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荒茶規制 茶農家に危機感

2011年06月03日

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富士市内の茶畑

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静岡県内産の荒茶

 「荒茶も検査対象とする」。厚生労働省は2日、懸案となっていたお茶に含まれる放射性物質の検査方法で新たな方針を示した。県は今後、国の説明を聞いた上で最終的な対応を決めるが、「県の茶農家がつぶれかねない」と生産者には危機感が強まっている。

 「私は本県のお茶の『声なき声』が、体中を通して聞こえてくる。何てむちゃなことをさせるのだと」

 厚労省が正式発表する前、川勝平太知事はそんな表現で厚労省の判断を批判し、荒茶の検査は「する必要ない」と言った。

 川勝知事は、生茶や飲料茶の検査で基準値を下回っている点を強調。「荒茶は半製品ですから、それ自体を人が口にすることはない」と、荒茶を対象にすることに疑問を投げかけた。 厚労省の決定については「議論の中身をすべて公表すべきだ。何を議論したのか。全部公開するべきだ」とし、厚労省に説明を求めていく姿勢をみせた。

 しかし、厚労省の正式発表後に、茶業農産課の職員らが情報確認した午後8時過ぎ、知事は「厚労省から生茶葉で500ベクレルを下回っている地方公共団体の検査については、個別に協議するとの連絡も受けている。したがって、お茶の検査等については今後、国と協議をし、判断して参りたい」とのコメントを発表。 県の対応もまだ定まっていない。

 ■損害出れば補償要求

 沼津市西沢田のお茶農家で、JAなんすん荒茶共販委員会委員長の宮代雄一さん(70)は、川勝知事が「安全宣言」をしたのに、今頃になってまた荒茶まで検査しろと国が言ってきたことに納得がいかないという。

 「もし基準に引っかかり、出荷できなくなったりしたら大変なこと。補償してもらえばいいということではない。今後の静岡茶の存立にかかわる。若い生産農家はどうやって生きていけばいいのか」。不安がつきない。

 静岡市清水区布沢、お茶生産農家片平正世さん(66)は、「口に入れる飲用茶で規制値を下回ったのだから、安全は証明されたはずではなかったのか」と、荒茶を対象とする国の決定に疑問を投げかける。

 「農家は、なるべく農薬を使わないようにし、生産履歴も明示してきた。もし出荷停止などの事態になれば廃業をせざるを得ない。茶の売れ行きが低迷して生産農家が減っている今、そんなことになれば茶産業の将来が不安だ」とも話す。

 お茶の産地・島田市の桜井勝郎市長は5月19日付で、「荒茶は食べるものではないので、規制の対象にすべきではない」として、厚労相あてに抗議文を出していたが、聞き入れてもらえなかった。

 市は今後、生茶、荒茶、飲用茶とも検査して公表するという。規制値を超えて出荷制限などの損害が出るようなことがあった場合について、桜井市長は「原発事故との因果関係がはっきりすれば、東京電力に補償を求めることになるだろう」という。

 ■「より安心」「気にせず」消費者

 静岡市葵区の製茶卸業店主(52)は、「非常に理不尽。お茶もタマネギもキャベツもみんな1キロというのがおかしい」と納得がいかない。「キャベツの100グラムはあっという間だけど、茶100グラムは飲んだら50杯にもなる。茶は食べない。茶殻は捨てる。同じレベルで考えるのはおかしい」

 沼津市の無職長倉金吾さん(76)は、「口に入れるものだから、しっかり調べてもらう方が安心できる」との考えだ。孫や子どもたちも飲むので、慎重な姿勢になるのは仕方がないと思っている。

 茶葉を買いに来た同区の女性(42)は「荒茶だと数値が高くなると言うけれど、あまり気にしていない。今まで調べたことがないのだから、数値は比較しようがないと思う。飲む段階で大丈夫なら問題ないのでは」と話した。

 

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