円安:メリット限定的 震災復興に影響も

2011年4月6日 20時33分 更新:4月6日 21時37分

 外国為替市場で円安基調が鮮明になっている。6日の東京市場の円相場は一時、前日午後5時比1円19銭円安・ドル高の1ドル=85円53銭と昨年9月以来、約半年ぶりの円安水準となった。東日本大震災直後の急激な円高から一転し、米欧の金利上昇による金利差の拡大から市場が円売りの動きを強めていることが背景にある。【赤間清広、谷川貴史】

 円相場は震災直後、「日本企業が復興資金確保のため海外資産を売却する」との思惑から円高が進み、3月17日には過去最高値の1ドル=76円25銭をつけた。しかし、先進7カ国(G7)が協調介入に踏み切った18日以降は急激な変動も収まり、市場の関心は目下、日米の金利差拡大に集まっている。

 5日に公表された3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で、連邦準備制度理事会(FRB)が米景気の回復見通しを強めていることが確認され、市場に「FRBが金融緩和策の縮小に動く」との観測が広がり、長期金利が上昇した。欧州中央銀行(ECB)も7日の理事会で利上げに踏み切るとの観測が強い。

 ◇「90円台」の見方も

 対照的に、震災被害の影響が広がる日本経済は停滞が避けられず、日銀は6、7日の金融政策決定会合で景気判断を引き下げ、金融緩和策を粘り強く続けていく方針を確認するとみられる。このため、より金利の高い通貨での運用を目指す投機筋が円を売り、ドル・ユーロを買う動きを強めている。

 金利差拡大を背景にした円安基調は当面、続くとみられ、市場では「年末にかけて1ドル=90円台まで下落する」(みずほ証券)との見方も出ている。

 ◇輸入価格上昇に拍車

 円安は輸出企業にとっては有利に働くことで日本経済にプラスになるが、行き過ぎた円安は資源や原材料などの輸入価格の上昇につながり、東日本大震災からの復興にも影響を与える恐れがある。

 昨年夏以降、異常気象や新興国の需要拡大などで穀物などの食料価格が高騰。また、中東の政情不安を受けて、原油は米国産標準油種(WTI)5月渡しの4日終値が1バレル=108.47ドルと、2年半ぶりの高値を記録した。これまでは円高がこれらの輸入価格の高騰を緩和してきたが、円安は逆に価格上昇に拍車をかけ、家計や企業にとって打撃となる。

 特に、福島第1原発の事故を受けて東京電力などが原発の代替となる火力発電の整備を急いでいるが、燃料高が発電コストを高め、電気料金に転嫁せざるを得ない事態も想定される。

 ◇工場被災で輸出減少

 一方、円安は輸出企業の価格競争力を高める効果があるものの、当面は工場の被災などで生産が落ち込み、輸出も減少する見通し。政府内では「原発事故の影響により、海外では日本の商品を避ける動きがあり、円安メリットは従来より限定される」(経済官庁幹部)との見方も出ている。

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