首相辞任時期めぐり与野党に波紋、閣内からも「わかりづらい」

2011年 06月 3日 17:39 JST
 
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 [東京 3日 ロイター] 菅直人首相の2日の辞意表明について、そのタイミングをめぐって与野党内に波紋が広がっている。3日午後の参院予算委員会では、野党が辞任時期について追及したが、首相は明言を避け、辞任の意思についても明確にしなかった。

 閣内からも、首相の説明はわかりづらいとの声が出ている。内閣不信任決議案の否決と引き換えにした辞意表明が、首相を一段と追い詰めている。

 「代議士会での発言の通り。素直に理解してもらえれば、私の心情がわかる」--。予算委員会で自民党の山本一太委員から再三、辞任のタイミングを質され、菅首相は代議士会での発言がすべてと繰り返した。2日昼過ぎに開催された民主党の代議士会で菅首相は、東日本大震災の復旧・復興と福島第1原子力発電所事故の収束に「一定のメド」がついた段階で「若い世代に責任を引き継ぎたい」と辞意を表明した。

 「一定のメド」について、代議士会前に首相と会談し、辞任を迫った鳩山由紀夫前首相は、2011年度第2次補正予算の編成時で首相と合意したと語ったが、同席した岡田克也幹事長が2次補正編成は辞任の条件ではないと否定。菅首相は2日夜の会見で原発事故収束のメドについて「冷温停止状態」を挙げて年内の続投を示唆。3日の予算委員会では「私の認識は岡田幹事長と同じだ」と述べ、早期辞任の意思がないことを明確にした。こうした首相の対応に対し、鳩山前首相は同日、「約束したことを守るのは当たり前。それができないのはペテン師」と痛烈に批判した。

 3日の閣議後の会見では、多くの閣僚が首相発言に言及。与謝野馨経済財政担当相は「総理が職にとどまろうとする努力は、政治家として当たり前。何らコメントに値しない」と理解を示すとともに、首相の辞任についても「そんな話はどこにも出ていない。菅内閣が続くことを前提に仕事をやっていきたい」と語った。

 一方、共同通信によると、松本龍防災担当・環境相は首相の辞任時期について「6月いっぱい」との見方を示し、復旧・復興を急がないといけないということから言えば、一日も早く退陣した方がいいとの文脈になる」と早期退陣に言及した。首相の補佐役である枝野幸男官房長官は、辞任時期をめぐって鳩山前首相らと認識に違いがあることが「国民に心配をかけている」とし、首相が時期を明確にしないことについて「(記者団の)問いに答えていないとの思いはある意味で当然」と指摘。「総理の発言についてわかりにくい状況になっている」と認めたが、首相の真意を聞かれると「代議士会での発言をそのまま受けとってもらうしかない」と歯切れの悪さが目立った。

 予算委員会では、野党各党が即時退陣を要求。自民党の山本議員は6月末にも首相問責決議案の提出の可能性に言及した。

 (ロイターニュース 伊藤純夫 基太村真司)

 
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 6月3日、菅首相の2日の辞意表明について、そのタイミングをめぐって与野党内に波紋が広がっている。2日撮影(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
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