「不信任案決議より、優先すべきは被災地の復興」「対立ではなく、今は一丸となるべき時」―。東日本大震災の復興や原発事故の収束が差し迫った課題の中、内閣不信任案をめぐって与野党が政局の主導権争いに明け暮れた2日、有権者は政治へ厳しい目を向けた。
宮城県石巻市から豊見城市に避難してきた被災者の杉浦康之さん(30)は、今の時期に内閣不信任決議案の採決が行われたことに、首をかしげる。「不信任決議よりも、被災者が一時間でも早く仮設住宅に住めるようにしてほしい。優先すべきは、被災地の復興。結局、政治家は自分のことしか考えてない」と批判した。
「国会でゴチャゴチャやるより、国会議員は被災地の実情を見てほしい」と怒りを抑え話すのは、被災者への支援を行う沖縄宮城県人会の戸袋勝行会長(68)。「被災地は沖縄戦直後のように何もない。避難所やテント暮らしの方も大勢いる。政治は一刻も早く復興計画をたて、福島県だけでなく、広く被災者、被災企業にお金がまわるようにするべきだ」と声を強めた。
南城市で農業を営む仲里幸信さん(75)は「これまで原発を推進してきたのは自民党。まずはそこをしっかり反省するべきだ」と不信任案の提出に不快感を示す。さらに、「消費税増税論の前に政党助成金を削減すべきだ。政局以外にやるべきことがたくさんある」と要求した。
名桜大学3年の渡真利碧さん(21)も「否決されて良かった。与野党で対立するのではなく、今は一丸となって被災地支援に取り組むべきだと思う」と話した。
「政治のレベルが低すぎる」。南風原町史嘱託員の山城みどりさん(38)=同町=は、政局に終始する政治を一蹴。「大変なときだからこそ超党派で協力すべきなのに、一切被災者のことを考えていない。戦争と同じで、つらい思いをするのはいつも一番弱い人々だ」と批判する。
一方で、不信任案が否決されたことには「選挙が回避され、被災地に余計な負担がかからなくてよかった」と安堵(あんど)した。
宜野湾市の与那城米子さん(70)は「今は日本が一つになり、協力する時期だ。日本政府は国民のことは頭にないのではないか」とあきれ顔だ。「普天間飛行場は返還が決まっているのに、新たにオスプレイ配備が検討されている。被災者支援も普天間問題も大事なときに、不信任案を提出する野党もおかしいのではないか」と与野党への不信感をあらわにした。