富士通は3月の東日本大震災で被災した福島県のデスクトップパソコン生産ラインをわずか10日間で島根県の工場に移管した。通常2週間以上かかる新ラインの立ち上げを3割以上短縮できた計算だ。準備してあった事業継続計画(BCP)の成果ともいえるが、ライン移転によってもう一つ重要なことが浮き彫りになった。アジアなど海外に比べてどうしてもコスト高になる国内でパソコン生産の最大のテーマである「ムダの排除」を実現する道筋が見えてきたのだ。
被災した富士通アイソテック(福島県伊達市)は1日当たりデスクトップパソコンを約5000台、パソコン用サーバーを約450台生産していた。このうち、優先度が高い半分程度のデスクトップの生産をノートパソコン工場である島根富士通(島根県斐川町)に移すことを決定したのは震災2日後の3月13日。移管作業は23日に終えた。
福島と島根の拠点が被災した際の代替生産については、2009年に作成したパソコン事業のBCPに盛り込まれていた。移管までの各拠点の役割分担や作業手順などが詳細に記載された文書は紙とデジタルデータで保存。09年と10年にそれぞれ2回も工場被災を想定した生産移管の訓練を実施してきた。
「通常、デスクトップパソコンの生産ラインの立ち上げは2週間かかる。それが10日間で完了した。社員が一丸となれば想定外の力が出るものだ」。富士通でパーソナルビジネス本部長を務める斎藤邦彰執行役員は、社員の献身的な働きをたたえる。日ごろの備えが周到だったために混乱は少なく、成果は期待を上回った。
「力の源泉は“ハングリー精神”」。斎藤執行役員はこう分析する。富士通はノートパソコンの9割を国内で生産している。多くの競合企業がコストを下げるために中国や台湾の企業に生産委託しているのとは対照的だ。「中国からのコストプレッシャーを受けながら、毎年10%のコストダウンを続けてきた。貪欲なコスト削減への取り組みが今回の大震災でも生きた」(同執行役員)というのだ。
当然、実際の移管作業では予想外の事態も起きる。本来なら震災当日に移管を決定しなければならないが、被災状況を把握できず、社員の安否確認などを優先したため、「BCP発動」は遅れた。生産移管の支援チームは福島と島根の両拠点のメンバーで編成することになっていたが、実際、福島からは1人しか派遣できなかった。こうした事態は神奈川県の事業所からパソコン生産に詳しい人材を派遣し、乗り切った。
デスクトップとノート型の根本的な違いを見過ごしていた点もあった。デスクトップを検査をする際にはACコンセントが必要だが、バッテリーを搭載するノート型はいらない。ノート型しか生産していない島根のラインは、デスクトップ型の検査に対応していなかった。これに現場作業者がすばやく気付き、慌ててスーパーでACコンセントなどを購入したという。
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