やあ、俺クララ。
苗字はない、平民には苗字は無いらしい。
だから俺も苗字無しだ。
なんで自分のことを「俺」って呼んでるかって?
実は俺、前世の記憶があるんだ。
いわゆる転生系ってやつだな。
俺も前世でそういう2次創作とかよく読んでたけど、まさか自分が体験することになるとは思わなかった。
さすがに最低系ではなかったから、チート能力とかは無さそうだけど。
ちなみに前世の名前は相川翔太で、もちろん男だ。
そうでなきゃ自分のことを「俺」なんて呼ばないね。
俺っ娘は趣味じゃなかったんだが、まさか自分がなるとは…。
そうだ、家族について説明しようか。
まず父ちゃん。
父ちゃんの容姿は…、可も無く不可も無くってとこかな。
典型的なコントラート人の髪と目で、実は頬に薄い傷があるんだ。
父ちゃんは否定するけど、爺ちゃんにそっくりなんだ。
爺ちゃんも父ちゃんと同じ濃い目の茶髪にこげ茶の目、でも背は少しだけ爺ちゃんのほうが高い。
婆ちゃんは二人よりも明るい茶色の髪に鳶色の目。
笑顔がとっても優しくて、いつもやわらかく頭をなでてくれるんだ。
あと、婆ちゃんはすごく料理がうまい。
材料や調味料なんかは、現代日本で暮らしてた身としては鼻で笑ってしまうレベルでしかないのに、なぜか絶品の料理を作り出すんだ。
そして1歳になる妹のマリア。
俺が母ちゃん似で、マリーは父ちゃん似。
父ちゃん譲りの顔立ちと、婆ちゃんそっくりの鳶色の目なんだ。
生まれてすぐは皺くちゃで猿みたいだったけど、いまでは「ねーた、ねーた!」って言いながら俺の後をついてくるようになってむちゃくちゃ可愛い。
俺は超絶可愛いこの妹を、大事に大事にしていくつもりだ。
最後に母ちゃん。
母ちゃんを一言で表すなら、「美少女」の一言に尽きるね。
金髪碧眼の超美少女。
系統でいうなら、美人系というより可愛い系だと思う。
たぶん、街を歩かせたら10人中7人か8人は振り返るんじゃないかな。
本人は22歳だって言い張ってるけど、もっと若いんじゃないかと俺は思ってる。
十代でも通るね、あれは。だから美「少女」
まあ、母ちゃんは自分が童顔なのを気にしてるから面と向かっては言わないけど。
そういえば前に爺ちゃんが教えてくれたんだけど、母ちゃんの家系は巫女の一族だったらしい、でも母ちゃんの曾婆ちゃんがめちゃくちゃ美人で、皇帝が無理矢理王宮付きにしてしまったんだそうだ。
だから実は母ちゃんは帝国貴族なんだと。
それがなんでこんな田舎の、冴えない村人A(父ちゃん)と結婚したんだろうね~。
そうだ、モルのことも紹介しなくちゃ。
モルは母ちゃんの使い魔で、その正体は白竜の成体なんだ。
1回だけ変身してくれたんだけど、体中が光り輝いててめちゃくちゃカッコよかった。
自分の好きな姿に変身できる特殊能力を持っていて、普段は母ちゃんが疲れないように十歳ぐらいの男の子の姿をしてる。
なんで男の子なのか聞こうとしたら、母ちゃんが真っ赤になってモルの口を押さえたから結局聞いてない。
今度母ちゃんがいないときに聞いてみよう。
俺の姿か?俺の姿は母ちゃんに瓜二つなんだぜ。
まさしく妖精だね。
…自画自賛するなってか?
少しぐらい許してくれよ、こちとら何の因果か幼女に転生して動転してるんだから。
カワイク生まれたことを喜ぶくらい、いいよな。……ハァ…OTL
―― ――
「クララー?もうすぐご飯だから、お絵かきはおしまいにしましょうね」
「はい、母さま。でも母さま、絵ではなくて日記ですっ」
「ふふっ、日記は読めるように書くものよ?私のまねっこはいいけど、まず字を書けるようになりましょうね」
「…はぁい」(くそぅ、俺は日本人だ。英語もコントラート語も苦手なんだよ)
「うふふ。じゃあ、お父さん達を呼んできてくれるかしら?」
「はい、お婆さま」
こうしていつものように俺の1日は過ぎていくのだった。