内閣不信任決議案採決直前に菅直人首相が退陣の意向を表明した2日、県内の有権者からは「不信任案提出はおかしい」と政争にあきれる声が上がった。民主党県連は「(震災対応に)一定のめどがついた段階で」と条件をつけた菅首相の退陣表明を比較的冷静に受け止め、「今後は与野党も党内も協力を」と呼びかけた。自民、公明両党は菅首相への批判を繰り返した。
【井上元宏、檜山佑二、山本麻美子、原田悠自】
津山市の自営業、酒本芳典さん(63)は「不信任案提出自体がおかしい。菅さんがいいとは思わないが、震災からの復旧、復興に力を注ぐべき時にトップを変えてうまくいくのか。不満があるなら自分が補佐すると名乗りをあげる意気込みがほしい」。同市内の40代の主婦は「震災への対応に時間的な空白をつくってはいけないと思う。自民党は、責任政党としての自負と過去の経験を生かし、震災の復旧、復興に無条件で協力すべきだ」と話した。
高梁市の主婦、安部三枝さん(47)は「不信任案提出には『大変な状況なのに、そんな事をしている時じゃないだろう』と思っていた。否決によって、今度は与野党力を合わせてほしいけど、難しいのでしょうね」とため息をついた。
南区大福の会社員、藤原美穂さん(24)は「今は震災の復興に向けて与野党が団結するべきだ。不信任案を提出している時間があったら被災地へ行き、被災された方の雇用や住まいを確保してほしい」と語った。中区門田屋敷の会社員、杉井亮三さん(26)は「菅首相は被災地へ行っても被災者に謝るばかりで頼りない印象だが、今首相が代わっても混乱が広がるだけ。菅首相には『必ず復興させる』という意気込みを示してほしい」と注文した。
民主党県連の高井崇志幹事長は「(菅首相の退陣表明は)一致団結して国難を乗り切ろうという覚悟の表れ」と強調した。一方で、「(退陣の)時期を明言したわけではない。当面は菅首相が続投するわけで、全力で支えたい」と話した。同県連の柚木道義代表は「菅首相は復興のめどがついた段階で『若い世代にバトンタッチしたい』といわれた。私たち若い世代が次代を担うべく力を尽くしたい」とコメントした。
一方、不信任案を出した自民、公明は菅首相への不信感をあらわにした。自民党県連の天野学幹事長は「不信任案について是非はさまざまあったが、菅政権ではこの国難を乗り越えられない。自ら進退を言及した総理に本格的な復旧、復興対策を果たせるのか不安だ」。公明党県本部の景山貢明代表は「不信任案は否決されたが、内閣の正当性は大きく傷ついている。菅首相は早急に退陣の時期を明らかにすべきだ」とコメントした。
毎日新聞 2011年6月3日 地方版