菅直人政権への内閣不信任決議案否決から一夜明けた3日。「不信任案に賛成する」として辞表を提出していた民主党の副大臣や政務官らの慰留、辞意撤回などの動きが続いた。東日本大震災の被災地復興に向け奔走してきた官僚からは「政治主導と言いながら、権力争いで復興事業を投げ出したことも、慰留されれば撤回する姿勢も理解できない」と怒りの声も漏れた。
被災地復興の方向付けを決める国土交通省の「被災の復旧・復興に関する検討会議」を主宰し、仮設住宅などインフラ復旧の指揮をとってきた三井辨雄(わきお)副国交相。1日に首相官邸に辞表を提出したが、首相から慰留され一転続投を明言した。同省幹部は「政治主導と言いながら、簡単に『辞める』と言うのはおかしい」。別の幹部は「昨日は丸一日仕事がストップした。政局の火種はまだ残っており、今後もこうしたことが起こらないか心配だ。被災地の住民に申し訳ない」と話す。
被災自治体の状況を確認するため岩手や宮城県などを視察してきた鈴木克昌副総務相も辞表を出したが、続投することに。総務省のある職員は「辞意を一度伝えたのに慰留されたら続ける姿勢が理解できない」とあきれた表情で語る。
樋高剛環境政務官は震災発生後、環境省の災害廃棄物対策特別本部長を務め、がれき処理で省内外の調整などに当たっていた。慰留を受け入れたことに同省幹部は「元に戻って良かった。それにしてもこの騒ぎはなんだったんだ」とため息を漏らした。【川上晃弘、中山裕司、江口一】
菅直人首相が2日夜の会見で、退陣時期に関するめどとして掲げた「東京電力福島第1原発の冷温停止」。福島県内では、東電や政府が示す「工程表」への疑問の声も根強い。同県の民主党県議らは、菅政権が当面続くことに対し、複雑な思いものぞかせた。
民主党福島県連の宗方保総務会長は「菅首相の退陣表明はそれなりに重い言葉。不信任案が否決された以上、挙党一致、超党派で災害復興に当たってほしい。内紛、抗争をしている場合ではない」と強調した上で、具体的な退陣の時期については「首相本人が決めること」と評価を避けた。
40代県議は「冷温停止まで在任となると、1年以上はいることになるだろう。それまで求心力が持つのか。党運営に影響も出て復興が遅れるのでは」とため息をつく。「放射性物質に汚染されたがれきの処理などについて、国はいまだに明確な基準を示していない。菅首相が主導権を発揮し、国として対応策を早急に出すべきだ。福島県民のことを考えているのか」と首相への不満をあらわにする。
別の50代県議も「菅さんは短時間の現地視察だけではなく、避難所で手伝ったり被災地で生活して、被災住民の立場を理解してはどうか」と注文を付けた。【種市房子】
毎日新聞 2011年6月3日 11時39分(最終更新 6月3日 11時57分)