小沢系“倒閣”決起110人 ガールズも!どん菅政治を猛烈批判

★根回しなし…TPP交渉参加は思いつきだ!

2010.10.22


21日のTPP緊急集会は、鳩山由紀夫前首相(中央奥)ら小沢系議員でぎっしり。交渉開始に意欲を燃やす菅直人首相へ反撃開始だ【拡大】

 民主党の小沢一郎元代表(68)系議員が、政策を軸に菅直人首相(64)への逆襲を始めた。飛び道具として着目したのが、日本の農業に打撃必至な環太平洋パートナーシップ(TPP)の交渉参加問題だ。21日の反対集会には、鳩山由紀夫前首相(63)や小沢ガールズら約110人が結集。政策的裏付けや根回し抜きに交渉開始を宣言した菅首相の足下を見透かす形での“宣戦布告”なだけに、党内では「倒閣運動になる可能性もある」(中堅)との危機感も出ている。

 「こりゃ皆さん、党内政局じゃないよ!これは国益の問題だ!」。21日夕に開催された「TPPを慎重に考える会」の冒頭、「反小沢系」の渡部恒三元衆院副議長(78)はこう力を込めたが、パラパラの拍手が逆にむなしさをあおりたてた。

 会長には菅改造内閣でお役御免になった山田正彦前農水相(68)、幹事長は鳩山グループの松野頼久前官房副長官(50)が就任。会場は、鳩山氏や山岡賢次副代表(67)のほか、「小沢ガールズ」の三宅雪子(45)、福田衣里子(29)両衆院議員ら小沢系議員で埋まった。

 鳩山氏は「(小沢系の)松木謙公衆院議員(51)が『てーへんだ!てーへんだ親分!』と来られたので参加した」と語りながら、「むやみやたらと関税を撤廃していい話にならない」と批判。山田氏も「菅首相が突然TPP参加といわれ、大変心配している」と独走ぶりを糾弾した。

 さらに、国民新党の亀井静香代表(73)も助っ人で参加し「TPPかPTAか知らないが、総理が参加を決めるなら、われわれは吹けば飛ぶような政党だが、事前に協議いただくのが仁義でないか」と、菅官邸の根回しの無さを猛批判。

 最終的に「拙速な参加表明には大きな懸念を表明する」との緊急決議を採択し、会合は大いに盛り上がった。

 TPPは米国やシンガポールなど9カ国が参加する予定で、「例外なき関税撤廃」が目標だ。最近、韓国が米国やEUとFTA(自由貿易協定)を締結して輸出を飛躍的に伸ばしており、円高不況に悩む日本企業は、「この機会を逃せば他国から大きく遅れる」(米倉弘昌日本経団連会長)とTPP参加を熱望している。

 こうした声に押されたのか、菅首相は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)までに、TPPの交渉参加へメドをつけたい考えだ。21日の「新成長戦略実現会議」でも、全国農協中央会(JA)の茂木守会長が反対論を唱える中、「これから黒船の意味を多くの国民にしっかり理解してもらう」と交渉開始に意欲を燃やした。

 ただ、TPPに参加するには手厚い農業保護政策も用意しなければならないはずだが、菅首相が根回しや農業対策を議論せず、唐突に交渉推進を打ち出した感は否めない。

 ある小沢系議員は「菅首相が1日、衆院の所信表明演説で(TPPに)意欲を示し、腰が抜けるほど驚いた」と指摘。農家への戸別所得保障制度も米価下落を招くなど、矛盾点が噴き出しているだけに、「消費税のときと同様、何も考えずに思いつきで表明したのだろう。正面突破を図ろうとして挫折する病気の再発だ」と切り捨てる。

 また、小沢系の民主党関係者は「対策なしにTPPに参加すれば、安い農産物が大量に輸入され、日本農業は壊滅する。選挙では農業票はまだまだ大きなウエートを占めるだけに、この問題は反小沢に傾いていた議員も取り込むことが出来る」と皮算用をはじく。

 実際、小沢氏に対する「起訴相当」議決以降、小沢系議員の求心力は弱まる一方だった。小沢氏直系議員による「一新会」は19日、9月の民主党代表選で集めた200人を再結集させる「拡大路線」を狙い、小沢氏を講師にした勉強会開催を模索したが、肝心の小沢氏との調整がつかずに頓挫。若手の「一新会倶楽部」や参院の小沢系議員を集めた大規模集会は見送られた。

 小沢氏に忠誠を誓ったはずの衆院1回生議員にも、前原グループなど菅政権サイドに取り込まれる動きがあり、八方ふさがりになりつつあった。

 こうしたなか「天からの恵み」(一新会関係者)となったTPP問題。仮に菅首相がこれを乗り切ったとしても、今後、年末の2011年度予算編成に向け、政権公約(マニフェスト)の見直しなど、「菅vs小沢」の路線対立が再燃する政策課題はひっきりなしだ。

 反小沢系の民主党中堅も「都市部出身の菅首相には理解できないかもしれないが、農業問題は根深い対立軸となる」と懸念するが、この「110人」が倒閣に向け再始動するのか。

 

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