日本の政局のタイミングの悪さは比類がない。
2日の衆議院本会議で、自民、公明など野党が提出した菅内閣に対する不信任決議案は反対多数で否決された。その間に、東日本大震災からの復興のための第2次補正予算などに使われるはずだった貴重な時間やエネルギーが浪費されてしまった。
不信任決議案の可決された場合の当然の成り行きである首相交代によっても、大きな変化は起きなかっただろう。少なくとも、可決された場合に比べれば混乱は大きくならないだろう。
菅直人首相は、復興基本法案が成立し福島第1原発事故が収束するめどがつけば退陣すると表明することで、どうにか不信任決議を免れることができた。これにより、2、3カ月間の政治空白を招来する解散・総選挙という最悪のシナリオを回避した。
それでも、菅氏の求心力は大きく低下し、財政再建や環太平洋連携協定(TPP)の推進といった、日本政府が何年にもわたって無視してきた難問に取り組むのが難しくなった。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは31日、日本の格付けを引き下げ方向で見直すことを明らかにし、その主因として日本の政治の不安定性を指摘した。
実際のところ、菅氏が近く退陣することになれば、日本は在任5年に及んだ小泉純一郎氏が退任した2006年以降、毎年首相が交代することになる。これは、与野党ともに維持しようとしている回転ドアである。
では、首相の座をめぐる闘いはどうなるのか。与党の首相候補の大半はそれぞれ強みを持ち、経済政策でもそれなりの違いがある。だが、菅氏を明らかにしのいでいるといえる人物は誰もいない。さらに言えば、過去半世紀にわたって日本を支配してきた野党自民党にこそ、日本の抱える根深い問題を深刻化させた大半の責任がある。
日本は、首相の「365日間の任期」を取り払う時期がとっくに来ている。
[ハード・オン・ザ・ストリート(Heard on the Street)は1960年代から続く全米のビジネス・リーダー必読のWSJ定番コラム。2008年のリニューアルでアメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に 駐在する10人以上の記者が加わり、グローバルな取材力をさらに強化。刻々と変わる世界市場の動きをWSJ日本版でもスピーディーに紹介していく]