このなかでも注目されるのは、想定価格が100億円を上回る7物件。先の新橋駅前3物件のほかに最初に目を引くのは、三田中学校仮校舎跡地(港区三田)だ。
場所はJR山手線の田町駅から徒歩10分足らずで、その隣には日本板硝子など多くの大企業がオフィスを構える住友不動産三田ツインビルがそびえ立つなど、オフィスビルにはもってこいの立地。しかも1万3000平方メートルと、とにかく広い。
さらに、残る校舎の解体費用は「港区が負担する条件」(港区企画経営部)になっているというから至れり尽くせりの物件だ。むろん想定価格は300億円とずば抜けて高い。想定価格こそ28億円と高くはないが、東京・銀座のど真ん中にある旧テプコ銀座館も再開発ビジネスの“台風の目”だ。
ここは百貨店の松坂屋が進めている再開発地域の一角。不動産会社がここを取得して再開発の一員として食い込めば、ビル管理で管理料を取り続けることができる「おいしいビジネス」(不動産会社幹部)になるわけだ。 このほか、104億円の芝浦アークビルや銀座のG-7ビルディングといった優良賃貸オフィスに加え、賃貸住宅、老人ホームなどが売却候補として挙げられる。
もっとも、これらの物件に興味はあるものの、「現状では皆、手を出すのを怖がっている」(不動産業界関係者)のも事実。「かんぽの宿を買い叩いたオリックスが世間の批判を浴びたから、賠償責任を負っている東電の物件を買い叩けばなおさら」(同)だからだ。
そのため国民の納得を得るという意味では、物件をひとまとめにして安く売却するバルク形式ではなく、1件ずつ入札を行う可能性も高く、売却価格は想定よりさらに高額になるかもしれない。
だとすれば、不動産購入目的に対する銀行融資の審査の厳しさも相まって、買い手に名乗りを上げるのは資金力のある大手不動産のほか、商社、生命保険、ゼネコン、銀行、ファンドや外資勢など50社程度と見られる。
このリストに含まれる物件以外にも、「まだまだ優良不動産を保有している」(政府筋)との見方も残る。とりわけ未上場子会社の東電不動産が保有する物件は「ここにあるものがすべてではない」(同)という。東電が迫られるリストラは、稀に見る優良物件の一斉放出という視点に立てば、不動産会社など買い手にとって千載一遇の好機となるのは間違いない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史、小島健志)