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社説

首相退陣表明 政治の混迷に終止符を 06月03日(金)

 菅直人首相が辞意を表明した。東日本大震災の復興や福島第1原発事故の収束に、「一定のめどがついた段階」で退陣するというものだ。

 内閣不信任決議案の採決を直前に控えての民主党代議士会での表明である。足元の民主党から同調する動きが高まり、ぎりぎりの判断に追い込まれたのだろう。

 具体的な時期などあいまいな点はあるものの、首相自身が進退に言及した意味は重い。菅民主党政権は一刻も早く国会を正常化させ、震災対策に全力を尽くす態勢を整える必要がある。野党も政治の混迷に終止符を打たなければ、被災者は救われない。

   <大義なき不信任案>

 不信任決議案は賛成152票、反対293票の反対多数で否決された。民主党からの賛成は2人にとどまった。前日まで賛成を表明していた鳩山由紀夫前首相は一転、反対の姿勢を打ち出し、小沢一郎元代表は棄権した。

 大量の造反者が出て、不信任案が可決されるとの見方もあった。土壇場で政権党の分裂が回避されたとはいえ、一連の騒動に、これで復興ができるのかと不安に思う人が多いのではないか。

 自民、公明、たちあがれ日本の3党の不信任案提出に大義名分はなかった。3党の執行部や、同調する動きを見せていた鳩山、小沢氏らには猛省を求めたい。

 不信任騒ぎが起きたのは、原発事故などに対する菅政権の対応にも見過ごせない問題があったからだ。混乱を招いた政権の責任は重大だ。被災者の命を預かっているという強い自覚をもって、震災対策に臨まなければならない。

 課題は山積している。不信任案の否決に、胸をなで下ろしているゆとりなどないことを、菅首相は肝に銘じてもらいたい。

   <火種を抱えたまま>

 火種の一つは、菅首相の退陣の時期だろう。首相の言う「一定のめど」とは何を指すのか、あいまいな点が気になる。

 鳩山氏は首相との会談で、「復興基本法案を成立させ、2011年度第2次補正予算案にめどをつけた段階」で合意したと述べている。ただ、岡田克也幹事長は、こうした条件が必ずしも退陣に直結しないとの見方を示し、早くも食い違いを見せている。

 民主党内の「親小沢派」と「反小沢派」の対立が、解消されたわけではない。退陣の時期をめぐって、両陣営の駆け引きが再燃する可能性は捨てきれない。

 「ポスト菅」の動きも加速するだろう。今回の不信任案の否決が民主党政権にとって、「雨降って地固まる」となるかは分からない。民主党には、足元を固める努力がいままで以上に求められる。

 「ねじれ国会」の火種も、依然として残っている。

 今国会は、予算執行に欠かせない公債発行特例法案をはじめ、復興基本法案など、重要法案がめじろ押しだ。自民党などから「菅首相は信頼できない」と突きつけられたなかで、成立させるのは容易ではない。

 菅首相は党首討論で「通年国会」も視野に入れて延長を検討すると述べた。会期にこだわらず、震災関連法案を中心にスピード感をもって成立にこぎつける覚悟を示す必要がある。信頼回復のためには、党執行部が一丸となって野党との連携を密にする努力が要る。

 今回の不信任騒動で、野党に対する国民の視線は一段と厳しくなった。菅首相を退陣に追い込んだ後にどんな構想があるのか、自民党の谷垣禎一総裁や公明党の山口那津男代表は展望を示さないまま、提出へと突き進んだ。無責任で乱暴なやり方だと批判されても仕方ないだろう。

 衆院本会議で否決された事実を、自民、公明、たちあがれ日本はしっかりと受け止めなければならない。

   <再生の道筋を示せ>

 震災や原発事故をめぐる菅政権の対応や法案の問題点は大いに論ずべきだが、反対姿勢ばかりが目立つようだと、国民の支持は離れていく。被災者にとって何が一番大切かを基本に据えて、合意点を探る姿勢が大事になる。

 東日本大震災は、日本の国土と社会にかつてない傷を残し、いまも痛みは続いている。地震と津波による被害は、東北地方を中心に関東一帯に及ぶ。長野県の栄村も大きな打撃を受けた。

 そこに原発事故である。世界でも最悪の事故が起き、収束のめどすら立たない。放射能汚染が福島県の住民から住まいや職業を奪い、風評被害は近隣県にも広がっている。地震・津波・原発事故を含めて、いまもって約10万人が避難生活を強いられている。

 これがついきのうまで、世界でもトップクラスの経済力と技術力、安全・安心を誇っていた日本の姿である。政治が空中分解すれば、人々の暮らしは惨憺(さんたん)たる状況に陥るだろう。

 新しい日本を築く希望の道筋を示す−。各党は、政治本来の使命を果たしてもらいたい。

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