東日本大震災:裁判員裁判 候補者に通知できず再開不透明

2011年4月6日 10時47分

 東日本大震災の被災地で、裁判員裁判を再開する見通しが立っていない。裁判所が地元の裁判員候補者を呼び出せる状況にないためだ。震災を理由に裁判官だけの裁判に変更することは法律上できないため、被災地の各地裁は、県外に被告を移すことや管内の被害のない地域の候補者だけを呼び出したりする方法を模索しているが、難点もあり、打開策を見いだすのは容易ではなさそうだ。

 裁判員候補者は管内の有権者から無作為の抽選で選ばれる。候補者が決まると、裁判所は呼び出し通知を発送するが、震災で多くの住民が避難したり、不自由な生活を強いられているとみられることから、手続きを進められないでいる。

 最高裁によると、3月31日時点で、岩手、宮城、福島、茨城4県の4地裁1支部で地震発生後に延期された裁判員裁判の選任手続きは8件。公判は2件中断された。4地裁1支部では年間計100件近い裁判員裁判が行われるが、今後も既に指定された裁判員裁判の期日が取り消されるおそれがある。福島地裁郡山支部では裁判員用法廷の天井がはがれ落ち、公判が開けないという。

 被災地の地裁本庁では、4日からプロの裁判官だけで審理される裁判がほぼ通常通り開かれるようになった。だが、震災を理由に裁判員裁判を裁判官だけの裁判に切り替えるには法改正が必要となる。裁判員法で切り替えが認められるのは、被告が暴力団組員のケースなど「裁判員に危害が及ぶ可能性がある」場合だけだからだ。

 被告を被災していない県外の裁判所に移して裁判を開くことは不可能ではない。だが、ある最高裁事務総局の幹部は「裁判員の方々が他県の事件の審理を受け入れてくれるだろうか」と心配する。裁判長の判断で管内の被害がない地域の候補者だけに呼び出し状を送ることも考えられるが、どこで線引きするのかという判断は難しいという声もある。

 勾留中の被告の裁判が開かれない状態が続くと、推定無罪の状態で身柄拘束が長引くうえ、証人らの記憶が薄れて再開後の審理に支障をきたすことも考えられる。別の幹部は「市民あってこその裁判員裁判。なんとか国民に理解を得られる形で再開を」と話している。【伊藤一郎】

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