する「ハードとソフトの融合」を目指してきた。ハワード・ストリンガー会長兼最高経営責任者(CEO)は「オンライン事業は極めて重要」と語るが、不安感から顧客離れが進めばハードの販売も落ち込む悪循環に陥りかねない。

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 ◇ソニーの個人情報の大量流出をめぐる経緯◇

※4月17~19日 米子会社がハッカー攻撃を受け、約7700万人分の個人情報が流出

   21日    PSNとキュリオシティのサービス停止

  ※29日    米下院委員会がソニーに情報開示の遅れなどをただす質問状を送付

 5月 1日    ソニーが情報流出について初めて会見し、再発防止策を公表

    3日    別の米子会社が不正侵入を受け、約2460万人分の個人情報が流出と発表

  ※15日    ネット配信サービスの一部を欧米(米国は14日)で再開

  ※17日    米下院委が最新の調査結果を尋ねる追加質問状を送付

   24日    ギリシャ現地法人のサイトに不正侵入、約8500人の個人情報が流出と発表

   25日    カナダ現地法人のサイトに不正侵入、約2000人の個人情報が流出と発表

   27日    経済産業省がソニー・コンピュータエンタテインメントに行政指導

   28日    ネット配信サービスの一部を日本やアジアで再開

 6月 2日    ネット配信サービスを欧米などで全面再開したと発表、日本での全面再開は未定

  ※ 2日    米下院公聴会にソニー幹部が初出席し、情報開示遅れの批判に反論

 ※は現地時間

毎日新聞 2011年6月4日 東京朝刊

 

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